小沢一郎前幹事長についての検察審査会の2度目の議決が出され、これで強制起訴が確定した。
 先の代表選で、もし彼が勝っていたら、今頃は日本国総理大臣が被告となって裁かれるという前代未聞の事態となっていた。
 もっとも、彼のことだから、指揮権発動によってこれも拒んだと思われるが、いずれにしても、代表選で勝たなくてよかった。
 あの代表選をふり返ると、菅氏と小沢氏の支持は、民主党国会議員達では、五分五分かむしろ小沢強しの印象であった。
 ところが、サポーターといういわゆる市民側の支持は、菅氏が極めて高く、結果的に彼の勝利となった。
 言い換えれば、一般人の常識が正しかったということで、これは、検察審査会の結論を見ても全く同じであるといえる。
 検察特捜部はこの2月、04、05年分の政治資金規正法の虚偽記載に加え、小沢氏に、4億円を返済するなどした収支を記載しなかった07年分も含め、石川議員ら元秘書三人を起訴した。
 しかし、小沢氏については「明確な了承があったとは言えない」として、不起訴処分にしている。
 玄人筋の判断と、一般人の判断のこうした相違は、権力側と何らかの形で結びついているかどうかで分かれたように、私には思えてならない。
 第一回の審査会のメンバー11人は全員交代し、今回の審査会のメンバーは新しい人達ばかりである。それが同じ結論を下したというところに意味があるのだ。
 すでに発刊され、目下書店で発売されている拙著「こんな政治じゃ、日本はダメになる!」で、小沢氏の疑惑については、かなり詳細にわたって記述しているので御参照願いたい。
 2010年1月には、彼の資金団体である陸山会はじめ個人事務所に、大がかりな東京地検による捜査が入っていた。
 大体、こうした強制捜査の場合、政治資金規正法より、その背景にもっと大きな、例えば贈収賄や脱税といった犯罪摘発が控えている場合が多い。マスコミも我々も、ついに西松建設等との関連かと様々に取り沙汰したものだった。
 ところがその勢いは、一気にしぼんで、大山鳴動ネズミ三匹(秘書三人)という尻切れトンボになってしまった。
 今回の容疑は、陸山会が都内の土地を購入したことに伴う、4億円の資金についてである。検察は「小沢は知らない」ということをそのまま鵜呑みにして、不起訴とした。
 しかし、検察審査会は、小沢氏の直接的関与を示す証拠として、石川元秘書の報告、相談したとの供述を重視している。彼は再捜査でも同様の供述であった。
 他の2人の元秘書は捜査段階では認めたものの再捜査で否定している。
 これからの裁判での1つの懸念は、小沢氏側が、例の検事の証拠改ざん不正事件を格好の材料として持ち出し、捜査段階での秘書の証言を否定するものと思われる点である。
 一方、審査会では小沢氏の土地購入資金である4億円の出所を「明らかにしないことが、虚偽記載をした動機を示している」としている。
 4億円についての説明は、二転三転していた。手持ち資金だと供述しているが、ならば何故金利まで払って銀行から借りたのか。一般常識から見て偽装工作以外考えられない。

 小沢氏は検察側が最終的に不起訴にしたのだから、「無罪が証明された」と主張している。しかしこの判断は検察上層部の方針によるものと、もっぱら言われ続けている。

 ある評論家は「検察は常に強者に弱く、弱者に強いようだ」と言っていたが、一般にそのような傾向にあることは否めない事実だと思う。
 村木厚労省前局長の場合、小沢氏と比べて、素人目から見ても事件性は全く薄かった。
 一銭の金が動いたわけでもなく、上司として報告を受けたか、了解したかだけで逮捕、そして長い拘留だ。一女性局長は弱い立場の人だからなのだ。
 かつて、国会議員が逮捕され有罪になったケースは沢山ある。近年で見れば、例えば元社民党の辻本清美議員、民主党の山本讓司氏、佐藤観樹氏らだが、みんな野党の時代で、しかも、各々弱い議員達ばかりだった。
 鳩山由紀夫氏の金銭疑惑は桁違いの額だったが、何のお咎めもなかった。最大権力者の総理大臣だったからとしか思えないではなかいか。

 小沢起訴となって、これから政局は慌ただしく動く。もしかしたら解散選挙かもと、大阪の松本さんはじめ友人や応援者が期待を込めて問い合わせてくれた。
 しかし、残念ながら、私は逆で、これで解散は遠のいたと思っている。
 何よりも、菅総理にとって、一番手強い相手の小沢氏が一気にその勢力を減退させたのだ。
 実際の裁判を考えても、検事に代わる弁護士の選定や準備、実際の裁判になってからを計算に入れると、相当長い時間を要する。
 数からいって解散すれば総理の座は守れない。少なくとも民主党内で有利な立場になった今、1日でも長く総理でありたいと願う菅氏のこと、どう考えても解散に踏み切るとは思えないのだ。
  追求する側の自民党も、「けしからん、辞職しろ」と責任追及ばかりでは、有権者の批判を招くばかりだ。
 当然、追求は必要だが、小沢問題はもう司法の手に全て委ねて、堂々と国家・国民の為の論陣をはることが必要だと私は思う。

 日本の経済回復の為にどうするのか、危機的状況の外交問題を如何に解決するのか。長年政権を背負い、この日本を築きあげてきた自民党、国民政党としての誇りと自信を持って、今こそ、しっかり立ち上がって欲しいと心から願っている。