第818回「はき違えた表現の自由」

 深谷隆司の言いたい放題第818回

 「はき違えた表現の自由」

 愛知県で開催された国際芸術祭の企画展「表現の不自由展・その後」がわずか3日で中止になった。以来、表現の自由について喧々諤々の議論が続いている。

 報道された内容を見ると、あまりに異常で中止は当たり前の事だと思った。

 昭和天皇の肖像を大写しにしてガスバーナーで燃やし、燃え残りの灰を足で踏み潰すシーンがあるという。わが国の「国民統合の象徴」である天皇の人格を犯す内容など、とんでもない事で、抗議が殺到するのは当然のことである。

 肖像を燃やす行為はヘイト(憎悪)で、他国の大統領の写真だったら侮辱や冒涜として大きな国際問題になる。もっとも非常識な韓国なら通用するかもしれないが・・・。

 あるいは元慰安婦を象徴する少女像もあって、これは悪意に満ちた反日プロバガンダである。明らかに特定の政治性のあるヘイトだ。


 なんとこの大会に愛知県が約6億円、名古屋市が約2億円と公金を投入している。文化庁の補助金対象事業にも採択され約7800万円が補助予定額となっていた。国は県の交付申請をこれから改めて精査するようだが、中身も調べずに国民の血税を平気で渡す役人たちの根性に腹が立つではないか。

 珍しく河村たかし名古屋市長が展示中止を求めたが、実行委員長代理の立場で挨拶し歌まで歌っていたという。「内容を知らなかった」といくら言い訳しても、その責任と罪は大きい。

 一番のアホは、実行委員長で事実上の主催者である愛知県の大村秀章知事だ。「表現の自由を保障した憲法21条に違反する疑いが濃厚だ」と嘯くが、一方で12条には、憲法が国民に保障する自由と権利について「これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と記している。判例を引くまでも無く表現の自由は無制限では断じてなく、相手を傷つけない事が絶対条件なのである。

 大阪府の吉村洋文知事は「大村知事は辞職相当と思う。知事は安全上の理由で突然中止したが、芸術を名乗ればなんでもありと言わんばかりであったのに、表現の自由が脅迫や抗議に安易に屈していいのか」とその矛盾を指摘している。正論だ。

 天皇の写真を燃やすような映像の展示は、多くの国民を不快にさせただけではなく、それが行政のお墨付きとなれば、天皇についての誤ったイメージが海外に広がりかねない。

 自由は崇高なもので民主主義社会においてもっとも大切だ。それだけに節度と常識が大前提だ。

 関係者の猛省を促したいものである。