11日に突然起こった東日本大震災の悲惨な状況が、新聞は勿論だが、特にテレビが24時間報道し続けている。
 あらゆる放送が「地震関係だけ」というのは前例のないことだ。民放でコマーシャルが自粛され全てなくなったというのは、私の知る限り、昭和天皇の崩御の時だけだ。
 それだけ、今回の地震が如何に大惨事であるかを物語っている。
 刻々と映る各地の悲劇的な出来事に、私は何度も泣かされた。津波の恐ろしさは、まさに映画でも見たことのない衝撃的なものだった。
 宮城県知事は万人単位の死者が出るのではないだろうかと語った。私も阪神・淡路大震災と比べて、あまりにも規模が違い、現在の行方不明者から見ても、数万人になるのではないかと深刻に考えている。

 あの地震発生の時、私は運良く自宅にいた。家具が音を立てて倒れ、グラスが次々と割れてガラスが散ると、孫が必死で私にかじりついてきた。
 こんな大きな地震を実体験したことは無い。本当にビックリしたが、一息ついて、もう大丈夫と思い、私は早速仕事に出掛けることにした。
 実はその1時間後、BS11で、西川のりお氏と1時間の対談番組の録画撮りが予定されていたからだ。
 日頃、なかなか気丈な嫁がベソをかいて、「行かないで下さい」と言ったが、何を言っているのかと笑って車に乗った。
 途中、歩道に大勢の人々が出ている。中にはヘルメット姿もあって、秘書に「随分用意のいい人もいるものだ」と笑って携帯電話でその光景を撮ったりした。
 ところが、北の丸の会場の建物前につくと、ビル内の人々が全て外に出てあふれている。
 全員退去命令が出てビル内には入れませんと言われて、関係者に電話するが、一向にかからない。
 念のために自宅にもかけてみると、なんとこれも全て不通になっている。そこで初めて、東京でもあの後、再び大きな地震があって、現地では更に大変な事態になっていると知ったのであった。
 普段、電話は必ず掛かるものと思って暮らしていただけに、全く通じないとなると、一気に不安がつのる。
 早く自宅へ戻ろうとするのだが、渋滞で立ち往生だった。日々の生活は安全で、いつも守られているというのは錯覚にすぎないと改めて思ったものだ。

 想像も出来ない大津波が去った跡には、家々の痕跡も残っていない。
 静かでおだやかだった街は瞬時にして消えて、瓦礫一色の茫々とした荒野になっていた。
 親や子や身内の人と生き別れになって、泣き崩れる人、変わり果てた街の姿を見つめて空しく立続ける人の姿に、私は何度も泣かされた。
 かつて、小松左京原作の映画に「日本沈没」というのがあったが、同じ光景を見せつけられて、まさに日本の国が崩壊するのかと涙を抑えることが出来なかった。

 特に最も大きな心配は、原子力発電所だ。かつて通産大臣として、あの福島原子力発電所を何度も訪れている。エネルギー資源のない日本にとって必要とはいえ、なによりも安全確保が大前提だ。安全確保の為にあらゆる対応をして、万全の体制をとるようにと指導してきたつもりであった。
 日本は地震国だけに原発の危機管理は相当研究され整備されているはずだった。しかし、どうも今回の経緯を見ると必ずしもそれが充分だとは言えない不安が残る。
 12日、福島第一原発で爆発音を伴う水素爆発が起きた。原発の建屋内で水素が爆発し建屋は壊れたが、原子炉の安全性を伴う格納容器は損傷していない。だから、今、直接的な危機状況ではないが、今後の損傷を考えると心配だ。
 1986年に旧ソ連のチェルノブイリ原発で起きた事故は、原子炉そのものが爆発して核燃料が直接大気に露出し、長期的に放射性物質が大気中に吹き出し大事故になった。幸い目下は、そのような状況ではない。
 政府は念の為に、半径20kmの避難指示を出した。これによってかえって不安が広がるという人もいるが、私は人の生命に関わることだから、念には念を入れるべきで、当然の指示と思っている。
 東京電力の発表によると1号機に続き3号機も水素爆発を起こし、また2号機も冷却不全となったと発表した。海水まで入れて格納容器内に満たし、原子炉内の冷却に全力を挙げる一方、格納容器内の圧力の上昇を防ぐ為、微量の放射性物質を含む蒸気を大気中に放出する弁を開ける等、必死に対応している。
 海水を入れるということは、今後使用不可能、廃炉となる可能性が高い、そのことを決意したからだと思われる。
 格納容器が破壊すると放射性物質が大量放出して、未曾有の大惨事になる。この際、最悪の事態を防ぐために、考えられる全ての手段を採用するしかない。ギリギリの攻防が続いているのだ。
 世界が注目している。なんとかこの危機を乗り越えて、むしろ原子力発電の世界的大きな教訓になるようにしたいものである。

