深谷隆司の言いたい放題 第249号
「上も駄目なら下もダメ」〜沖縄防衛局長更迭〜

 先月の12日、日米首脳会談で野田総理はオバマ大統領に、米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた環境移設評価(アセスメント)の評価書を今年中に提出すると約束した。沖縄県内ではアメリカ一辺倒だと猛烈に反発している。
 そんな中、田中聡沖縄防衛局長がとんでもない発言をし、直ちに更迭されるという事態となった。この評価書の責任者が防衛省の地方組織のトップ田中局長である。
 こんなアホがいるかと私でさえ腹が立ったのだから地元民の怒りは収まらない。

 田中氏が問題発言をしたのは、28日の夜で、那覇市の居酒屋で報道記者約10社が集まった酒席であった。
 この会は田中氏が、記者会見以外に率直な意見交換がしたいと自ら開いたものである。冒頭、この席の発言は完オフ(完全なオフレコ)と決めていた。
 評価書をいつ提出するのかとの記者たちの問いかけに、「これから犯す前に犯しますよと言いますか」と発言したのだ。
 元々、普天間移設のきっかけは、16年前の米海兵隊による少女暴行事件であった。その後も同様事件は後を絶たない。
 こうした状況の中で、評価書の提出時期を明かさない政府の姿勢を、女性への性的暴行に例えるとは・・・。
 県民感情を無視したなんと無神経な、なんと下品な奴であろうかと強い怒りを禁じえない。
 仲井真沖縄県知事は「コメントする気も起らん、口が汚れるから」と吐き捨てるように言ったがその気持ちはよく判る。

 そもそも普天間移設を巡る問題を、ここまでこじらせてしまったのは2009年政権交代をした鳩山由紀夫元総理の「県外移設を模索する」という発言からである。喜んだ沖縄県民は拍手を送り、すっかりその気になったが、当然のことである。
 自民党政権時代の1996年、日米両政府が米軍普天間飛行場の全面返還を発表し、2004年までの辺野古移設に合意していた。当時も反対の声はあったが知事を含めてやむなしの方向で動き出していた。
 2010年5月になると鳩山政権は、180度変わって、再び辺野古移設で合意してしまった。
 沖縄県民の怒りは頂点に達し、こうなっては知事も「県外」に固執、反対の姿勢を崩すことが出来なくなった。
 当初、野田総理は事の重大さに気づかず、29日は記者の質問に答えず1日中沈黙していた。あくまでも事務方の不祥事で片付けようとしたのかもしれぬ。
 翌日あわてて陳謝したが遅すぎる対応で、初の党首討論で責め立てられ平謝りであった。そんなこともあってか、自民党の谷垣総裁に逆質問などして立場を繕っていたが、茶番にしか見えなかった。
 30日の午後になって、中江事務次官が仲井真知事を訪ね謝罪したが、相手にされず、15分の予定をわずか6分で追い返されていた。

 念のため環境影響評価に触れるが、これは法に基づいて、道路建設や埋め立てなどの事業が環境に悪影響を及ぼさないかを調べる制度である。
 住民や自治体の意見も聞いて環境影響評価をまとめ、評価結果は事業計画に反映させることが定められている。
 米軍普天間飛行場の移設では防衛省が評価書を提出することになっている。沖縄県知事は埋め立て部分は90日以内、飛行場は45日以内に意見を提出。防衛省は必要に応じて内容を修正して評価書を確定させて公表する。1か月間の縦覧期間が終われば、国が着工に向けた埋めたて許可を知事に申請することが可能になる。
 今回はその評価書提出前のごたごたでつまずいたわけで、年内提出さえ怪しくなってきた。いずれにしても最後は知事の許可が必要で、こんな状態で解決できるのか、私はとても無理な話だと思っている。

 記者との完オフ懇談は、大臣時代も含めて私は何度もやっている。どんなに完全にオフレコと約束しても、これが記事になると考えたら記者はかならず記事にする。それは記者として当然の態度である。だからどんなに心許した懇談でも、又、如何に酒に酔おうとも、言ってはならないことは絶対に口にしないよう努めたものだ。
 人間大好きの私の場合、いわゆる番記者と個人的な信頼関係が生まれ、その後、家族ぐるみの付き合いが続いたりしている。
 この間も夫婦同士で旅をした元NHK政治部記者の秋田君などもその一人で、郵政大臣時代から実に21年の付き合いになる。それでも公職にある時は決して余計なことは言わなかった。
 今の大臣達はすっかり安っぽくなって、なんでもかんでも得意げに、まるで自慢げにペラペラしゃべる。国の危機管理など頭の隅にも無いのである。
今度の件は「上が駄目なら下もダメ」と言うことか・・・・

 それにしても、防衛局長の更迭は早かった。勿論防衛大臣が決めたのだが、自分のことは棚に上げて、部下の時だけは的確迅速にやる。この一川保夫防衛大臣の神経はどうなっているのか、こういうのを鉄面皮と言うと私は思うのだがどうだろうか。
 就任直後の「私は安全保障の素人」との呆れた発言、プータン国王夫妻歓迎の宮中晩餐会の欠席、まったく大臣としての資質、資格が無い。まず即座に更迭されるべきは防衛大臣ではないか。
 野党は一斉に防衛大臣の問責決議案を出すと言い始めた。全くもって当然のことで、そんな事も出来ないようなら野党の値打ちが無い。
 おっと、その時は山岡賢次消費者担当相も忘れずに一緒にやってくれ。マルチ商法業者との癒着がこれほどはっきりしている人はいないのだから・・・・・・。