第281号「消費税増税の思惑を考える」

深谷隆司の言いたい放題 第281号
「消費税増税の思惑を考える」

 消費税の増税は財務省の陰謀だという説がある。
 そういえば細川政権時代、突如出された国民福祉税7%案の時、一部マスコミは、当時大蔵省の斉藤次郎事務次官(現日本郵政社長)と新生党の小沢一郎代表幹事とが仕組んだものとだと報道した。
 この問題では私が予算委員会の代表質問に立って、直接、具体的に追及しているから、今でも鮮明に覚えている。
 今、当の小沢氏は消費税反対の立場だが、これは政局がらみで本音とは思えない。
 野田首相の場合は、菅内閣での財務大臣以来、もっぱら財務省の言いなりと批判されてきた。依怙地なくらいに消費税増税に政治生命を賭けると言い続けているが、どう考えても財務省が後押ししているとしか思えないのだ。

 何故、財務省が消費税にこだわるかと言えば、数字一つ変えるだけで税収が増えるからだ。1%上げるだけで、何の苦労もなく約2.5兆円も計算上増収になるのだ。こんな安易な判断で消費税が決められるのでは国民は堪らない。
 だがちょっと待ってもらいたい。本当に増収になるのであろうか。
 
 平成9年、消費税が3%から5%になったが、前年の平成8年の一般会計の歳入決算総額約81.8兆円に対して、増税の9年度は約80.1兆円と、逆に減少している。
 あの頃はアジア通貨危機や大手金融機関の破たんなど別の要因はあったが、一般的にみて、消費税を上げた当年度はまだしも、各種シュミレーションを見ると消費は冷え込み、必ずしも増収にはならないとある。
 増税で可処分所得(手取り収入)が減るから、個人消費支出が減る。そうなれば当然、消費財の市場は縮小し、経済成長率の低下やマイナス成長をもたらす可能性も出てくるのだ。

 政府は、今回の消費増税で、約13兆円の税収増を期待しているようだ。
 これらは主として社会保障費になると一般に思われているが、私は全く怪しいと思っている。
 
 今国会に提出された2010年度予算の一般会計歳出規模は実質94兆円、隠れ借金を含めれば96兆円になる。
 リーマンショックの前までの歳出規模は約82兆円だったから、わずか4年で実質14兆円も拡大したことになる (災害復興の補正予算を除く)。しかも、その間、日本の国内総生産(GDP)は増えていない。
 民主党政権の無責任なマニフエストによる支出増加、整備新幹線などの大盤振る舞い等の後始末の結果なのである。これでは財政再建も社会保障の充実もままならない。
 5%増税しても、どうやら社会保障費に回るのは、わずかな額にしかならないようだ。
 だから、岡田副総裁が、さらなる増税を言い出したのだ。

 我々は、何よりも、まず、こうした政府の思惑や実態をきちんと見定める必要があると思う。
 
 2010年(平成22年)の歳入は税収より国債発行による収入(借金)の方が多い。税収は37兆3960億円だが国債発行は44兆3030億円なのである。
 ギリシャ危機との違いは、国債の95%を日本国民による貯蓄で賄い、日本国内で保存している点にある。
 しかし、日本国債の国内消化は決して永続的なものではなく、2020年ごろには行きづまるとも言われている。もはやギリシャの問題は「対岸の火」ではないのだ。

 こう考えてくると、やはりこのまま消費税増税問題を看過してはならないと思う。
 なによりも大事なことは、その前にやるべきことをきちんとやる。いや、政府にやらせなければならないのだ。
 これこそ、国民が声を大にして訴えていかなければならないことだと私は強く思っている。