言いたい放題 第167号 「きれいごとの裏で」

 東日本大震災から、すでに二か月が過ぎているのに、被災者の多くが絶望の渦中にあり、混乱のままで、先行きが一向見えず、救われない思いで暮らしている。
 何回言っても仕方のないことだが、一体、政治や行政は何をやっているのかと腹立たしい限りである。

 二十二日、福島県で四代続いた老舗松渓苑の社長夫婦と私の家族とで会食した。
 この旅館は二本松の岳温泉にあり、私はスキーに出かけた折に数回泊って、国体の選手だった社長と一緒に滑ったこともある。余談だが、私のスキーは荒っぽくて猛烈な速さだから,「とても着いていけない」と言われて、相手が国体選手だけにちょっと優越感を抱いたこともある。
 ある日、週刊新潮を開くと、なんとそのグラビア写真に、大被害を受けた旅館の惨状が載っていた。早速,とりあえずお見舞いだけでも伝えたいと連絡をとったのが縁で、この会食となったのである。
 
 一般に、災害の後の報道は、日本人の我満強さや、助け合いの素晴らしさなど、きれいごとばかりが多いいが、話を聞いてみると現実はそんな生易しいものではないようだ。
まず、一番頼りにしていた銀行の態度が、大きく豹変してしまったという。共に頑張ってなんとか助けよう、という誠意は全く感じられず、すっかり心が折れてしまったという。
 確かに、大地震で大浴場や露天風呂など九つの風呂がすべて壊れ、客室の天井が落ち壁も崩れた。修繕費など莫大な費用が掛かる。その上、福島原発の風評被害で、客足は何年も戻らない可能性がある。とても返済は難しいと銀行は判断して尻込みし「返済計画が無ければ」とそればかりを繰り返した。
 百五年も続いた老舗だ、銀行にもかなりの利益を与えてきたではないか。
とうとう、「頑張ろうという気持ちが折れてしまった」のである。
 
 それだけではなく、今、福島の人は色々な差別を受けているという。福島県人ということだけで縁談まで破談になった人がいる。疎開した先で、子供たちがいじめにもあっている。デイズ二−ランドでは駐車していた福島ナンバーの車が、傷つけられたり壊されたりした。こうしたことが現実に起こっているのだ。
 ああ、それでなくても必死に頑張っている人達に対して、何たる仕打ちか。同じ日本人として恥ずかしい。

 この日の宴は、最初は深刻な話から始まり、それでも次第に和んで、最後はすっかり打ち解けて、明るい表情で帰られた。少しは役立ったのだろうか・・・。