第806回「理不尽なWTO」

 深谷隆司の言いたい放題第806回

 「理不尽なWTO」

 25日、17時から「BLOGOS」のダイジェスト動画の取材が始まった。政治ジャーナリストの角谷浩一さんのインタビューの上手さはさすがで、「平成のキーマンが平成時代を総括する」をテーマに、私から様々な話を引き出してくれた。

 カメラを充分に配置し、専門スタッフも大勢で、実に手際よく進行させていく。今まで自宅でテレビ取材を何度も受けてきたが、通常のテレビ取材と比べて遜色が無い、いやそれ以上かも知れない。まさにこれからの時代のメディアだと思った。放送は連休明けとのこと、楽しみである。


 インタビューの中で、私が通産大臣としてシアトルで開かれたWTOに赴き、アメリカ側と激しく渡り合った時の事が話題となった。

 WTOは自由貿易促進を主たる目的で創設された国際機関で164ヵ国・地域が加盟している。国が多すぎる上、4分の3が開発途上国なので、近年なかなか話がまとまらないのが常となっている。

 当時、アメリカがアンチダンピング(国内より不当に高く輸出した場合、輸入国の産業保護のため関税を課する制度)を盛んに濫用し、日本の鉄鋼業界は大変苦労していた。私はこの濫用を規制する為、各国の大臣と次々に会談を行い、いわゆるロビー活動に全力を尽くした。

 ある席では、デイリー米商務長官が「このまま日本が主張を続けるなら、クリントン大統領は沖縄サミットに出席できない」とまで言い出し、私は激怒して「来たくなければ来なくていい」と啖呵を切ったこともある。

 ようやく分科会でペテグリー委員長(カナダの大臣)が、私の主張通りのペーパーを採択してくれた。これで「勝った」とばかり喜んでいたら、なんと米国のバシェスキー議長が突然、一方的に閉会を告げてしまったのである。自国の主張が通らないと平気で閉じてしまう、米国とはなんと勝手な国だと思ったが、外交とはまさに戦場なのである。

 WTO会議では、こうした理不尽な状況が多く、事がまとまらないから、その後は二国間協定のFTA(貿易協定)、EPA(経済連携協定)、更にはTPP(環太平洋連携協定)等へと移行しつつあるのだ。


 最近でも、WTO紛争処理機関で、韓国による福島県など8県産水産物の「輸入禁止措置」に対して、日本が不当と主張し、一審ではそれが受け入れられた。ところが、なんと上級委員会では違反かどうかの判断をせず、一審を破棄して日本の主張を退け、日本は逆転敗訴してしまったのだ。

 明確な科学的根拠が示されているのにこれを軽視した結論である。これでは国際的は風評被害ではないか。被災地の復興の努力に水を差すWTOに私は怒りを覚える。

 目下、日本はこの判断に断固抗議しているが、欧米訪問中の安倍首相もEU首脳との会談の中で、WTOの改革の必要性を訴え合意を得ている。


 平成時代、こうした外交上、理不尽なことが多かった。令和の時代こそ、日本は自国を守るために一歩も引かず、理不尽な事柄を克服して頑張っていかねばならないと強く思うのだった。