第900回「政治家も官僚も真剣であれ」

 深谷隆司の言いたい放題第900回

「政治家も官僚も真剣であれ」

 内閣支持率が低迷し続けている。

 菅首相は東京五輪、パラリンピックを無事終了後、ワクチン接種でコロナ禍の終息が見えてくる中で衆議院選に臨み、その成果で総裁選を無投票で乗り切るつもりであったのではないか。しかし、デルタ株による感染が拡大、緊急事態宣言の延長の状況から、そんな思惑は通用しなくなっていた。

 私は総裁選をしっかり行えば、その間、マスコミ報道は自民一色になる。そこで候補者それぞれが国を憂い、政策や国家観を示し、国家国民の為に人生を捧げると真剣に訴えてくれれば、自民党に対する見方も変わってくると期待していた。 

 様々なルートを生かしネジを巻いたが、岸田文雄氏が名乗りを上げ、下村博文氏、高市早苗氏が意欲を示すにいたった。下村氏は早々に辞退したが・・・。

 ところがこうした動きに菅首相は、二階幹事長の交代を軸に党役員人事を替え、内閣改造等を行うとの挙に出た。

 場合によっては総裁選を先送りし、直ちに解散総選挙を行うのではないかとの憶測まで飛んだが、菅首相は直ちにその動きを否定した。まさか首相たる人がそんな小細工はしないと信じていたが、正直ほっとした。

 野党立憲民主党は政権交代をしきりに言うが、枝野幸男代表の評価は低く、党内でさえ選挙の顔には無理という声ばかりだ。自民党は党員投票も行うから、この際堂々の論陣を張って選挙に臨んで欲しい。大事なことは「政治家として真剣に!」ということなのだ。

 バイデン米大統領は、アフガニスタン駐留米軍の撤収を完了させ、退避作戦を大成功と言い切っている。

 約20年に及んだ米国史上最長の戦争に終止符を打ったのだが、統治能力もないイスラム原理主義勢力タリバンがアフガニスタンをこれからどうするのかの見通しもなく、多くの米国人を置き去り、なによりもテロの脅威が去ったわけではない。それで大成功などと嘯く姿に、日米安保に対しての不安を抱くのは私だけだろうか。

 アフガニスタン首都が陥落した直後、日本の大使館は現地職員を置きざりにしてさっさと逃げ出し、救出作戦にも失敗した。

 最後の米軍機に米国大使が乗ったとの報道があった。又、英国大使は、カブールにとどまってアフガニスタン協力者のビザを出し続けたという。

 81年前、リトアニアで領事代理を務めた杉原千畝は、故郷を負われたユダヤ人に対して、反対する政府の声を無視してビザを発給し続けた。外務省は彼を移動させるが、汽車が発車するまでサインを続け数千人の命を救った。

 私が月刊誌「Hanada」で「満州引き揚げ体験」を書いたが、大東亜戦争終戦時、大陸各地や南方の島々に残された日本人は約650万人、そのうち帰国できたのは629万人であった。4年間で実に約97%の日本人が帰国できた。人類史上最短かつ最大の民族移動が行われたのだが、これは厚生省引揚援護局の官僚たちが真剣に努力してくれた賜物であった。

 今、日本大使館に勤めたアフガン人職員や家族が約500人残され、タリバンによる迫害にふるえている。

 歴史に残るあの真剣な日本の官僚たちの姿はどこに行ってしまったのか。

 韓国紙は「カブールの恥辱」と日本を馬鹿にして書いたが、本当に恥ずかしいことだと思っている。

 政治家も官僚も、真剣に国家国民の為に努力してくれと、訴えたい思いである。