第304号「猫ひろし?」

深谷隆司の言いたい放題 第304号
「猫ひろし?」

 もともと話題にもならないピン芸人の事など、書く気も無かったが、そうは言っていられないような状況である。下手をすると国際問題にもなりかねない、それが「猫ひろし」の五輪出場問題なのである。
 すでにマスコミは、カネで買った五輪切符と書き始めている。

 近頃のテレビのお笑い番組等を見ていると、なんでこんな芸の無い連中が毎日出ているのかと不思議でならなかった。
 例えば落語にしてもそうだが、世に出た人は、苦労して鍛え上げた本物の芸を持っている。一方で、素晴らしい力量があるのにそのチャンスをつかめない不遇な人も大勢いる。
 私の場合、立場上、何人もの芸人たちと交流が深かった為に、つまらない楽屋ネタで得意がっている「無能」な芸人?を見ると、無性に腹が立ってくるのだ。

 一体、あいつの芸のどこが面白いのかと、見るたびに思う一番手が猫ひろしであった。
 ただ、それでも走れるタレントとして話題になると、その必死な姿も芸の内かと、好意的に見ようという気になっていた。
 ところが、何回かマラソンに出場しているうちに、いつの間にか、オリンピックに出たいとなって、選手層の薄いカンボジアに目をつけた。ひょっとしたら、自分でも出られるかもしれないと考えて、なんとカンボジア国籍変更という、とんでもない行動となったのである。
 ロンドン五輪に出るためには、標準記録を上回る必要がある。然し、その国の陸上全種目で誰も標準記録を突破できなかった場合、男女一人ずつの出場が出来るという「特例」がある。
 いわば力の無い国を救済するための特例なのだが、なんと幸運にも猫ひろしは、この特例枠でカンボジア代表に内定したのである。

 カンボジアには、彼の記録より上のヘム・ブンティンという選手がいて、彼の怒りの告発から、カネで買われたとの疑惑が明るみに出てきた。
 実際は猫のスポンサーと言われる「ホリエモン」がらみの人物が、協賛金名目で、同国の五輪委員会に約2万ドル(160万円)以上の金を払ったのである。人口1400万人、GDPは日本の0.2%、平均年収約5万円のカンボジアでは大金なのである。
 一番いけないことは、カンボジア人になったと言っても、それは書類上のことだけで、この国に骨を埋める気が全く無い点だ。
 終ったら日本に帰り芸人生活を続けると、本人は公言している。
 オリンピックに出たいためだけで、カンボジアの国籍を買ったとなれば、世界中から批判を招くこと必定ではないか。しかも、批判され糾弾されるのは彼ではない、日本及び日本人なのだ。国辱ものなのだ。

 カンボジアは、長い内戦が続き、ポル・ポト政権になるや、150万人といわれる国民が虐殺された悲劇の国である。
 今も混乱は続き、安定した国にはなっていない。そんな中、自国の選手がオリンピックで頑張る光景が映れば、きっと国民に自信と誇りと勇気を与えるに違いない。

 国際陸連は、国籍変更した国での居住期間が1年を切っている場合は、例外を除いて出場できないということになっている。
 猫の場合、期間が足りないからと、陸連から問い合わせが来ているようだ。私は国際問題になる前に自ら辞退すべきだと強く思っている。芸人の洒落?では世界に通用するわけもないのだ。