2010年1月(30日)、中国は昨年の名目国内総生産(GDP)で日本を抜き、世界第2位になることが分かった。(中国GDPは約5兆8800億ドル、日本は約5兆4000億ドル)
 日本が西独を抜いて2位となったのは1968年だ。実に40年以上守った地位を、中国に明け渡したのだから、多くの日本人はすっかり失望した。マスコミの一部は、何故か大喜びで大々的に報道を繰り返した。
 おそらく、あと10年もすれば米国を抜くと予想するエコノミストもいる。私はそんなことはないと思っているが・・・。
 本当に中国は経済大国としてそんなに名実共に発展したのだろうか。国民も幸せに喜んでいるのだろうか。

 私から言わせれば、13億人もいる中国なら、計算上総生産が大きくなるのはまず当たり前のことだと思っている。
 事実、一人あたりのGDPでみれば、全く貧しくて、日本の10分の1に過ぎないのだ。
 なによりも中国にナショナルブランドというものが1つでもあるのか、せいぜい私が知っているもので自動車の紅旗ぐらいだが、これだって別に世界で売れているというわけでもない。
 この頃は、ラオックスやレナウンなど日本の企業が中国企業に買収されているが、これらをナショナルブランドにしようとでも思っているのだろうか。
 かつて、日本の高度成長期、トヨタ、ニッサン、ソニー、パナソニックなど、日本のナショナルブランドが世界に名を馳せ、それが今も続いている。
 世界の工場と言われてきたドイツを抜いて、世界一の輸出大国にもなったが、ほとんどが日本をはじめ、他国からの参入企業が中心で、中国はいわば外資メーカーの下請け大国なのである。
 当然、他国の企業が中国工場で生産したものは、中国のGDPにカウントされる。してみると、さしずめ日本は中国経済を世界2位に押し上げた最大の功労者というべきではないか。
 少なくとも、日本の力に負うところが大きかったといって過言ではない。
 逆にいえば、外資メーカーが中国以外の国に工場を移転したら、おしまいなのである。

 率直にいって一般の中国人にとって、中国は素晴らしい国とは決して言えないというのが現状なのだ。
 水道をひねれば清潔で美味な水が出る日本とは大違いで、黒液が出るのは珍しいことではない。工場用水にすら使えない場合もあるという。
 大気汚染は激しく、これが日本にまで影響を与えていることは周知の事実だ。
 成長率10%というのに、失業者は多く、学生の場合でいえばわずか50%、つまり半数の学生しか就職出来ない。
 富裕層と貧困層の二極化が益々進み、今や極端な格差社会となっている。当然、社会不安は恒常化していて、大きな暴動は当局発表でも9万件というのだから、実際はもっと頻繁に起こっているのだ。
 何故、このような状況になったのかといえば、共産党独裁支配が続いているからだ。
 急成長を続ける中、今や、中央や地方の共産党幹部一族がその利権を一手に握っている。一説では、電力、石油、銀行などの基幹産業まで党幹部が支配しているといわれている。
 共産党支配のまま市場化したから、例えば許認可で一族の企業が潤うなど甘い汁を吸い続けているのだ。
 財テクはいよいよ盛んで、最近では国有企業まで不動産投機に手を出して、バブル状態を作り出している。
 当然、不動産は急激に値上がり(土地は国が所有、70年の保有権だが)、食糧品も値上がりが続き、これでは一般庶民はたまらない。
 医療や年金も未整備のままで無いに等しい(加入率はわずか30%未満)。
 あと30年もすれば4億人の高齢者のうち3億人は年金もなく、飢えに苦しむという予測すらある。
 これは、かつての一人っ子政策が失敗した結果でもある。
 よく見ると中国は水資源は欠乏しているし、国内エネルギー不安は加速、食料品も限界、そこへ高齢化と全く良いところ無しの状態なのだ。
 これでは、世界第2位の経済大国になったといっても形だけで、まさに張り子の虎といった方が正しい。

 私が一番心配なのは、このまま一党独裁が続き、経済成長一辺倒の路線で進み、国民への富の「分配」を疎かにすれば、いつ国民の不満が爆発するかわからないという点である。
 いずれ述べる予定だが、もし中国で、かのエジプト危機と同じような状況が生まれたら、アジア全体に大きな悪影響を及ぼし、特に隣国日本にははかり知れない打撃を与えること必定なのだ。

 独裁と失業、食糧高など、エジプト大騒乱の背景は中国とあまりにも似ている。現に中国当局は、エジプトでの反政権デモの動きに対して、異常に神経を尖らせ、あわただしい対応を見せている。
 インターネット上の一部で関連情報が制限され、「エジプト」、「ムバラク」など中国語で検索すると、関連法規により表示出来ないとの文字が出る。
 そんな姑息な手段で事は済むはずもないと思うが、なによりも中国自身の本質的な大改革が今、求められていることは間違いない。
 中国に経済大国2位の座を奪われたということよりも、われわれは、中国の現状とこれからの動きを、注目していかなければならない。
 民主党政権になって国内混乱の時代だが、世界の動きもいよいよ激しくゆれている。
 大変な時代だと思うが、これが現実なのだから仕方ない。
 冷静に、かつ研ぎ澄まされた感覚で、しっかりあらゆる動きを見極めていくことが、必要だと思っている。