深谷隆司の言いたい放題 第302号
「猛烈朝稽古」

 25日朝8時半、船橋市にある松ケ根部屋の連合稽古に出かけた。
 松ケ根親方から、二所の関一門の連合稽古の時は、後援会長として是非見学に来て欲しいと言われていたからだ。 
 放駒親方はじめ、一門の親方衆がずらりと座り、目を光らしている。力士たちが何十人か勢揃いで、激しくぶつかり合って稽古を始める。まことに壮観である。

 30分もすると、しきりに女房が私に肘をつついて合図する。大関琴将菊、稀勢の里、琴欧洲の登場だ。
 若い連中にひとしきり胸を貸した後、大関同士の対戦になる。琴欧洲と琴将菊は共に佐渡ヶ嶽部屋の所為か、1番取っただけだったが、鳴門部屋の稀勢の里と琴将菊との稽古になると闘志むき出しで、大変な迫力である。
 一般に3番勝負なのだが、負けた方が「もうひとつ」と繰り返し、なんと16番も続いた。稽古なのに、稀勢の里の強烈な張り手が「バシッ」と、すさまじいばかりの音で決まって、場内の力士たちが一瞬凍りつく。
 琴将菊は左手首を傷めていたこともあってまだ練習不足で、後半息が上がって10敗、よく「練習は嘘をつかない」と言うが、本当にそうだと思った。
 稀勢の里は、私が最も期待する日本人横綱候補、白鵬の連勝記録をストップさせる力があるのに、何故かつまらぬところで負けて、いま一つと言った感がある。
 しかし、この日は、色白の顔を真っ赤にして気合十分、得意の四つ相撲に徹して頑張っていた。
 稀勢の里は最後に又、若手に胸を貸していたが、特に一人の力士にこれでもかとばかりに責め続けていた。苦悶の表情で、もう立ち上がれない力士に、親方の罵声が響く。それでも容赦しない。
 琴欧州が力士の顔に柄杓で水をぶっかける。
 一体、あれは誰なのかと聞くと、なんと新入幕の早大出身 皇風(きみかぜ)関で、十両優勝して上がったばかりの関取であった。
 この世界で、いわゆる「可愛がる」と言うことなのだが、新入幕を祝っての荒稽古だ。普通の人が見たら「いじめ」と間違えるであろうが、越えなくてはならない関門の一つで、こうした苦しい稽古の積み重ねで本当に強くなっていくのだ。
 最近の世の中、みんな安易な道ばかりを選んで通ろうとする傾向にある。特に政治の世界等、ろくな苦労を積むことなく、議員バッチをつけて一人前の顔をしている連中が多くないか。
 さしたる経験もなく、軟弱な政治家に国を任せていてよいのかと、そんな思いが頭をよぎる。時には、こんな相撲の猛稽古を見せたいものだと秘かに思うのだった。

 早大出身の関取は、大関にまでなった笠置山だけで、実に77年ぶりのことである。この間、森元首相がお祝いの座布団を彼に贈ったが、ぜひ強くなって欲しいものである。
 余談になるが、私も早大時代、相撲部に居たことがあった。必須科目の体育で「相撲」を選んだが、相撲部からスカウトされたのだ。
 その折、晩年の笠置山が指導に来ていたものである。懐かしい思い出である。

 全ての練習が終わって、ちゃんこ料理のもてなしが始まる。同行の秋田夫妻、飯塚税理士、澤田君らと、力士のサービスで最高のチャンコを味う。特に、どんぶりで飲むビールは最高、日本酒も進められてご機嫌で、こんな時があってもいいかと、朝から至福の一日となったのである。