東日本大震災での死者、行方不明者の数は益々増え続け、いまや三万人を超えるのではないかと言われている。阪神淡路大震災の比ではない。この大惨禍に言葉もない。
 ひたすら御冥福を祈るとともに、一日も早い復興を期待している。
 その上、福島第一原子力発電所の危険は一向に除去されていない。それどころか放射性物質の拡散が続き、風評被害も含めて一層深刻なものとなっている。
 今や、東京電力に対して責任を問う声がごうごうと起こっている。当然のことではある。しかし、批判するだけでは事態が解決する筈もない。
 落ち着いてから起こる損害賠償問題などを考えると、到底、一私企業である東京電力に支払い能力があるわけもなく、最後は国が相当な負担を強いられることになる。
 週刊ポストの取材で、「これからの電力を考えた場合、一民間会社に任していいのでしょうか」という質問があった。
 私は、色々な例を挙げて、「やっぱり無理でしょう」と答えた。
 そもそも、エネルギー問題は国家の存立に関わる問題だ。特に資源の無い日本の将来を考えると、重要な国策としてかなりの部分を国が直接仕切っていかなければならないと思う。
 かって私が通産大臣であった頃、関西電力のMOX燃料について不都合が生じて、大問題になったことがあった。
 使用済み燃料を再処理して核燃料として使うものがMOX燃料だ。(このようにして継続して使うことをプルサーマル計画という)
 日本では本格的な再処理工場が未完成なので、フランスとイギリスにこれを委託している。
 関西電力にMOX燃料を送っていたイギリス核燃料会社が、検査データ―を偽造していたことが発覚したのだ。
 私は激怒して、全てのMOX燃料をイギリスに送り返すことを決断した。
 ところが考えてもいなかった障害が立ち塞がったのだ。MOX燃料をイギリスから日本へ輸送することについては、通過する国々は許可していたのだが、逆に日本からイギリスに戻すについては許可していなかったのだ。
 各国の了解を取り付ける仕事は、本当に大変だった。あらゆるルートを通じて働きかけて、ようやく事なきを得たが、つくづく思ったことは、エネルギー問題は、やっぱり国が直接動かなければ駄目だということであった。

 今、日本は原子力発電に代わる新エネルギーを開発する為に必死に取り組んでいる。しかし、現状はコストが依然として高く、活用出来るエネルギーは数パーセントにすぎない。
 石炭を使う火力発電が再認識されつつあるが、いずれにしても、国が真剣に取り組んでいかなければ、我が国のエネルギー問題は解決しない。

 現在、原子力発電は日本の電力量の3割(実際は23%程度)を賄っているが、これを選択したのは、まぎれもなく国民である。
 今の時代、世の中は何でもかんでも電力さまさまで、ある意味贅沢三昧の暮らしを続けている。
 もし、原子力発電を抑える、あるいは止めるというなら、まずこうした暮らしを変えなければならない。

 今度の大災害に当たって、計画停電を行ったが、これは極めて評判が悪く批判続出であった。
 しかし、私は意外にも大きな効果を上げていると思っているのだ。
 例えば、3月23日の計画停電下、最大電力需要は約3300万キロワットだったが、これは昨年同時期の約4700万キロワットと比べて、実に約30%もの節電になっているのだ。
 夏場のピーク時が大変と、今から大騒ぎになっているが、これだって数字からみておかしな話ではないか。確かに東京電力の最大供給電力は、火力発電再稼働や他の電力会社からの支援があっても、5000万キロワットといわれている。
 しかし、今回と同じように計画停電を行って、30%の節電が出来れば、何の問題もなく夏場でも電力は十分に足りるではないか。

 計画停電は、特に産業界からの不満が大きかった。更に病院など人の命を預かるところでは、極めて深刻な、切実な事態を招いた。それは、計画停電とは名ばかりで、逆に全くと言ってよいほど計画性がなかったからに他ならないのだ。
 はっきり言えば、東京電力という一私企業に任せたから駄目だったのだ。
もっと広い視野に立って、高度な判断で計画を立て、正しい指導の下でこれを行えば何の問題も起こらなかったのだ。つまり、これこそ、本来、政治主導で行うべき事柄だったのである。

オイルショック後の1974年、政令によって電力使用制限を行ったことがある。産業界も様々な工夫と努力を惜しまなかった。まさに政治主導の成果であった。
 やろうと思えば色々なことが出来るのだ。
 電力はダムのように貯めておくことが出来ない。だったら、ピーク時を避ければいいのである。
 工場の夜間や休日操業、勤務体系を代えることや、サマータイム制導入も検討すればよい。
 そして、実は国民全体の節電こそ、特に大事だといわなければならない。何しろ、電力使用の実に4割を一般家庭が占めているのだから。早い話、われわれの暮らしを、少し昔に戻せばいいのだ。
 
 重ねて言うが、エネルギー問題は一私企業で解決できるもでは決してない。
あらゆる面での国家主導、政治指導が必要なのだ。