言いたい放題 第145号 「大災害時に見る政治家の質」

 ようやくNHK、民放で一部、普段の番組が始まっているが、相変わらず現地の様子を克明に伝えている。
 原子力発電所での必死の放水も、大丈夫なのかと万が一を考えて不安は尽きないし、何よりも日ごとに増えた死者、行方不明者の膨大な数字には心を痛める。
 今朝もそうだが、相変わらず余震が何度もある。そんな中で普通に戻った放送を見ると、なんと暢気なことをやっているのかと、放送再開は無理もないと思いつつも、やり切れない思いになる。

 統一地方選挙はいよいよ3月24日からの知事選挙を皮切りに始まる。区議会議員選挙は4月17日からだが、知事選挙中は他の選挙活動が出来なくなるから、候補者にとって、今が決起集会など会合がピークの時だ。
 しかし、一つ間違えれば「こんな時に」と批判を浴びる恐れもある。やむなく中止にした人もいる。
 私は服部台東支部長と連携をとって、全区議会議員と新人達を動員して、雷門で募金活動を行わせた。選挙運動よりも誠意を示すことが大切だと思ったからである。
 自民党ののぼりを立てての行動だったが、予想以上に好評で「頑張って下さい」と声もかかり、実際沢山の募金が集り赤十字社を通じて、現地に送ることが出来た。当分、早朝駅頭に立って募金活動をするよう指示している。
 中止せずに会合を開いた人も居たが、彼らには、まず震災でなくなった方達のご冥福を祈る黙祷から始めるように命じた。
 寺井台東区議の場合、私の髏ツ会のメンバーで遠藤氏という知恵者が居て、まず「地震の実際と今後」というテーマで私に基調講演をさせた。その後、服部氏に東京都の対応を語らせ、最後に本人からこれからの地元対策を述べさせるといった中味のある会合で終始した。
 参加者はこの不安な時期だけに有意義な会だったと語って、好評だった。
 いずれにしても、かつてないほどの日本の危機的時代、候補者はただ「出たい、当選したい」では駄目だ。自分はこの地域のために何をしようとしているのか、しっかりとした政策内容と覚悟をもつことを私は繰り返し彼らに伝えている。彼らも真摯に努力していて頼もしい。

 今の私は無冠の立場だから、直接地震対策の行動が出来なくてなんとも口惜しいのだが、自民党本部や都連の会合等を中心に、様々な提言を続けている。
 12日は、石原慎太郎知事の再出馬を受けての都連の会合があったが、私はその場でも「東京都が大規模な被災者救済にあたるべき」と論じた。
 福島原子力発電所は、本来東北電力のエリアだが、東京電力がこれを持ち、東京に配電を続けて来た。
 半径30キロにまで拡大され、何度もやむなく移動した避難者は、先々、戻ることも叶わず絶望の淵にある。
 こんな時こそ、都が大幅にこれらの人々を引き受けるべきなのである。今までに、すでに種々対応しているが、小出しにしては駄目だ。何万人を引き受けると具体的数字を挙げて、知事自ら発表すればインパクトは強い。私の主張に賛成する人も多かった。
 石原知事の子息、伸晃会長も在席していたから、きっとこの声は都に届くものと期待している。

 長年の政治生活だから、私の友人や後輩に国会議員や役人も多い。
 ここに直接連絡して、私の様々な提言を繰り返し伝え、これを政治に反映するよう依頼している。
 こういう時、どのような反応を示してくれるか、その人の性格や資質が実に正確に分かる。

