結局、菅首相は8日の閣僚懇談会で、原発の再稼働を巡って混乱が起きていることに陳謝した。海江田経産相に同調する閣僚が多いことに驚いてのことだが、本来、謝る相手は国民、とりわけ玄海原発のある現地の人々ではないか。

 原発再稼働について安全性を確認することは当然のことだが、ならば何故一旦は了解したのか。くるくる変わる菅氏の発言が問題なのだが、その点はしらばっくれている。
 
 大体、ストレステストなるものは欧州連合(EU)が先行して行ってはいるが、これは福島第一原発の事故を受けて6月から始めたものである。
 EUの ストレステストとは、域内14ヵ国の原発143基の安全性の余裕度を、コンピューターで計算して調べる検査である。(地震、洪水などの自然災害の他、飛行機墜落などの事故や人為的な被害を想定。原子炉の素材や厚さなどのデータ―をもとに余裕度は計算する。)
 終了は来年4月だが、その間も原発の運転は続けられる。検査結果は公表されるが、問題があっても廃炉にする権限はEUにはない。どうするかは各国が決めることになっている。
 ではこうした仕組みは日本にはなかったかといえば、「耐震余裕度評価」といって同様の検査は電力会社やメーカーが独自にやっては来ている。もっとも、九州電力の今回の「やらせメール事件」で、どこまで信頼されるかは別だが・・・。
 又、国内の原発は、法律上、安全基準というのがあって、それが満たされているかの判断が行われている。
 今日、政府の基本的方針を発表したが、法律そのものをかえないかぎり、いくらストレステストを作っても権限のないものになるのではないか。玄海原発について、8月にはメドをつけるというが、一体、どんな内容になるのか注目している。

 これからの最大の課題は、原発に対する安心感と安定供給をどう両立させるかだ。
 全国に54基の原発がある。原則として13か月運転したら、定期検査に入る。今は17基(調整運転中のものは除く)が発電しているが、もし、このまま再稼働出来ないと来年2月末には、営業運転している原発は全国でただ1基になってしまう。
 日本エネルギー経済研究所の試算では、全原発停止で火力発電所を動かすと、2012年度の化石燃料費は今年度より3.5兆円増えるという。
 電力不足で企業は大影響を受け、海外移転も加速する。当然電力料金も跳ね上がって、家庭家計を直撃する。
 菅首相は、代替エネルギーが今にも可能な言い方をするが、そんな状況は全くない。

 東京電力は福島第一原発の廃炉問題で、中長期的工程表案を示した。それによると使用済み燃料プールから燃料の取り出しは3年後から始め、10年後をメドに原子炉内の燃料を取り出し始めるという。廃炉(原子炉を解体撤去した状態)までは数十年かかるとしている。
 それまでは危険な状態が続くのか。
 危険と、いう点から言えば稼働し続けても、廃炉にしても、あまり変わりはないのではないという科学者もいる。
 お隣の中国は、8千万キロワットを超す原発出力を目指している。だとするならば日本の危険度はもっと大きくなる。ドイツは脱原発、フランスは原発推進と各国さまざまだ。

 菅首相は、このところ、すっかり脱原発気取りである。それどころかこれを争点に解散選挙までやろうとしているとの憶測まで流れた。
 菅民主党政権は、昨年6月、エネルギー基本計画を決めた。それによれば、20年後の電源供給の50%を原子力でまかなう方針となっている。その上、原子力発電を世界に売り込むとして、意気揚々とベトナムなどに乗り込んでいた。  あれは一体なんだったのか。

 大事なことは、政権維持とか、ましてや総理の席に未練がましく、しがみつくことではない。
 政治が今やるべきは、エネルギー戦略の百年の大計を立てることである。
 日本の科学を総動員して、例えば使用済み核燃料の再処理問題に取り組むことなど、むしろ日本の使命ではないか。
 福島の苦い経験を踏まえ、原子力発電の安全性について、むしろ技術的にも世界のリーダーになるくらいの気構えが必要ではないのか。
 勿論、新エネルギーの開発は極めて重要なことである。しかし、大事なことは、言うだけでなく真剣に取り組んで前進させることなのだ。

 近年、日本はすっかり夢を失って、何事においても消極的になってしまった。
 日本の誇りと自信はどこへいったのか!
 この国の再生のために、今こそ、一身を投げ出したいのだが・・・、無念だ。