言いたい放題 第163号 「突然の浜岡原子力発電所停止」

 菅総理大臣は静岡県御前崎市にある浜岡原発に対し全面停止を要請した。これを受けて中部電力は五月九日、全炉を数日中に停止することを臨時取締役会で決めた。
 要請は六日七時過ぎに突然発表された。何事も常に後手後手の総理だが、今回の決断はなぜか早かった。
 ただ、どこまで熟議がなされたかについては、かなり疑問が残っている。
 夏の電力不足や日本のエネルギー政策について、十分な吟味をしたという様子は皆無なのだ.

 稼働中の原発を止めるというのは初めてのことで、日本のエネルギー政策を転換するのか、これは立地自治体にとって、あるいは経済界にとっても大きな影響を与えることになる。世界の国々はどう受け止めるのか、ひとり日本だけの問題ではないのである。
 前にも述べたが、日本の発電電力量の約3割は原子力が占め、新エネルギーはわずか1パーセントにすぎない。短期間で原発に代わる発電規模にすることなど全くと言ってよいほど不可能なことだ。代替手段となる火力発電にしても、温室効果ガスの排出量増加につながる。菅総理の頭には、これらの課題を即座に解決する具体策がある筈もない。
 一応、この判断はあくまで例外的なもので、中部電力以外には波及させないと政府はやっきになって強調してはいる。今までのような「思いつき」でなければいいがと考えているのは私だけではないであろう。

 何故、浜岡なのかについて、政府の地震調査委員会の言う「この地域は東海地震の震源域にあたり、今後三十年以内にマグニチュード8程度の地震発生確率が87パーセント」にあることはいうまでもない。ただ、ここまで断定的に言うと、新たな風評被害も起こってくるようで、この地域一帯の振興発展に影響しないのかと心配になってくる。

 中部電力のこれからの課題は、実際に止めた時の需要と供給のバランスをどうとるかだ。
まず考えられるのは「電力融通」で、関西電力などから電気を買うことだが、これは一応なんとかなる。困るのは、実は東電への融通が出来なくなることである。中部電力は周波数を50ヘルツに変換して東電に融通していたが、これが無くなると夏場の東京で電力不足に陥りかねないのだ。
 中部電力では、火力発電の出力増強や停止中の古い火力発電設備の再稼働を検討している。そこで問題になるのが燃料の調達と費用だ。特に費用だが、火力燃料の石油や液化天然ガス( lng)は原子力燃料より割高で、負担増はなんと一日七億円、半年続くと今年度の営業利益の見込み千三百億円が消えてしまうという。
 
 福島原発の事故以来、何かというと「脱原発」という言葉がやたらと先行するが、事はそんなに簡単なものではないのである。

 菅総理の政治判断についての評価は、目下のところいろいろだが、さてこれからどうなっていくのか、固唾を飲むような思いで見守るしかない。