言いたい放題 第196号 「被災者のたくましさ」

 今年の2月、親しくしている松島蒲鉾の千葉さんの案内で、家族と松島観光を楽しんだ。
 その翌月、3月11日の東日本大震災で、この蒲鉾屋も大被害を受けて、営業不能になっていた。あの美しい松島は、どんな風になっているのか…。
 現地で、私たち家族を乗せて世話をしてくれたのは、南三陸観光バス株式会社の橋武彦社長であった。
 最近になって、千葉さんとの電話で、彼の会社が壊滅的被害を受けたと知って、何もできないが、せめて浅草の味で元気を出してもらおうと、むぎとろからお菓子を送った。
 返ってきた丁寧な手紙に、逆に激励を受けたのは私の方であった。
 かねてから東北の人達のたくましさは、災害状況の報道を通じて知っていたが、当事者からの直接の手紙で、その前向きな姿勢に感動した。
 政治や行政が無策の為に、どれだけ被災者たちは苦しんでいるか、無冠の私だけに日々胸を痛め、憤りを感じていた。
 しかし、現地の人達は、だれにも頼らず、自らの手で立ち上がり前進しようとしている。
 この姿を多くの人たちに伝えたい、そんな思いで、高橋氏の了解も得ず、お手紙を載せることにした。
 是非、こうした姿を大切に受け止め、みんなで彼等を支える為に、出来ることを実行し、併せて、この国の将来に心を寄せ合い、協力していきたいものである。


―橋武彦氏の手紙(転載)―

 拝啓、台風以来肌寒い日が続いておりましたが、また、真夏に戻ってきました。先日は浅草麦とろのお菓子と茶そばを頂きましてありがとうございました。家族みんな、にこにこ顔でおいしくいただきました。
 雪が降りしきる震災の当日から4ヶ月半経ちますが、月日の流れがこれほど早いと感じることは今までになかったことです。
 震災直後残ったのは私たちが乗っていた車と送迎用のバス3台のみ、自宅、事務所、観光バス13台を津波に流されました。ただ、人的被害がなかったので、それは本当に幸せなことでした。
 今回の震災後、人間は自然の前では無力ですが、生きる力は無限だな〜と実感し、自然によって人は癒され、自然の恵みに有難さを感じ、日々生活をしております。
 津波の翌日、瓦礫の中に横たわるバスを見た時、我々に出来ることは何か、そして、送迎用バスが残った意味を考えました。被災者だからこそ、被災者の気持ちが一番わかる、そんな思いから地域の足となり瓦礫の中、浸水した海水の中を子供たちや地域の方々を乗せてバスを走らせました。今は、瓦礫の撤去や道路の嵩上げが進み、海水の中を走ることも無くなりました。
 3台だったバスも今は、古い送迎バスを購入し、19台まで増やし運行しております。これも松島蒲鉾の千葉さんはじめ、皆様に支えられ必死でやってきたおかげです。
 先日、仙台市で六魂祭が盛大に行われました。その様子から、みちのくの夏祭りや山々が燃えるように色づく秋には、お客さまが絶対に戻ってくると確信しました。これからの夢、希望、目標は、観光バスを復活させる事。被災したからこそ伝えられること、自然の偉大さ、津波の恐ろしさ、そして、全国の皆様からの御支援に“ありがとう”をバスに乗車されたお客様を通して発信できたらと思うとワクワクいたします。
 一歩、一歩確実に、復旧、復活、復興をしていきたいと思っております。
 ひぐらしが涼しさを運んでくれますが、ミンミンゼミが暑さを運んできます。くれぐれもご自愛いただくようお祈り申し上げます。
敬具
  平成23年7月25日
橋 武彦
深谷隆司様

―以上―