言いたい放題 第142号 「無理な願いか」

 東日本大震災は、時間が経つほどに益々深刻になり、死者の数も何万という、とんでもない数になりそうな気配である。
 その上、原子力発電所は次々と水素爆発を起こし、ついに本体の破壊という最悪の事態になってしまった。
もし、この状態が広がればあの旧ソビエト連邦のチェリノブイリの二の舞になり、まさに日本の存亡の危機をまねくことになる。
みんなそれぞれの分野で必死に努力しているのだから、国会も与野党協力して、いわば救国体制で臨もうとしている。
 私自身も、正直に言えば数々の不満や、言いたいこともあったのだが、ここは自制して静かに見守ろうと思っていた。
 しかし、政府側の発言や行動を見ると、肝心の部分で二転三転して、あまりにも無責任、これでは国民はどうしていいか迷うばかり、もはや看過出来ないと思えてならなくなった。

 特に原子力発電所に関わる動きは重大な問題を抱えているだけに、曖昧な言い方で済ますわけにはいかない。
 福島原発ではついに爆発を起こしているのに、度々の報告はあるもののなにか隠しているようで信用できない。
 枝野官房長官は勿論、経済産業省原子力安全・保安院の説明も要領を得ないし、電力会社の発言などは聞くに堪えないお粗末さなのだ。

どうしても、これだけは言わなければならないという点だけでも、率直に書こうと思う。

 まず、はっきり言いたいことは、このような危機存亡の時、人気取りのパフォーマンスは一切止めようということである。

 地震が発生した翌日、十二日朝だが、菅首相はヘリコプターに乗り込んで福島原子力発電所を訪れた。如何にも現場に飛んで首相自ら指揮を執るといった図だが、一体何か具体的成果があったというのか。
 なんにも知らない素人が急に行っても役に立つはずもない。
 首相たるもの、まずは官邸にどっしりと腰を据え、担当者から詳細報告を受けて、大所高所から正しい判断を下すべきなのだ。全容を把握し、適切な決断をするのが大将の本来の役目なのだ。現場に飛んで調査をしたいのなら、それは普段済ませておくべき事柄なのだ。
現場で一時間視察していたというが、丁度その時期が、すでに放射性物質の一部を放出しなければならない緊急事態に陥っていた時であった。首相がヘリコプターから降り立った為、現場担当者も首相対応に追われてしまった。こうした遅れが後の爆発の引き金になったと本気で怒っている関係者もいるという。
十四日の枝野官房長官の記者会見で「菅首相は更に被災地に行きたいと考えていたが、現地と調整した結果、無理であった」と正直に話していた。何のことはない、迷惑ですと断られたのだ。
 みっともない話ではないか。

 東京電力は、電力の供給力が大幅に落ち込んだため、十四日から計画停電(輪番停電)を始めると発表した。
 ところが、このことについて、なんと首相自ら記者会見を行って熱弁をふるったのである。そんなことは本来、経済産業大臣にやらせればいいことだ。
 「国民に大変な不便をおかけする苦渋の選択だが、かつてない国家に危機、みんなで力をあわせてこの難局をのりきろう」、なんとも時代がかった話しぶりで、どうだこの名調子はと自分で酔っているといった風情であった。
 しかも、電力需給緊急対策本部なるものを設置し、蓮舫行政刷新相を担当大臣に任命し、菅首相の後にご丁寧にもわざわざ演説をさせるではないか。しかもこれが首相の輪をかけたお涙ちょうだいの、見ていて恥ずかしくなるくらいのものだった。
 「どうかどうかご協力下さい。これは私からのお願いです」・・・。
 私から、ではなく菅政権からの、でしょうが。
 この人らしい相変わらずの勘違いぶりであった。
もともと、担当大臣は経済産業大臣でなければおかしいことなのに・・・。
ところで結果はどうだったのかというと、これが大変な混乱をよんでしまったのである。
 実施か否か、二転三転する東電の発表に鉄道のダイヤは乱れ、首都圏のターミナルは人であふれた。
 臨時休校は一都八県で千件を超えた。通学の足のほか、電力に関係するトイレの水洗や給食の設備等に支障をきたすからである。
 病院関係は更に深刻である。人工呼吸器や人工透析の患者は命に係わるから本当に困惑していた。
 一口に計画停電と言っても、ことほど左様に難しいものなのだ。政府としてきちんと調査精査し、しっかりした青写真を作っているのだろうか。
 そのために司令塔として蓮舫大臣を決めた筈なのだ。しかし、どうもあれから一向に姿を現わさない。
 やっぱりパフォーマンスだけの茶番に過ぎなかったのか。
 本当にいま日本は大変な、厳しい時代に直面している。だから、国会は勿論、あらゆる分野で対立や対決といった争いがあってはならない。
 しかし、それは菅政権に対して免罪符を与えたということでは断じてない。
そこのところをしっかりわきまえて、菅首相には謙虚に真剣に政治の舵取りをして欲しいのだ。

色々な経緯はあったとはいえ、菅氏は仮にも天下を握ったのだ。自分の人生をかけてこの日本の国のために働いてくれないものか。
 歴史的に見ても、いま日本は最悪の状況下にある。だからこそやり甲斐のある時代ともいえるのではないか。乾坤一擲の大勝負、菅さん、やれるか!
 やっぱり無理な願いかな・・・・。