第882回「米国で日本人へ暴力」

 深谷隆司の言いたい放題第882回

 「米国で日本人へ暴力」

 米国ニューヨーク市を拠点にして活躍しているジャズピアニスト海野氏が昨年9月、数人の若者に襲われ右肩を骨折し、今は日本でリハビリ中との報道があった。元のようにピアノは弾けないという。

 今、アメリカ各地でアジア系住民を狙う暴力事件が頻発している。すでに2千件を超えるとの報道もある。

 要は中国湖北省武漢が発生源とされる新型コロナウイルス感染症への怒りや不安から発生した憎悪の結果だが、彼らにとっては中国人も日本人も同じ顔に見えて区別がつかないのだ。

 世論調査によると、米国では8割の人が中国に嫌悪感を持っているという。中国の覇権主義、人権侵害に対する厳しい批判が背景にあるのだが、その為に日本人が間違えられて暴行を受けるなど、とんでもないとばっちりである。

 海野氏に殴りかかったのは若い黒人グループである。かつて奴隷であった黒人に対する偏見は今も続いていて、それを背景にした警官による暴行事件が大問題になっている。

 黒人側もしばしば激しい抗議行動や暴動に近いデモ騒動を起こしている。

 虐げられている黒人が、今度は逆にアジア人にこうした暴行に及ぶというのは一体どういうことなのか。

 ヘイトクライム(憎悪犯罪)が更なる別の形の偏見を生んで広がっているということだとしたら、なんとも悲しいことである。


 最近の米国の動きを見て、私はかつて日本に対してあびせられた「黄禍論」を思い出す。

 黄禍論とはドイツの皇帝ウイルヘルム2世が「黄色人種の勢力が増えて白人支配体制が破られる危険がある」と言った日本に対する危機感である。

 日清日露戦争に勝利し台頭する日本に対して、西欧諸国が危機感を持った。特にイギリスから国際的中心力が移った米国は、アジアに進出しようとしていて、日本を第一の敵国と考えるようになった。

 日本人の頭蓋骨は2千年遅れていると言った、日本嫌いのフランクリン・ルーズベルトは、いずれ日本を潰さないといけないと考えた。

 機会を見てここいらの状況はいずれ書く所存だが、「大東亜戦争」の遠因はそこにあったと私は思っている。


 今、米国での日本人気は8割と言われ大変な日本びいきの時代だが、少し状況が変わったら、どう変貌するかわからない。 

 菅首相が訪米してバイデン大統領との初会談を行うが、こうしたことを考えて、心して対応して欲しいものだと思っている。

 どの国も自国の利害でものを考える、これは当然のことで、だから「黄禍論」が米国で再び起こらないなどと安易に思ってはならない。

 「黄禍論」まではいかずとも、米国が日本に求めるものは多く、これに応えなければどのような対応になるのだろうか。

 日本の最大の脅威は中国だが、これを封じ込めるのは日米同盟の強化だ。しかし、日本が何らかの攻撃を受けた時、米国はどこまで日本を守ってくれるのか、正直心もとないところがある。

 安全保障という観点から言えば、米国に頼る前に、まずは己の国を守る決意と体制を整えることが先である。しかし、その大事な部分の認識が政治家も国民も足りないように思えてならない。

 米国で起こった日本人暴行事件から、様々なことを考えることが肝要なのである。