言いたい放題 第107号 「国民の知る権利」

 尖閣諸島沖で起こった中国漁船衝突事件のビデオ映像が流出したと大騒ぎである。
 一体、誰が流出させたのか、もっぱら犯人捜しが注目されていたが、流出容疑の海上保安官が自ら名乗り出た。今後の捜査で、逮捕の方向という。
 事実解明は、ひとまず警視庁と東京地検に任せるとして、私はこのビデオをひた隠そうと必死であった民主党政権にこそ問題があると指摘したい。
 今回の事件を見ると、明らかに中国漁船が、なんと海上保安庁の巡視船に、自ら衝突している。
 この船長は、今や中国で勇敢な英雄扱いをされ、すっかりもてはやされている。
 一体、一漁船の船長にこんな無謀な衝突行為が出来るものなのだろうか。
 むしろ、中国側のスパイ、あるいはテロ行為者といったプロではないかという見方もあるが、私は限りなくそれに近いと思っている。
 せっかく、その不法な行為がしっかりビデオに映されているのだから、本来、一刻も早く公開すべきであった。
 国民の知る権利を守るという点からも、公開は当然だし、なによりも中国船が不当な行為を働いたという事実を明らかにする意味でも公開は必要なことであった。
 そうすれば、中国人船長を逮捕した正当な法的理由も充分に伝えられるし、何よりも中国の悪らつな行為を国際世論に訴えることも出来たのだ。
 確かに、セキュリティという観点から、内部情報がどのように流出したのか、これは問題とすべきテーマではある。
 しかし、我が国の法を犯し、逮捕された船長を、不当にも釈放し、これからも起訴しないという見通しの中で、一体世間が納得するだろうか。
 重ねていうが、守秘義務を云々いう前に、こうしたビデオは政府の責任において、本来、国民の前に直ちに公開すべきことであった。見方を変えれば、ビデオそのものが守秘の対象ですらなかったのではないか。

 かつて、沖縄返還の機密公電を暴露した西山太吉氏(元毎日新聞記者)らが国家公務員法違反で問われた裁判例がある。最高裁は、守秘義務の対象は形式的な守秘指定の有無で決まるのではなくて、実質的に秘密として「保護に値する」かどうかで決まるとの判断を下しているのだ(1976年)。
 今回の場合、当初から一部国会議員は見ているのだから、秘密性が高いとはいえない。
 今、対中国との外交は、極めて危険な状況にある。だから、政府は政治的配慮で、公開しない方針としたのだろうが、中国がそんなことで日本を理解し納得する筈もない。
 逆に日本の弱腰が見透かされるだけで、中国の横暴は決して止まることはない。
 予算委員会の要求が少し通って、11月8日一部の議員が密室でビデオを見た。
 しかし、小泉進次カ氏が言うように、「国民は40分見ているのに、国会議員は6分しか見ていない」。全くの茶番なのである。
 ビデオは、刑事事件の「証拠物」にあたるとして、民主党政府は非公開に決めたのだろうが、今や、このビデオは、朝から晩までテレビで繰り返し流れていて、もはや証拠物ではないのである。
 仙石官房長官は、国会で、「国家公務員の守秘義務違反の罰則は軽すぎるから、もっと強化することを検討する」との考えを打ち出した。
 明らかに議論の焦点を移そうという魂胆で、いかにも狡猾な彼らしいやり方だ。
 そんな言動に決して誤魔化されてはならないと強く思っている。