第251号 「経済界も三流か」

深谷隆司の言いたい放題 第251号
「経済界も三流か」

 世界経済が揺らいでいるが、そんな中、日本の経済界でこんなお粗末な不正がまかり通っていたのかと、あきれた思いでいる。
 1つは逮捕された大王製紙元会長の巨額借金事件と、オリンパスの巨額不正経理事件だ。

 リヤカーを引いて古紙を集め会社の基礎を築いた初代、ブランドを育て、業界3位にまで押し上げた2代目、そして3代目のバカ息子は会社法違反(特別背任)で逮捕された。
 大王製紙は和紙から洋紙に主力を移し、もっぱら新聞用紙でシェアを伸ばしたが、テイッシュペーパーのブランド「エリエール」で一気に有名になった。
 57年に始めたエリエール・レディースオープンゴルフが戦略的にも当って、61年にはテイッシュペーパー部門の国内シェア―トップにのし上がった。
 皮肉にも今年のそのゴルフ大会が終わるや、待っていたとばかりに会社が、元会長に対して刑事告発を行ったのだ。

 井川意高容疑者は典型的なボンボンで、まるで王族気取りで遊びまくった。それも半端ではなく、高級クラブで100万円を賭けてのじゃんけんを行ったり、はてはマカオやシンガポールのカジノにおぼれ、連結子会社からから借り入れた金106億8000万円の大半を使い果たしたという。
 おこぼれを貰った芸能人や政治家が大勢いるというが、一体誰なのかいずれ分かるから、どんな連中の名前が出るのか今から楽しみだという人も多い。

 親の育て方の典型的な誤りの見本みたいなものだが、子供の頃は蝶よ花よと可愛がり、愛媛から東京までジェット機で塾通いをさせたり、会社に入るやとんとん拍子に出世させ、42歳で社長に就任させた。
 これが帝王学と思っていたというのだから、親の無知にあきれてしまう。
 本人は東大に入ったのだから頭は良いのかもしれないが、人間としては最低の部類になってしまっていたのだ。似たような人は社会に多いが・・・。

 問題は、これほどの御乱行を父の隆雄氏は全く知らなかったということだ。「借入金をカジノで使っていたことも報道で初めて知った」「子会社から借金をしていることを知ったのは今年の3月」だという。
 こんな浮世離れした人がいるのか、私はどう考えても信じられない、これはきっと嘘に違いないと思っている。だから、この隆雄氏はじめ、他の一族が子会社などから金を借り入れたことは「一切ない」という言葉も全く信じられないのだ。
 いくら一族の力が強いと言っても、唯々諾々として金を出した子会社も断じて許されるべきではない。企業の倫理をわきまえない子会社の幹部も共に糾弾されるべきと私は思っている。

 もう一つは、オリンパス巨額不正事件だ。
 これを社内で追及した直後に、社長を解任されたマイケルウッド氏が日本に来て徹底捜査を求めている。もっとも、時事通信の報道によれば、この元社長は「不正を黙認する条件で企業の最高責任者(CEO)職を要求か」と言われている。彼は9月末に当時の菊川剛会長にCEO職を要求し、10月1日に就任している。そして同14日に解任されたのだが、この短時間の急激な移り変わりの中で一体何が起きたのか、何となく疑惑だらけといった感じではある。
 念のために書き添えれば、こうした内部告発は日本の法律で保護されることにはなっているが、保護対象は「労働者」で、社長は対象者になれないというのが一般的である。だから今度のように、現職の取締役がマスメディアを通じて内部告発したのは異例のことになる。

 24日に辞任した菊川前会長は、「損失隠しを知ったのは、最近になってからだ」と言っている。前述の大王製紙の父親と同じような言い方でびっくりする。
 皆「私は知らなかった」と責任逃れをしているのだ。
 オリンパスが損失隠しを始めたのは1990年代初頭の事で、いわゆる[飛ばし]という悪辣な手法である。
 損失を穴埋めするために、子会社を買収する時に投資助言会社に不当に巨額な報酬を支払ったことにし、あるいは企業価値を大幅に水増しし、こうして集めた巨額資金を「損失隠し」の総決算に使うのだ。
 オリンパスが損失の穴埋めに使ったと認めている2つの子会社だけでも、千数百億円に上るという。
 一体、当時の経営者たちは何を考えていたのだろうか。私が一番わからないのは、監査法人は何をしていたのか、主要取引銀行がなぜ見逃してきたのだろうかと言う点だ。

 オリンパスは世界的に知られた日本企業だ。疑惑がフィナンシャル・タイムス1面で報道されて以来、日本企業全体の国際的信用が失われたといっても決して大袈裟ではない。
 この際、徹底的に疑惑を究明し、このような事件が2度と起こらないようにすることが肝要だ。

 それにしても、近頃の道義の乱れはどうだろう。政治経済を問わず、その先頭に立つ人たちの言動も含めて、すっかり道義が荒廃しているように思えて心配でならない。
 日本の誇る武士道精神は影をひそめてしまったという感じである。
 私の今は亡き父は、いつも私に厳しく言っていた。大事なことは「恥を知ることだ」と。
 もう一度、日本人は、日本の誇るべき道徳観を呼び覚まし、あらゆる面において、世界に恥じないような国にしていかなければならないと強く思うのであった。