第763回「実りなき世界最大のショー」

 深谷隆司の言いたい放題第763回

 「実りなき世界最大のショー」

 シンガポールで開かれたトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の首脳会談が、まさに世界注視の下実現した。

 史上初めての米朝首脳会談は結構な事だが、案の定というか、中身は実りのないもので終わった。いや、むしろ禍根を残すものとなった。

 共同声明で金氏は「朝鮮半島の完全な非核化に取り組む」と約束する一方、トランプ氏は「北朝鮮体制の安全を保証する」と表明した。しかし、最も大事な「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の文言はなかった。

 北朝鮮は2005年の6カ国協議の声明で、「朝鮮半島非核化のため、全ての核兵器と核兵器計画の放棄」を約束したが、これを平然と反故にして核開発を進めてきた。もうだまされないぞというのが私の率直な思いである。

 トランプ氏は費用の節約になるからと、米韓合同演習の中止を表明し、記者会見では在韓米軍の撤退まで言及した。これは今、絶対言ってはならない事である。

 中国が長年求めてきたことではないか。この30年で軍事費を51倍にし、尖閣諸島奪取を窺い、南シナ海では軍事拠点化を進めている中国だ。きっとほくそ笑んでいるに違いない。

 軍事的選択肢をちらつかせながら北朝鮮に最大の圧力をかけてきた路線をトランプ氏はいとも簡単に変更してしまったのだ。

 文大統領も北朝鮮に前のめりになっている。韓朝両国が連邦的になって、親中反日体制になったら、いわば38度線が対馬海峡になったようなもので、日本の危機は計り知れないものとなる。トランプ氏は日米同盟関係を気にしていないのか。

 一方で「北朝鮮が米国にとって問題とならなくなるまで制裁は解除しない」とも言っている。なんだか訳がわからないが、わずかな救いなのか。

 経済支援について、トランプ氏は「日韓両国は北朝鮮を支援する用意があり、米国は支援する必要は無い」とも言った。とんでもない話で、核完全廃棄、拉致問題解決など、日本の要求が入れられないかぎり、日本はびた一文払うべきではない。

 やがて日朝首脳会談が行われる時が来る。北朝鮮は国家賠償を必ず要求すると現に主張している。朝鮮は戦勝連合国ではない。戦った敵国ではないのだから戦後賠償の責任は日本に無い。

 1965年、日韓基本条約を結んだ時、日本は戦争処理の一環として8億ドルに上る協力金を支払った。韓国予算の2,3倍強の巨額な資金、しかも53億ドルに及ぶ日本の資産も全て放棄した。「漢江の奇跡」はそこから生まれ、韓国は経済発展を遂げる事ができたのだ。

 当時、韓国は正統な朝鮮半島国家としていたため、朝鮮半島全体に対する立場で日本は臨んだ。もし北朝鮮が協力金を求めたら、韓国が処理すべき問題なのである。


 どちらにしても、今、日本は危機的状況の中にある。しかし、こんな時も日本の国会は機能していない。

 米朝首脳会談の行なわれた12日、立憲民主党など野党6党派は、カジノ法案をめぐり衆議院内閣委員長の解任決議案を出して大騒ぎである。

 「いい加減にしろ」と怒鳴りたい心境である。