言いたい放題 第229号 「ワクチンを巡る県と国との対立」

深谷隆司の言いたい放題 第229号
「ワクチンを巡る県と国との対立」

 昨日、神奈川県知事の黒岩祐治氏から、転居お知らせのはがきが来た。知事に当選して半年が過ぎたが、本人は横浜の知事公舎に単身赴任、自宅は渋谷区、事務所は横浜中区とある。
 彼とはテレビで何度か一緒になったが、格別個人的に親しくしている訳ではない。しかし、折々に連絡してくれるから、私の方も好感をもって、その活躍ぶりを見守ってきた。
 その黒岩知事が、今、小宮山洋子厚生労働大臣と真っ向から対決して一歩も引かない構えである。なりたての知事なのにやるではないかと、私は声援を送りたい。

 乳幼児を対象に行われているポリオ(小児まひ)の予防接種を巡っての論争である。
 現在、日本国内の定期接種では、生きたウイルスを使う生ワクチンが使われている。ところが生ワクチンで、まれにではあるが麻痺を発症することがある(100万人当たり約1,4人)。
 子供を思う親からすれば大問題だ。そこで希望者が続出しているのがまひの起きない不活化ワクチンである。
 こうした声にこたえたのか、今年5月、厚労省は来年度中にも不活化ワクチンを導入できるとの見通しを示した。
 そこでいち早く、神奈川県が独自に、不活化ワクチンを予防接種に当たって提供する方針を決めたのだ。
 しかし、これに対して「待った」をかけたのが小宮山大臣である。
 厚生労働省は来年導入できるだろうとは言ったが、勿論現在は未承認のものである
 未承認だから接種費用は自己負担だし、仮に、副作用や健康被害が出ても、「承認されていない薬品だから、救済制度が適用されない」というのである。
 更に、「神奈川県の導入は、いたずらに国民の不安をあおることになる。その為に、全国的に生ワクチン接種を控える人が増え、免疫を持たない人が増えたらどうするのか」と、相変わらず生ワクチン接種を呼びかけているのである。

 確かに北京などでもそうだが、近年、ポリオは海外で急激に流行し、危機感が高まっている。
 しかも、この病気はワクチンでしか防げないといわれている。
 だからといって、稀にとはいうものの、副作用があるとわかっている生ワクチン接種を、そのまま推し進めようとするのには無理がある。
 小宮山大臣は、神奈川県の方針に対して、「予防接種行政上、望ましいこととは思っていない」と、なんともお役所的発言をしている。いや、おそらく役人の振り付けのままの発言に違いないが・・・。
 黒岩知事は「国がやるべきことは、一日も早く不活化ワクチンを認めることだ。国が認めれば神奈川がわざわざやる必要はない」と国に承認を迫っている。「そもそも国の対応が遅いのだ。国は対応の遅さを反省してすぐにやるべきだ。なんと言われようと断固やる」と、益々国との対決姿勢を強めている。久々に聴く啖呵で、何とも頼もしいではないか。

 厚生省は、不活化ワクチンの導入は早くても24年の終わりごろと考えているようだが、私に言わせれば、導入可能性を発表した時期と実現の時期があまりにも離れていて、だから混乱が起きるのだと思う。
 事実、保護者の不安が広がって生ワクチン接種は減少している。一方で、有料など、条件が悪いのに不活化ワクチンは、販売本数を見ても21年と比べて、実に60倍以上になっている。こうした現実の流れを看過してはならない。

 小宮山大臣、地方自治体に向かって、批判している暇があったら、身内の厚労省にはっぱをかけて、一刻も早く導入承認にこぎつけるようにするべきではないか。
 それが、政治家たるべき大臣の見識、勤めではないかと私は思っている。