第269号「空虚な施政方針演説」

深谷隆司の言いたい放題 第269号
「空虚な施政方針演説」

 24日、野田首相は施政方針演説を行った。全体的に言えば「きれいごと」のオンパレードで、はっきり言って具体的な内容は乏しかった。
 演説のほぼ3割を社会保障と税の一体改革について語ったが、意気込みは分るものの、要は消費税を上げたいということだから、聞く側から見れば白けてしまうのだ。
 国政の重要課題を先送りしてきた「決められない政治」からの脱却を目指すと言うが、誰がそうしてきたというのか。  
 鳩山、菅内閣を見ればわかりやすいが、まさに民主党政権だったのではないか。
 自らの反省も責任も語らないのだから、無責任で空虚な演説であったと言わざるを得ないのだ。

 一番驚いたのは、自民党のかつての首相の発言を二度も引用したことだ。 
 「与野党が信頼関係の上に立ってよく話し合い、結論をだし、国政を動かしていくことこそ、国民に対する政治の責任です」
 これは4年前、福田元首相の施政方針演説の引用だが、当の福田氏が「あの頃を思い出すと、むちゃくちゃにひどかったね、話し合うどころではなくて、すべて拒否されたんだから、反対反対でね」と呆れ顔で話していた。
 更に、麻生元首相の3年前の施政方針演説も引用した。
 「持続可能な社会保障制度を実現するには、給付に見合った負担が必要です。経済状況を好転させることを前提として遅滞なく、かつ段階的に消費税を含む税制抜本改革を行うため、2011年度までに必要な法制上の措置を講じます。これは社会保障を安心なものにする為です。子や孫に、負担の先送りをしないためであります」
 野田氏は、「これは私の目指すものと一緒です。今こそ立場を超えて、全ての国民の為に、この国の未来のために、素案の協議に応じていただくことを願ってやみません」と平然と述べているのだ。
 あの麻生政権の提案に対して、当時の民主党は採決で反対したではないか。そして麻生内閣不信任案の賛成討論をしたのも他ならぬ野田氏自身だったのだ。
 野党時代の攻撃的な民主党の言動を思い返し、厚顔無恥とはこのことをいうのかと改めて思った。

 民主党のマニフエストには、無駄の排除と予算の組み替えで、平成25年までに16、8兆円を生み出すと書いてあった。増税をしないで社会保障改革をやると言っていたのた。だから国民の圧倒的な支持を得て政権交代となった。
 それがここへきて一気に消費税増税路線に切り替えてしまった。
 まずこの点について、「あれは誤りでした。結果的に国民に嘘をついた」と訂正し、国民に謝罪することが先決ではないのか。
 自民党はその点をきちんとしないままででは、協議に応じられないと言っているのだ。
 しかも、党内の小沢氏らの動きに配慮して、2012年の活動方針でも、「公約については実現に向けて出来る限り取り組む」と書いている。支離滅裂、矛盾だらけなのである。

 最近の世論調査では、何もしないでの消費税増税に反対は80%以上になっている。
 つまり、大前提は思い切った行政改革と、公務員の削減、何よりも、国会議員の給与削減と定数削減を求めているのだ。
 しかし、これに対する具体的提言は無いに等しい。

 経済を再生させることは極めて重要なことだが、その為の道筋も示していない。デフレ不況の脱却が急務なのだが、明確な処方箋もない。
 外交、安全保障問題についても一応語ってはいるが、肝心の沖縄問題などは、「引き続き沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾け、負担軽減を図るため全力で取り組みます」で、おわり、なのである。

 結びは得意の浪花節で、「私は、大好きな日本を守りたいのです。この美しいふるさとを未来に引き継いでいきたいのです・・・」。
 はっきり言って、点数のつけようもないお粗末さで、これからの国会の嵐の前兆を垣間見るような思いであった。