言いたい放題 第217号 「頼りない野田外交デビュー」

 台風一過、ようやく秋の爽やかな青空が広がっている。
 それにしても、転変地変の脅威が次々と日本全土を襲い、各地に大きな被害をもたらした。
 大地が揺れ、猛り狂ったような風雨に、何か我々が自然の怒りに触れたのではないかと感じさせ、慄然とする思いである。
 今月初めの台風12号は90人を超える死者、行方不明者を出したが、今度の15号も日本列島を縦断し、死者、不明者は15名に達した。
 私の住む首都圏では、夕方から夜にかけて鉄道が運休となり、帰宅ラッシュを直撃して、いわゆる帰宅困難者が駅に溢れた。
 東日本大震災で受けた、筆舌に尽くしがたいほどの被害の傷がまだ癒されないうちの、今回の災害に呆然とし、これから日本はどうなっていくのかと不安を抱く人は多い。

 こんな時こそ、政治や行政がしっかりとした対応をしなければならないのだが、相変わらず混迷が続いている。
 与野党が協力して、一日も早い復旧復興のために全力を挙げて欲しいと、心から願わずにはいられない。
 今、もし自分が現職であったなら、こうもしたい、あれも出来る筈と、様々な思いが巡るのだが、詮無い話ではある。

 ところで、野田首相がいよいよ外交デビューした。
 震災で内向きであった日本が、いわば潮目を変えるチャンスともいえる外交初舞台、しかし、最初の日米首脳会談でも明らかなように、相当厳しい試練が待っているという印象である。
 オバマ大統領にとって、就任以来日本の首相に会うのは、なんとこれで4人目である。国連総会で会談するのは、3年連続で違う首相という異常な状況である。
 野田首相は会談後、「個人的な関係を築くいいスタートが切れたと」と自画自賛していたが、能天気な話ではないか。
 普天間移設問題では、オバマ大統領のいら立ちが垣間見られ、「年内に具体的な結果を出すように」と、かなりはっきりと求められていた。
 アメリカの上院では、普天間移設に連動する沖縄海兵隊のグアム移転費用について、オバマ氏の要求に対して「全額却下」という厳しい答えを突き付けている。
 年内に、日本側の具体的進展がなければ、このまま予算がつかなくなることもあり得るのだ。
 相変わらず沖縄の反発は根強い。野田首相は「全力を尽くす」と繰り返すだけだが、言葉だけで断じて終わってはならないことである。

 国連の潘基文事務総長との会談で、野田首相は南スーダンPKOへの自衛隊派遣について、かなり前向きな話をしている。
 かつて、インド洋の海上自衛隊派遣を手掛けた私の立場から言えば、国際貢献に踏み出したことは結構なことではあるが、現地の治安状況がすこぶる悪いと言われていることを考えると、そう簡単ではないぞと心配でならない。
 国境付近では紛争や略奪が横行しているが、そんなところへ、調査団が出かけた後、必ず求められるであろう施設部隊の派遣など可能なのだろうか。
 いざ派遣となれば、当然、自衛隊の武器使用基準の緩和や変更など、様々な対応が必要になってくるが、果たして民主党内の合意が得られるのだろうか。
 野田首相の発言は、言うまでもなく国際公約である。もし、この発言が空念仏で終わったら、日本への信頼は一気に失墜すること必定なのである。

 ニューヨークの国連本部の演説では、「原発事故の冷温停止を年内をめどに達成する」と、来年1月中旬と言ってきた事故収束の達成時期を前倒しする考えを表明した。大した根拠も無しに、大丈夫かと心配になる。
 安全性を高め、早期解決を伺わせることで、原発や関連技術を、新興国に輸出しようとする方針を、引き続き進めることを示そうとしている、という見方もある。
 民主党内では脱原発の動きも根強くあるが、もしそうした考えが主流になれば、新興国への輸出など矛盾した話ではないか。
 一体、日本の将来のエネルギーをどのようにしていくのか、政府にも民主党にも確たるコンセンサスは無い。
 大体、代替エネルギーの見通しもないまま、ただ脱原発を喧伝するなど無責任な話である。まさに国民迎合主義、政権交代時に掲げたマニフェストと同じことで、羊頭狗肉なのだ。

 せっかくの外交スタートの時、ケチをつけるつもりはないが、せめて今日の青空のように、台風一過の、すっきり爽やかとはいかないものだろうか。