第252号 「どじょう政権は逃げの一手」

深谷隆司の言いたい放題 第252号
「どじょう政権は逃げの一手」


 臨時国会は延長しないと、8日、野田政権は決めた。
 私は大事な案件が沢山あるのに、「逃げたな」といった印象を持った。
 よく町の運動会などの催しに、「どじょうのつかみ取り競争」と言うのがあるが、ぬるぬるしてなかなか掴めず、最後はするりと逃げられてしまう、そんな光景が浮かんでくる。
 この臨時国会、野田総理は連日厳しい批判と追及に晒されてきた。耐えると言えば聞こえはいいが、要はのらりくらりと詭弁を繰り返し、ごまかしてきただけである。
 10月20日召集以来、総理が本会議や委員会で答弁に立たされたのは29回に及ぶ。大体、総理の答弁は週一回が相場だが平均週4回のハイペースだ。
 消費税増税、TPP、そしてなによりも閣僚達の資質問題、追求されるべき内容が山のようにあった。気の毒なのは支えるべき民主党が、まったくその役目を果たそうとしないとことである。なにしろ自分の党内ですら意思の疎通が図られていないのだから話にならないのだ。
 ご本人の不徳の致すところとしか言いようがないが、迷惑なのは荒波を羅針盤なしに彷徨う国家国民なのである。

 「貴方はその職に相応しくない」と何度も言われ、ついに問責決議案が可決されるところまで追いつめられた一川保夫防衛相、本人は「責任を問われる致命的なものは無い」とうそぶいて一向に辞めようとしない。
 就任時、「私は安全保障の素人」と言い、「だからシビリアンコントロールだ」と訳の分からないことほざき、国賓のブータン国王夫妻の宮中晩さん会を、仲間の資金集めのパーテイーに出席するためにさぼり、沖縄防衛局長の暴言更迭問題への対応のお粗末さなど、愚行暴言は数えきれない。
 米兵の少女暴行事件を「詳細は知らないと」答えた。あまり話題にはならなかったが、記者会見の時には、少女暴行事件の事を「乱交事件」とまで言ったのですぞ! 
 単なる言い間違いでは誤魔化せない。沖縄に対する理解も同情もない、むしろ差別的な感覚をもっているのではないかとさえ思われる。
 どれを取り上げても「辞任しなければならない」致命的なものばかりではないか。

 山岡賢次消費者相など、マルチ商法業界とあまりに深い関わり持っていて、その業界の大会で彼らの味方と公言している姿が映像で何度も放送されている。
 「何処が悪いのだ」と、まるでやくざまがいの、開き直った態度で答弁する姿を見ると、跳んで行って1発殴りたい衝動に駆られる。
 どちらも後ろ楯に、あの小沢一郎氏がついているから怖いもの無しなのである。
 野田総理も、党内基盤が脆弱だから小沢氏の反乱が怖くて手も足も出ない。
 それでも相変わらず「適材適所で選んだ」と、誰もそんなことは嘘だと思っているのに、平気で言い張っている。厚顔無恥としか言いようがない。

 野党は二人の問責決議を出すと言ってきた。ならば何故さっさと出さなかったのか。参議院はいわゆるねじれで、野党は多数だから出せば必ずと通るのに、もはや遅すぎた。今国会では、ただ出したという形だけで終わってしまったではないか。
 衆議院では、内閣不信任を決議されたら、総理は衆院を解散するか、内閣総辞職するしかなく、このことは憲法で定めている。ただし、現国会では与党が絶対多数だから、不信任案は否決される。否決されたら逆に信任されたことになってしまうから始末が悪い。
 問責決議にはこうした法的規制は無い。しかし、これが可決されると野党は対決姿勢を強め、決議の対象になった閣僚が出席する審議には応じないということになる。予算案や法案の審議が進まなくなると、政府にとっては大痛手となって、結局、辞めさせなくてはならなくなる。過去の国会で問責決議された大臣は皆辞めている。
 会期を延長しないと言われ、ああ、これでまんまと逃げられたと思った。
 日本人の気質から言って、新しい年を迎えると、何となく、あれはみんな昔のこと、となってしまうのだ。もう一度、改めて辞任に追い込もうとしてもそれは容易なことではない。よほど新しい材料が出てこなければ駄目なのだ。
 もっとも彼らのことだから、材料はいくらでも出てくるか・・・。

 それにしても、今国会でやらなければならないことが沢山あったのに、大事なことは皆先送りになってしまったといった印象である。
 例えば、公務員の給与引き下げ法案だ。
 民主党は元々公務員の人件費を2割削るという公約をしていた。これを進める為に公務員の給与を平均7.8%下げる法案を出していたのだが、これも先送りとなってしまったのである。民間企業の動向に合わせた人事院勧告の0.23%の引き下げも実現しない。
 野田政権はこの特例法案で、年間2900億円減らし、2013年度末までに計6千億円を震災復興財源に充てる予定であった。しかし、その当てはこれで消えてしまったのだ

 元々、政府・民主党は、人事院勧告に沿って公務員の給与を決める現行方式を辞め、人事院も廃止しようと考えていた。
 公務員の給与を労使交渉で決めるという形にする、その為に労働協約締結権を回復させる法案を国会に出していた。はっきり言えば、すべては支持母体の「連合」の言いなりである。
 しかし、そうなると労働組合の力が強まる一方で、本来の公僕としての使命を堅持できるのかという不安が生まれる。だから基本権回復には自民党は大きな不安を持っているのだ。それは当然のことだと私も思っている。
 いずれにせよ、せっかく公務員給与削減案が出ていたのだから、まずこれぐらいは決めてもらいたかった。

 もっとも、それより先にやるべきことがあった。それは国会議員自身の問題、すなわち国会議員定数削減だ。
 民主党は国政選挙の度ごとにマニフエストで衆議院比例区の80議席削減を掲げてきた。ところが「まずは一票の格差是正を優先すべきだ」と主張して一向にこの問題に真剣に取り組もうとしない。
 近頃の報道を見ると、どうでもいいような議員がごろごろいることが明らかになっている。スキャンダルにまみれた小沢チルドレンなど、具体的に名前が挙がっている「辞めて欲しい連中」が山ほどいるのだ。
 厳しい財政状態の中、まして増税をもくろむ今、思い切った議員定数削減こそ急務ではないか。
 増税よりも先に国会議員が自ら身を削る決意を示すことが先ではないか。

 そして本音を言えば、こういう問題こそ、自民党から提案し、与党民主党を動かし、これを実現させるべきだと思っているのだ。
 ただ批判追求するだけが能ではない。さすが自民党、やっぱリ自民党でなければと言われるような国民政党になってもらいたいのだ。
 ぬるぬるつかみどころ無い「どじょう政権」では、この日本の危機は救えない。「自民党、頑張ってくれ!」、大声でそう叫びたい心境である。