言いたい放題 第151号 「自粛を自粛せよ」

 驚くほどの瓦礫、夥しい犠牲者、そして先の見えない被災者のことを思うと、自分が今一体どのように暮らしたらいいのか戸惑う。
 知事選挙も始まっていて、私は石原慎太郎の応援をしているが、宣伝カーを出さず、街頭演説も行わない。
 私の地元で、後半予定していたシビックセンターの演説会も中止となった。
 これからスタートする地方統一選挙で、後輩諸君の為に50枚近く必勝の色紙を書いて届けたが、これからどう選挙運動を進めたらいいのか、各々悩んでいた。
 例年なら、これから上野や隅田公園など、桜の下で宴会が繰り広げられ大変な賑わいになるが、やっぱり自粛しましょうということになった。靖国神社や千鳥ヶ淵公園なども同様の対応だ。
 5月20日から予定されていた浅草三社祭も中止となったが、これは戦後初めてのことである。
 まだ3ヶ月も先のことだが、7月末の隅田川の花火もどうなるかわからないという。もともと隅田川の花火は、江戸時代に起きた飢饉などで亡くなった方々を弔うためのものだったのだが・・・。
 ホテルマンが「予定されていた催しが次々とキャンセルになって、閑古鳥が鳴いています」と嘆いていたが、私の場合も、叙勲祝賀会等無期延期した。
 ロイヤルパークホテルや椿山荘は、「当然のことです」と文句一ついわなかったが、逆に私の方が申し訳なさで一杯だった。

 被災者のことを思えば自粛は当然のことと思う。しかし、一方でなんだか日本中が喪に服しているようで、こうした状況をいつまでも続けていいのだろうかと、不安や疑問を感じ始めている。
 日本の景気は、この2月頃から、ようやく足踏み状態から脱しつつあった。2008年のリーマンショック以来、政府の景気刺激策や新興国の成長があったからだ。
 特に自動車生産が持ち直したことなどの背景もあった。
 しかし、その矢先の大震災である。この地方は、部品メーカーが多いために、供給がストップし、自動車産業や電機メーカーを直撃し、生産停止に追い込まれてしまった。
 計画停電は日常の暮らしだけでなく、各産業に次第に悪影響を与えはじめている。
 その上、原子力発電所で放射能漏れが続き、野菜など農作物はじめ、魚介類への汚染が心配され、これに風評被害も加わった。
 海外の日本離れも目立っている。

 住宅の崩壊や道路、港などインフラは壊滅状態で、それらの経済損失は、直接的被害だけでも16兆円から25兆円と試算されている。
 阪神淡路大震災では約10兆円といわれたが、今回の大災害は、日本経済の土台を揺さぶる程の大きなものであった。不幸な状況がまるで連鎖反応のように日本全土に広がっている。

 復興のために、一体どのような手段を講じたらいいのか、肝心の政府が暗中模索状況でなんとも情けない。
 復興費用の捻出に、早速、増税の声も出ているが、災害下の増税は国民負担を増し、消費の停滞を招いて、良いところは見当たらない。
 経済学者の高橋洋一嘉悦大教授は、「国債20.6兆円のうち、10.9兆円を占める債務償還費を復興費に充てよ」と主張している。確かに、政府は債務償還に借換債で対応しているのだから、当面これを活用することは有効かもしれない。
 財務省は猛反対だが、無利子国債説や日銀に引き受けさせよとの声もある。
 又、100兆円もの外資準備金があるのだから、これを取り崩せば公共事業に回すことも出来ると主張する人もいる。
 いわば日本は非常事態なのだから、ここは考えられる全てを検討し、時には大胆に対応していくことが必要なのではないかと私は思う。

 さて、このような時、我々個々人には何が出来るのだろうか。前にも述べたが、やっぱり全力で働き、消費活動を活発にすることではないか。
 「外食のすすめ」もその一つで、私はそれを今家族と共に実践している。自宅から歩いていける範囲で、決して贅沢ではなく、安くて良い店を探し訪ねているのだ。私にとって、地域を知る絶好の機会でもある。
 ささやかな一人一人の行動が、実は国全体に大きく影響すると思う。
 被災地の方々を憂う心は大切だが、ひたすら自粛自粛で、日本経済をいたずらに冷やし続ければ、結果に於いて彼らを救うことにはならないのではないか。
 日本人の他人を思いやるあたたかい心、本当に素晴らしいが、行き過ぎてはなんにもならない。
 もうそろそろ自粛自粛の暮らしから、抜け出さなければならないのではないか。
 これから選挙を迎える後輩にも、「なんでも自粛、遠慮では選挙にならないよ」と忠告している。人を集ることが大変なら、足を使って廻り、大いに語ればいい。出来れば少人数でも集ってもらって、特に防災について自分の主張を訴えよとも教えている。有権者は、必ず耳を傾けてくれるはずだ。
 逆に、今が安心安全を中心に、身近な地方政治を語る最大のチャンスではないだろうか。
 逆境は発展のチャンスという。一人一人の国民がそう思いで行動すれば、日本復興の兆しは、案外早く来るのではないか、と思っている。