第256号 「原発事故収束宣言ほんと?」

深谷隆司の言いたい放題 第256号
「原発事故収束宣言ほんと?」

 12月16日、野田首相は記者会見で、「発電所の事故そのものは収束に至ったと判断される」と原発事故収束を宣言した。
 はっきり言って、本当なのかといった疑念がまず頭をよぎった。
 事故収束と言えば聞こえはいいが、要は「冷温停止状態を確認した」ということに過ぎないのだ。

 「冷温停止」とは原子炉に制御棒を入れて核分裂を抑え、水温が100度未満になった状態を言うが、今回は通常とは違うので、「圧力容器の底部の温度がおおむね100度以下」、「原子炉から大気への放射能の漏れを大幅に抑える」の2条件が出来た時を「冷温停止状態」と言い、これを以て「原発事故収束宣言」となっているのだ。

 だから一般的に考える「事故収束」とは、かなりかけ離れたものなのだ。我々が考える原発事故収束とは、放射能が完全に放出されていない、汚染水の処理も完全に出来ている状態を達成した時に言う言葉なのだ。
 今でも炉には溶けた核燃料があるが、放射性物質の密閉も出来ていない。それどころか溶けた燃料がどのような状態で冷やされているのかもはっきりしてはいない。
 通常の冷却システムが機能している訳ではなく、仮設の設備に頼っていて、相変わらず異常な状態のままなのである。
 一応、基準となっている圧力容器底部の温度が100度を下回っている状態になったのだから、解決に向けて少しずつ前進していることは確かだ。しかし、本格的事故収束とは違うのだから、せいぜい「現時点で安定した冷却が出来ている」という表現にとどめた方が適切だったのではないかと思う。

 野田首相は、少し功を焦りすぎてはいないだろうか。
 なんとか年内に一応のめどを示したいとの気持ちも分かるが、あまり前のめりに安全性をPRしていると、再び炉内でトラブルでも起った時どう説明するのだろうか心配になる。その可能性は大いにあるだけに余計そう思うのだ。
 そういえば野田首相、就任直後の9月、国連総会の演説で事故収束の年度内決着を表明していた。
 今度の慌ただしい発表はこの国際公約にこだわった為かも知れない。しかし、残念ながら各国の反応も極めて厳しいものであった。

 原発事故から9カ月たった。しかし、今も福島県では15万人もの人たちが避難生活を送っている。一体いつ帰れるのか見通しもつかず苦労している。
 瓦礫の処置もままならず、放射性物質の汚染処理も進んでいない。
 いわゆる風評も広まっていて、安全なものまで敬遠されて地元の人々は苦しんでいる。
 44もの国と地域が日本の農産物の輸入を規制している。日本を訪れる外国人観光客の数も減っている。
 福島第一原発は廃炉が決まっているが、これが完了するまでに最長40年はかかるといわれている。

 いたずらに安全宣言など出すよりも、もっと現実的な対策を次々に打ち出して、一日も早く復旧復興を進めなければならない。
 原発事故収束宣言を聞きながら、少しの安堵感も起こらず、かえって焦燥感が強まっているというのが多くの国民の気持ちではないだろうか。