 この災害の中で、唯一救われることがあった。それは、各国の日本に対する見方だ。いずれの国の報道も、この災害を通じて日本人を高く評価しているということなのだ。
 アメリカの各新聞は、今回のニュースを1面トップで大きく扱っている。「日本人は、あの大戦後、たくましく復興した。精神的に強いから、必ず立ち直る」、「あれだけの災害なのに節度を失っていない。アメリカやインドなら、もっと混乱しているだろう」、「日本の厳しい耐震構造基準が多くの日本人を救った。真面目に取り組む日本人の暮らしが、多くの生命を救った」、「日本人は何事にも真面目に真摯に取り組む姿勢があるから、決して倒れない」・・・。これらは、13日夜のフジテレビの番組で紹介されたものだ。
 ニューヨークでインタビューを受けた老人は、「何か日本の為に、私に出来ることはないか」と語り、現実に、ある日系人達が街頭で募金箱をもって街に立っているという。
 土曜日には決して更新しないのに、オバマ大統領は、「日本の声を真剣に聞く、全面的支援を約束する」とわざわざホームページで語っている。
 私は、日本はてっきりアメリカ及びアメリカ人に嫌われていると思っていたが、全く異なる反応に思わず涙が出た。しかも、こうした報道は各国とも同じで、ニュージーランドは「今こそ日本へ恩返しをしなければ」と書き、あの中国の新聞さえ、「日本人は、あれほどの場面でも秩序を守っている。感銘を受けた」と書いている。
 英の新聞インディペンデント・オン・サンデーは、1面全体に日の丸をあしらい、日本語で「がんばれ日本。がんばれ東北」とメッセージを掲載した。ロンドン市民は「私達の思いを代弁している」と語っているという。
 私はまた涙した。

 各国の救援の為の動きも活発だ。
 米海軍太平洋艦隊の原子力空母ロナルド・レーガンは、本州沖に到着した。自衛隊のヘリコプターと共に、非常用缶詰など3万食を気仙沼の運動場に輸送するなど、すでに活躍を始めている。
 第7艦隊のブルーリッジも救援物資や水を積んで日本に向かっている。救援活動にあたる米艦隊は、計9隻に及ぶという。この他にも150人もの救援隊が送られる。やっぱり同盟国はアメリカだとつくづく思った。
 救援を申し出ている国は物資まで含めれば94の国と地域と国際機関で、すでに13日には韓国はじめ中国、英、仏など、多くの国の救援隊が続々と到着している。

 近年、世界の日本に対する風当たりは一層強くなったと思っていたのだが、これも逆で、世界から続々とあたたかい手が差し伸べられている。なんと嬉しく、ありがたいことだろうか。
 知らないのは日本人自身だけで、間違いなく日本は世界から信頼され、尊敬されているのだ。
 最悪の状況の中で、改めて世界の人々が、日本に対してどんな見方をしているのか、はからずも垣間見ることが出来た。
 逆に言えば、その世界の人々の思いに応える為に、日本及び日本人は、もっともっと自覚し、よほどの努力をしなければならないと思った。
 ともかく、まずこの大災害を乗り越えて、一から再出発しなければならない。日本人の真の力がこれから試されるのだ。
 民主党政権では、なんとも心許ない、と思いつつ、この際、野党も長い経験を生かし、あらゆる知恵をしぼり、協力していかなければならないと強く思うのであった。