言いたい放題 第230号 「独裁者カダフィ政権崩壊」

 10月20日、42年間にわたり独裁政権を続けてきたリビアのカダフィ氏が死亡した。
 2月から起こった民衆デモは、弾圧され、武力衝突に発展し、内戦状態になったが、ついに国民による暫定政府樹立への道を開いたことになる。
 それにしても独裁者の末路は哀れである。出身地のシルトに逃れ、穴に隠れているところを反カダフィ派の兵士に見つかり、引きずり出され、足蹴にされ、「撃つな」と叫んでも空しく、あっさりと殺されてしまったのである。
 カダフィの手には、いかにも権力の座に在った彼を象徴するように、黄金の銃が握られていた。
 穴の外側には、「ここがカダフィの場所。ネズミめ。神は偉大なり。」と落書きされていたという。

 カダフィ氏は1969年、27歳で軍事クーデターを起こし、当時のイドリス国王を打倒、革命指導評議会議長に就任した。大尉だったが、すぐ大佐になりそのまま止まった。なんでも憧れのエジプトのナセル大統領にならったのだという。
 資本主義とも社会主義とも違う「第3の道」を標榜したが、重要事項はすべて自分で決める典型的な独裁国家になった。
 周囲を一族や出身部族で固め、反体制派には家族や友人まで拷問を行い、その残忍さで国民を弾圧した。利権を一族で独占し、治安機関による監視国家であった。

 今年2月から、反体制派との戦闘が激化すると、外国人傭兵と戦闘機で自国民を数千人も殺した。まさに「中東の狂犬」であった。
 70年代には、パレスチナゲリラによるテロを支援した。日本赤軍も支援されたが、恥ずべき歴史の1ページである。

 今年に入り、チュニジア、エジプトと、中東・北アフリカ地域で政権が崩壊したが、これで3ヶ国目になった。ただ、先の民主化運動は「アラブの春」と言われるように平和裏に政権移行が行われたが、今回は流血の結果であった。

 一時沈静化したかに見えたアラブ諸国での政権転覆の動きが、再びドミノ現象のように広がる可能性があると思う。
 カダフィ政権は盤石と言われていたが、このような惨めな末路となった一つの理由は、国際社会の軍事介入があったことだ。
 反政府デモや人権問題は一義的には国内問題なのだが、今後も欧米諸国の介入は続くと思われる。こうした動きの是非については、私には若干の疑問が残る。
 前述のように、カダフィ政権崩壊はアラブ諸国だけではなく、同じような独裁的体制を敷くアフリカや中央・東アジアの国々にも衝撃を与えている。
 各国の反体制派にとっては追い風となることは間違いないが、これからシリア、イエメンなどはどうなっていくのか。一層弾圧が激しくなる可能性もあって心配である。 
 いずれにしても事態が泥沼化しないように祈るしかない。

 さて、リビアはこれからどうなっていくのか、はっきり言って民主化に向けた政権移行は 簡単に行くとは思えない。
 すでに反カダフィ派の各部隊で指導権争いが始まっている。又、伝統的に東部と、トリポリのある西部との間に確執がある。国民評議会はトリポリが首都と主張しているが、カダフィ政権下で差別を受けてきた東部はそれでは収まらない。

 評議会の暫定憲法は、全土制圧宣言から30日以内に暫定政府を樹立すると定めている。暫定政府は8か月以内に議会選を行い、新議会が「移行政府」を設立。移行政府が制定した憲法のもとで1年以内に総選挙を行い、2013年に正式に政府が成立することになっている。
 今までリビアには特定の政治的な構想やイデオロギーが無かった。憲法も議会も、元首もいない。全てがカダフィの判断で政治も社会も動かされてきた。逆に言えば、この国をどう築くのか、国民は経験的知識を全くと言っていいほど持っていない。いわばゼロからの出発である。
 これからが本当に大変だなと他国ながら心配なのである。

 他国ながらと書いたが、勿論日本にとって無縁ではない。日本はアラブ地域に原油の約9割も依存している。これからの動きによっては、日本のエネルギー安全保障問題にも直結しかねないのだ。
 リビアの石油埋蔵量は世界で8番目と言われている。石油や天然ガスの生産輸出を早く軌道に乗せ、リビア国民の生活レベルを上げることが、リビアの国造りの最大の課題だ。それは一方で、日本の石油輸入の可能性にもつながっている。
 今、各国は、リビアの豊富な油田に最大の関心を払っている。うっかりすると、油田開発に、欧米企業が介入し、気が付いたら天然資源が彼らに独占されていたなどという事態になりかねない。それはリビアにとって最も不幸なことであるが、取り残された日本にとっても大きなマイナスになることは間違いない。

 日本とリビアとの関係は決して悪くは無い。だから、リビアの再建にあたって、きちんと発言し、誠実に協力することが出来る立場である。
 日本政府は、この際、敏速に、かつ積極的に動き出さなければならないのだが、野田政権に目下その動きは無い。

 野田総理は「愚直」が売り物だが、本当は「愚鈍」なのではないか
 ああ、民主党政権の愚鈍な姿が歯がゆくてたまらない。本当に情けないと思っているのは私一人ではないであろう。