言いたい放題 第170号 「ツケは国家国民に」

 フランスで開かれている主要国首脳会議 (G8サミット)で、なんだか菅総理、妙に楽しげに張り切っていた。なにしろ、オバマ大統領はじめ、世界をリードしている有名指導者たちと対等に話し合い議論できるのだから、自分もすっかり偉くなったと思って嬉しくなるのは当然のことかもしれぬ。
 つい数日前まで、国会で責任を追及され、立ち往生していたとは想像できないくらいだ。
 
 ところがその頃、日本では例の福島原発での海水注入について、嘘だ本当だとか、さっぱり訳の分からない話で大騒ぎになっていたのである。

 この騒ぎの経過をもう一度振り返ってみよう。
 震災翌日の3月12日、原子炉を冷やすために、真水が無くなった後、海水を注入することになった。これは東電のマニュアル通りの判断であるが、何故か一時期、この決断は菅総理の政治主導だと彼の功績のように言われた。勿論政府筋の浅知恵で宣伝されたと思われるのだが・・・・。

 ところが、すぐに、その嘘はわかってしまった。実は総理には連絡せずに東電側が対応していて、そのことを知って、事前に知らされていなかったと激怒し、逆に55分も中断させたというのである。
 更にこの話には尾ひれがついて、斑目原子力安全委員長が「海水を注入したら再臨界の危険がある」と総理に進言し、その為に海水注入が中断されることになったという。
 このことが報道されると、今度は斑目委員長が「そんなことは言ってない。侮辱された」とこれまた大騒ぎ、「可能性はゼロではないと言ったのだ」と訳の分からない事で一段落となった。
 
 ところが、話はそれだけでは収まらなかった。
 26日になって、海水注入は一度も中断されることなく継続されていたと東電が発表したのだ。どうやらこの発表が真実のようである。
 海水の注入について、総理の了解が得られていないので、本社と発電所がテレビ会談を行い、協議の上中断を決めた。
 しかし、福島原発の吉田昌郎所長は、「ここで止めたら最悪の事態になる」と判断してそのまま継続させたという。
 吉田所長は剛毅な人で、これまでも本社幹部の誤った指示に対して「やってられんわ、そんな危険な事、作業員にさせられるか」とわざと聞こえよがしに言ってのけたこともある。
 不確かな知識で大騒ぎして混乱させるリーダーと、それに対抗できないエリートたちに、現場で命がけで頑張る所長の憤懣やるかたない思いはわかるような気がする。
 事実、大方の声は、所長の判断が無かったらもっと大きな事故になっていたのではないかという点で一致している。
 しかし、問題なのは、なぜ、こんな重大なことが長期にわたって報告されていなかったのかで、仮に技術的には正しい判断だとしても、責任は問われなければなるまいと私は思っている。

 いずれにしても、こうなってくると、菅総理が国会で答弁したことは一体なんだったのかということになってくる。その場その場で自分の都合の良いように言いくるめて、ただやり過ごしてきただけではないか。
 これでは国会軽視、いや国民に対して冒涜と言っていい。断じて許されることではないと思う。
 国会内で、今、与野党を問わず、菅総理に内閣不信任案を提出しようという動きがあるが当然のことである。ただ困ったことに提出する側にも色々と異なった思惑があって、必ずしも足並みが揃っていないようなのである。

 サミットで菅総理は、オバマ大統領やサルコジ仏大統領に、「原発事故に関する情報は最大限の透明性をもって全て提供する」と胸を張って発言したが、すべての日本における状況を正確に知っている彼等は、おそらく、内心呆れ果てていたに違いない。

 そのサミットで、菅総理は色々と恰好の良いことを発言している。大臣として度々国際会議に出席してきた私から見れば、そんなことを無責任に言ってよいのかとハラハラするばかりである。
 発電量に占める自然エネルギーの割合を、2020年のできるだけ早い時期までに20%台に前倒しにすると大見得を切った。いままで2030年までと彼は言っていたはずだ。
 私の通産大臣時代から、自然エネルギー促進の大号令を掛けてきたが、コストや技術の面でなかなか進まず、現在、大型の水力を含めてもまだ一桁台でしかない。
 目標を早めるということは悪いことではないが、なにか具体的な根拠があるかと言えば、なにもある筈がない。要はペーパーの上で単に2030を2020と変えただけなのである。
 また、つい調子に乗って、来年、日本で国際会議をやろうと提案したが、それまで自分は総理として残っていると考えているのだろうか。

 いずれにしても、菅総理の軽々しい言動は困ったものだ。国内だけではなく国際社会でも平気で思いつくまま勝手なことを言うのだから始末が悪い。そのツケは国家国民にいずれは帰ってくることを、我々は覚悟しなければならないのだ。