1月24日、菅総理の施政方針演説を聞いた。
 首相はひたすら野党に秋波を送り、自公を名指しして、「問題意識を論点はすでに共有している」と歩み寄りを呼びかけている。
 一方、野党側は、「勝手なバラまき公約を振りまわし、社会保障制度や税をめぐる一番難しい問題は一緒にやろうという抱きつき戦術などに乗れるか」と、一層反発を強めている。
 しかも、菅首相は協議を呼びかけながら、一方でこれとは全く反対の批判を野党に向けてくりかえしている。例えば民主党の両院議員総会で、「税や社会保障の議論から逃げようとしている」と発言したり、党大会では、なんと野党の行動を「歴史に対する反逆行為だ」とまで罵っている。
 これでは歩み寄る余地など最初から無いにひとしい。民主党政府が国家国民の為に共にやろうと呼びかけているのに、野党は批判ばかりで国民を無視している。そんなイメージを世間向けにつくり出そうとしているのだろうか。
だとしたらお粗末な子供だましだ。

 どちらにしても、この国会は相当にハードルが高く、果たして成果が得られるのか、先行きは全く不透明というのが実際だ。
 予算は自然成立するからいいのだが、これに関わる法案を可決しなければ
実際に執行することは出来ない。
 予算関連法案は26本提出されているが、大体日切れ法案といって、年度の終了と共に失効あるいは廃止となるものが多い。特定の期日までに成立しないと国民生活に大きな影響を与えるものばかりなのである。
 かつて自民党政権時代も、参議院で野党が多数を占めるねじれ国会で苦労したが、幸い、衆議院では3分の2を超える勢力を有していたので、ギリギリのところで成立させることが出来た。今の政権は、その数を持っていない。
 予算関連法案の中で、特に重要なものをあげれば、なんといっても特例公債法案だ。これは赤字国債38.2兆円と特別会計剰余金2.5兆円(いわゆる埋蔵金といわれるもの)を計上しているものだが、万が一通らなければ、92.4兆円の歳入のうち、実に4割が不足となる。
 基礎年金の2分の1を国庫負担でまかなうことになっているが、鉄道建設、運輸施設整備支援機構の1.2兆円をあてにしているのだから、これも駄目となれば政策の基本が崩れる。

 今回、米の格付け会社が、日本の国債格付けを引き下げた。
 このことについて、なんと首相は、「そういうことには疎いので・・」と述べ、野党から一斉に批判をあびている。
 私が最も心配しているのは、世界から日本の信用が失墜することだ。すでにその波が起こり始めたというのに、その重大性に気付かない首相、為政者としての資質が問われるのは当然だと思う。
 前述の特例公債法案が通らなければ、日本政府は歳出をまかなうことが出来ないから、資金繰り破綻を起こすと世界から受けとめられる。
 日本の信用は当然低下する。そうなると国債が売られ、長期金利が急上昇する。米の格付け会社の今回の発表は、その動きに拍車をかけることになり、
これは看過出来ない大問題なのだが、菅首相は「そのことに疎い」といって平然としているのだ。

 子ども手当法案も重大な影響を与える関連法案だ。
 この法律案は2010年度限りの時限措置だから、これが通らないと、恒久法である前の児童手当の復活となってしまう。そうなれば3才以下への7,000円追加支給は消えるし、中学生分の支給はストップとなる。
 それどころか、児童手当法は所得制限(これが正しいが)をつけているから、地方自治体は、前年の9、10月の対象者の所得を把握しなければならないことになる。
 そんなことは事実上不可能なことだから、大混乱となること必至だ。
 税制関連法案、成年扶養控除の縮小や廃止をすることで、子ども手当の財源にしようとしている。成長戦略の目玉ともいうべき法人実効税率5%引き
下げもこれが通らなければ全て見送りとなってしまう。

 野田財務大臣は、政府が出した予算案はベストのものだと主張している。
しかし、藤井裕久官房副長官や安住淳国対委員長などはNHK番組などで早くも修正もあり得るとの発言をしている。
 肝心の菅首相自身も修正含みで、建設的議論をしようと呼びかけているのだ。
 提出してまだ何も議論しない内から修正を言うなど、全く異例なことで、自信の無さや戦略の無さが露呈されている。
 そもそも予算案の修正など簡単に出来るものではない。
 子ども手当は、歴史上画期的な政策だとうそぶく菅首相である。仮に手当の額や支給対象の変更となれば、予算案も、関連する子ども手当法案も変えなければならない。それは明らかな制度統計のやり直しだし、政策の大変更となる。
 看板政策の撤回は当然、首相の辞任に値する。やれる筈が無いではないか。

 しかも、与野党協議の呼びかけはしているものの、その為の具体的な中味や方針が示されていない。
 今までの民主党の両院議員総会や党大会で明らかなように、なによりも党内の合意も出来ていないし、議論すらしていない。
 その上、社会保障政策は4月に方向性を出すといい、税を含む政策案は6月にまとめるという。TPPも6月をメドに結論を出すというのだから、それなら野党との協議はその後ということになるのか。
 国会の会期は150日間、その頃はもう終っている筈ではないか。ウソと矛盾だらけの呼びかけなど、本気とは全く思えないのだ。
 結局、はっきりいえることは、民主党政権はすでに破綻しているということなのだ。
 菅首相は国のトップに立つ人として、その資質は無いと断言してもいい。
 このまま続けられたら、日本の不幸といわざるを得ない。
 一日も早く倒閣しなければならないのだ。しかし、今の自民党にその力があるのか、そこも問題なのだが・・・・・。