 今から88年も前の関東大震災の時、山本権兵衛総理は早々と経済復興策を打ち出した。
 その中に、手形支払いを猶予させる緊急勅令「モラトリアム」を施行している。支払期限を先延ばしさせ、その上、手形の再割引に応じる日本銀行の損失を政府が補償する等、適切な法案を次々と公布した。
 今度の大震災で想像を超える数の企業が崩壊したが、これらの企業はかなりの支払手形を振り出しているはずだ。
 当然決済出来ずに焦げ付くことは必定で、そうなると次々と連鎖倒産が全国的に起こる。これからの経済不安を払拭させるためにも、今から対策を打ち出して、連鎖倒産を少しでも食い止めなければならない。
 そう思って、私の少なくとも今まで信頼していた若手新人議員に連絡してみた。ところが彼曰く「今は人命救助第一でそれどころではありません。金融機関は当然何らかの対応をしているはず、私も忙しくて・・・」と、なんとも投げやりな様子、思わず「ならいいよ」と私は憮然として電話を切った。
 比例でやっと当選した一年生議員、それも今は野党の立場、そんなに忙しいわけもないことは承知の上だ。要は事の重要性の判断ができない上に、不誠実で、国を憂うる心がないということなのだ。
 同じ内容のことを他の何人かに連絡したが、年配のベテラン議員ほど反応がしっかりしていて、嬉しかった。国会議員は若ければいいというものではないなと思った。
 参議院の中川雅治議員は、「今どうなっているか調べてご報告します。」と真剣に答え、早速2時間後に、「地震発生後、担当大臣と日銀総裁の名をもって、支払い猶予など適切に配慮するよう各金融機関に通達を出し、目下、順調に進んでいます。」と報告があった。
 今は多くの企業は瓦礫の下、会社どころか生命の危険にさらされている。しかし、少し落ち着くと直ちに起きるのがこうした問題で、支払い猶予どころか、不渡り総額がうなぎ上りの額になるのではないか。
 決算間際の企業にとっては死活問題だが、それは日本経済そのものに大打撃を与える。「是非、これからの動きを注視して、誤りなき政策を進めて欲しい」と要望した。

 それにしても、日本の為政者としてふさわしくないと強く思えるのは、やっぱり菅首相だ。常にパフォーマンスを繰り返し、この国難を自らの政権の延命策にしようとしているように思える。
 一番悪いのは、何かあると他に責任を押しつけようとする姑息な言動である。
 福島原発事故についても、自分の判断の誤りや不見識から、国民に甚大な迷惑をかけていながら、それがあたかも全て東京電力の失態で、許せないとばかりに怒ってみせる。
 圧力抑制室の事故が起きた15日早朝、菅首相は東電本社に乗り込み、幹部の前で「テレビで放映されているのに官邸に連絡がなかった」とまくしたて、ついに絶対に言ってはならないことを口走った。
 「撤退などあり得ない。覚悟を決めて下さい。撤退した時は東電が100%潰れます」。今、まさに生命がけで東電の社員は高い放射能の中、必死に頑張っている。「よく逃げ出さないものだ」と、私はその責任感の強さに目頭を何度も熱くしたものだ。
 「覚悟を決めて下さい」とは、彼らに死んでもいいから、逃げ出すな、なんとかしろと言わんばかりの言葉ではないか。「それをやらなければお前の会社を潰すぞ」とまでの恫喝で、どう考えても首相の言葉とは信じられない。
 更に、細川厚労大臣に命じて、労働安全衛生法を改正させ、作業員の被曝線量の上限を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトと、実に2.5倍も引き上げさせてしまった。人の生命をなんと心得ているのか、もはや常識では考えられないことで、首相として不適任というより異常としか言いようがない。
 蓮舫大臣が、突然、スーパーマーケットを視察して、品薄になった状態に額にしわを寄せ、最もらしく驚いてみせた。国民に買い占めへの自重を促したつもりなのだ。
 大臣といっても子を持つ女房だ。当然毎日スーパーに寄って買い物をしているはずではないか。なんで大勢の報道人や警備の人々を引き連れて視察するのか、まさにパフォーマンスそのもので、いいかげんにしてくれてと憤りを感じたものだ。

 空前の大惨事の前に、多くの人々ははからずもその本性を垣間見せる。まさに人間模様を日々見ている思いだ。
 政治家の場合、双肩に日本の運命を荷負っているだけに、その場面場面に見せる姿を、私達は看過することは出来ない。
 日本にとって、最大に不幸なこの時代、誰が政治家にふさわしいのか、誰が真のリーダー足り得るのか、私達はしっかり見つめていかなければならないと強く思っている。