言いたい放題 第109号 「法人税引き下げの裏に増税あり」

 政府は、多くの要望に応えて、ようやく重い腰をあげ、法人税を引き下げる方向を打ち出した。
 当然のことなのだが、油断出来ない。その財源を埋め合わせるためにどうやら、所得税や住民税の見直しと称して、実質的な増税を意図しているようなのだ。
 そもそも日本の法人税は、主要国の中でもかなり高い。
 中国などは実効税率で20%台になっているし、先進国で最高水準の独でも29.41%だ。
 日本の場合、国と地方を合わせた法人税実効税率は40.69%と高すぎる。今度政府がやろうとしているのは、実効税率ではなくて、国税の基本税率(30%)についてのみ5%引き下げるというものだが、ここには姑息なゴマカシがある。
 又、それと引き換えのように、他の税制を見直すとしている。
 彼らが考えている他の税制の見直し検討項目を具体的に挙げてみると、所得税、住民税でいえば、配偶者控除、給与所得控除、成年扶養控除、退職所得課税などの優遇措置の縮小がある。
 この他、資産家に有利だからという理由から、相続税の基礎控除の縮小も行うという。又、金融証券税制の優遇措置も廃止して、本則の20%にするとの考えも示している。
 株式市場の活性化を図るため、配当や売却益への所得税、住民税を今まで10%に抑えていた。それを本則の20%に戻そうというのだが、これでは、株式市場は一層低迷し、景気回復の足を引っ張ることになってしまう。
 ついこの間、政府は5兆円規模の経済対策を決めたばかりだ。しかし、こうした個人の実質増税を行えば、景気を支える個人消費が更にマイナスになり、経済対策は何にもならない。
 ムダの削減や効率化を一向に進めない中での増税を、簡単に容認することは出来ないのだ。

 そもそも今回の税制改正の出発点は法人税引き下げから始まっている。何故法人税引き下げが必要なのか、若干、その背景を書いてみたい。
 この1年半一般的に見て日本の景気は足踏み状態といった局面を挟みながらも、穏やかな景気回復基調にあった。日本の企業業績は思いのほか好調といってもいい。
 リーマンショックを経験した多くの企業は死にものぐるいで、コストダウン努力を推し進めてきた。たとえ売り上げが減っても利益は出るといった体質づくりに取り組んできて、ある程度成功している。
 しかし、こうした回復メリットを享受したのは圧倒的に大企業で、残念ながら中小企業は依然として苦しい状況から抜け切れてないのである。
 その上、円高が続き、大企業は海外にシフトしようとする傾向が一層強くなりつつある。それも、アジアシフトが一気に加速している。
 例えば日産自動車は、小型「マーチ」をタイで生産し、日本に逆輸入する時代になっているのだ。
 タイの人件費は日本の5分の1だし、法人税(30%)などを一定期間免除する優遇政策もある。
 タイ製マーチは、今やその部品まで現地生産調達するようになった。なんと部品の96%が日本製ではなくなってしまった。
 こうして、大手企業は、続々と国外に進出して有利になっているのだが、中小企業はなかなか追い付くことが出来ない。おいそれと一緒に海外へ行く訳には行かないのである。
 いわゆる日本の空洞化が進み、中小企業にとって深刻な問題になっている。
 法人税の引き下げは、企業の国際力をつける為にも重要だ。勿論、景気回復のエネルギーにもなり、何よりも空洞化にある程度の歯止めをかけ、中小企業を守る為にも必要なことなのである。

 政府税調の考えは、法人税の引き下げには応ずるが、その財源がない。だから、他の分野での増税をする必要があるということだ。これでは、国民にとって少しもありがたくない。何の意味もないことだ。

 では、本当に財源がないのか。
 昨年の衆議院選挙において、民主党は国民ウケの良い数々のバラマキ公約を掲げた。それも財政的裏付け無しにだ。
 だが政権政党となった今、民主党は国家国民のために真摯に対応する責任がある。出来ないこと、無理な公約は、思い切ってやめて、必要な分野に資金も投ずることが肝要なのだ。そうすれば、必要な財源は生み出せる。
 法人税を5%引き下げるために約1兆円が必要だ。
 一方、彼らが公約した子ども手当は、全額支給すれば約4兆6千億円にも及ぶ。今年は、半額だったが、次年度は全額支給かといわれている。
 しかし、半額支給のままにしておけば、これだけで2兆3千億円が浮く。なんと法人税は10%も引き下げられる計算なのである。
 子ども手当を増やすより、企業部内の税負担軽減を優先すべきだと私は思っている。

 これからの菅政権の税制調査会の動きを、厳しい目でしっかり見守る必要があると思っている。