この頃の私は、執筆と講演で忙しい。
 私のホームページ「深谷隆司の言いたい放題」が好評で、だからつい張り切って、毎週20枚近くの原稿を書く。あっという間に300枚位になって、おかげで10冊目の本の出版の話もある。この他、「自由民主」の連載等、細々とした原稿依頼もある。
 日々移り変わる様々な事柄を書き残すということは、自分にとって生きた記録を残すことで、貴重なものである。
 その上、いつどんな講演を頼まれてもこれらの原稿を見れば、そのテーマや中味に事欠かない。いつも材料が揃っているのだ。
 今まで書き続け書き残したものは、自分でも驚くほど、あらゆるジャンルにわたっていて、その度にしっかり調べたものばかりだ。
 だから、次の依頼が来ても、これをお浚い(おさらい)し、更に改めて推敲(すいこう)加筆すれば済むのである。
 かつて東洋大学大学院等で教授として教えて来た経験があるが、全て今に役立っている。教えるということは自ら学ぶということだと改めて思う。
 あの頃、授業の前後に、随分予習や復習を重ねたものだ。なにしろ相手の人生がかかっている。
 如何に正しく教えるか、決して徒(あだ)や疎(おろそ)かに語ることは出来なかったのだ。
 最近、若い人に書くこと、語ることを盛んにすすめている。そして、その際大切なことは、予習と復習だと伝えているが、さて、実践してくれるかどうか、少し心許ない。

 10月19日大阪での講演を行った。東住吉優法会の依頼で、都ホテルであった。
 何度も書いたが、長年の知人松本隆三氏の紹介である。「経済と教育」という2つの異なるテーマを、わずか80分で駆け足で語ったのだが、さて、どこまで御理解いただけたか・・・。
 早速、松本さんからは、「素晴らしい内容で、皆感激していました」と連絡が入ったが、お世辞半分と謙虚に受け止めておこう。

 丁度、その頃(11月15日)内閣府は今期の7~9月期の国内総生産(GDP)の第1次速報値を発表したところだった。
 物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整済み)は、前期比0.9%増となり、年率換算すれば3.9%と極めて好調だ。
 しかし、よく見れば、これは猛暑のおかげで夏物衣料やエアコンの販売が好調だったことや、エコカー補助金終了や、たばこ増税を前にした駆け込み需要などが、全体を押し上げた結果である。これで経済は順調に回復などと喜んではいられない。次期のGDPはこの反動できっと悪くなる。
 勿論、このところ、数字の上では一応4四半期連続のプラス成長ではある。しかし、中国の利上げ議論や、経済の減速で、アジア向け輸出数量は減っているし、国内では物価が下がり続けるデフレ状態は変っていない。
 海外景気の下ブレ懸念や円高など、景気の下押しリスクが相変わらず存在する。
 丁度、低迷していた株価も日経平均株価で1万円台に回復した。これも景気回復の好材料と見える。
 しかし、円高に一服感が出たことと、何よりもアメリカが追加金融緩和政策を行ったことの効果だ。いわゆる投資マネーが、不安定な中国など新興国から、世界的に出遅れ感のある日本にシフトした結果なのである。
 だから、株価は1万円台になった割には市場に熱気が一向に上がらない。
 国際的に見ても、日本にとって不安な材料はまだまだ多い。
 だから、それでなくとも経済回復から遅れている、特に中小企業にとっては、余程油断なく見つめ、しっかり対応することが大切だと締めくくった。
 今回の講演では、そんな風に少し率直に経済現況を語ったのだが、あれから、わずか4日後、なんと北朝鮮が韓国延坪島に砲撃を行うという、とんでもない事態が起こった。
 たちまち株価は1万円を割った。偶然にも私の予感が当たったのだが、やっぱり、よほどの予習復習と、現状分析を行わなければ、他人様(ひとさま)にものは語れないと、つくづく思ったものだった。