言いたい放題 第155号 「退を好む」

 小沢一郎氏が倒閣運動を再開したという。菅氏の地震や原発に対する対応は、あまりにお粗末すぎて話にならないが、だからといって、政治とカネの問題で党員資格停止となっている立場で、何を今更という感がする。
 彼はまさに被災地の岩手出身だから、特に地元向けもあって強気の発言になっているようだが、地震発生以来御本人は、東京に息を潜めるように止っていて、地元に帰ったのは一日だけ、しかも被災者を直接慰問することもなかった。
 一体、何を考えているのかわからない。
 小沢氏は、1993年6月、宮沢内閣を倒閣に追い込んだことを例にあげて、若手議員らに内閣不信任案の提出と可決を煽ったと記事に出ている。
 この宮沢おろしは、私も実体験しているだけに、あの時の小沢氏ら一部自民党議員の造反行動を思い起し、腹立たしいかぎりである。
 野党が提出した内閣不信任案に、小沢氏らが造反して賛成し、解散選挙に追い込んだ。その選挙で自民党は敗北して下野し、細川政権誕生となった。
 その後、私は予算委員会筆頭理事として、細川政権を倒し、続く羽田政権も2ヶ月で倒したが、その間の苦労は並大抵のものではなかった。
 時が移り変わって、今度は民主党政権となったが、又、同じことをやろうとする。まさに「壊し屋」と異名をとった小沢氏ならではのことである。
 菅総理をこれ以上、政権の座に居続けさせることは、日本の国の為に絶対に良くないことで、一刻も早い退陣を求めなければならない。しかし、こうした世論を背景に、又、しゃしゃり出て、小沢氏が旗を振ったら、かえって物事が進まなくなると思うのだ。

 それにしても菅首相は、なんと軽々しい発言を続けるのか。それも、彼と会った関係者がより軽薄で、ベラベラ喋りまくっては問題になっている。
 4月13日、東日本大震災で意見交換した松本健一内閣官房参与とやらが、「首相が周囲30キロ以上のところも10年、20年人は住めないことになる。再び住み続けることは不可能だ」と話したことを記者団に語ったのだ。
 菅首相は、「私が言ったわけではありません」と発言を否定し、松本氏は、「あれは私の推測だ」と釈明しているが、一体どういうことか、今、現在、移住させている地元民のことを少しも考えていない、彼らに与えたショックを考えると、断じて許せないことである。
 前にも書いたが、震災後、「最悪の事態になったときは東日本が潰れる」と、首相が語ったと笹森清内閣特別顧問が明かして大問題になったこともある。
 労働組合の親玉をいつ特別顧問にしたのか知らないが、参与やら何やら、やたらと首相周辺に訳のわからぬ肩書きの連中が増えている。
 首相によほど自信が無い故なのか、彼らの軽挙妄動を見ると、こんな軽輩をつかっているようでは、危なくて見ていられないとつくづく思う。
 又、菅首相は対策会議や対策本部など次々に立ち上げている。知識人を集めれば事が足りると思っているのかも知れぬ。
 しかし、私なら優秀な官僚達を中心に、各省の精鋭で事に当たるべきと思っている。どうも政治主導にこだわって、せっかくの知識と能力のある官僚をしりぞけている。これは、全くもったいない話だ。ついこの間まで、日本の官僚は世界一といわれていたのに、と残念でならない。だいいち会議の数ばかり増やして、かえって何事もまとまらないという悲劇的状況になっている。
 要は、菅首相は人を見る目がない。人を動かす力がない。つまりはリーダーとしての器量がないのだ。

 細川元総理が、いみじくも語っているが、「リーダーの資質で最も大事なことは、宋の「名臣言行録」にあるように「退を好む」ということで、ポストにいつまでも固執するような人には、この国の大事は任せられない。」ということだ。
 細川氏を8ヶ月で退陣させた私としては、少し胸が痛むが、これは正論で、菅首相はこの言葉を拳々服膺しなければならないと思っている。