言いたい放題 第90号 「好きになれない中国」

 石原慎太郎都知事は、10月12日から開かれる北京市主催の国際会議に出席する予定であったが、「やくざがやっていることと同じ、あんな不愉快な国には行かない」と訪中をとりやめた。
 尖閣諸島沖で、中国漁船と海上保安庁の巡視船衝突事件が起こったが、その後の、中国の過激な対応をみると、まさに「やくざ」の言い分で、日頃彼らの言う「友好」のカケラも無い。

 中国各地で相次いだ対日抗議デモでは、当たり前のように日本の旗を焼いたり踏みにじる光景で、毎度のことながら腹が立つ。
 他国の威信を込めた国旗を燃やすなど、知性も教養もない。レベルの低い国の連中がやることだ。
 彼らのプラカードには、「小日本人は釣魚島から出て行け」とあるが、「小日本」とは日本に対する蔑称で、連中の頭には宗主国というあきれた妄想が残っているのだ。

 しかし、デモを一番恐れているのは、実は中国政府、中国共産党自身であるということで、これは見逃せない事実である。
 かつて1989年天安門事件があった。胡耀邦元総書記の追悼集会だったが突然、民主化の激しい嵐となって、中国を揺るがす大事件となったのである。
 中国は急激な経済発展をとげ、今や日本を抜いて世界第2の経済大国となった。
 しかし、一方で、圧倒的多数の国民は極度に貧しく、これら恵まれない民衆の怒りは、まさにマグマとなって爆発寸前なのだ。
 反日デモであれ、何であっても、要は、いつ政府への不満が噴火するかわからない。これが最大の恐れなのだ。
 05年の反日デモの時、一部が暴徒化して日本料理店などに破壊と略奪行為が行われた。これを許した中国に対して、世界の、とりわけ欧米からの大きな批判の声が上がった。
 今や世界の大国となったと自負する中国にとって、最も痛いのは、国際的イメージが傷つくことだから、あの時、必死に収束をはかったものだった。
 今回も、当局はかなり厳しく規制をかけたようで、北京でのデモも200人程度と小規模であった。
 勿論、楽観は許されない。あの国のこと、油断は禁物なのだ。
 ただ、国内の動きを押さえているだけに、国民向けには、日本に対してより強硬な姿勢をとらざるを得ないという側面がある。
 日本に少しでも甘い態度を取れば、批判の矛先が直ちに自分たちに向けられるからである。

 そもそも、今回の事件は、我が国の領海内での中国漁船の侵犯行為である。
 9月7日午前10時20分、尖閣諸島北西部15kmで、違法操業中のトロール船を海上保安本部の巡視船「よなくに」「みずき」が発見した。直ちに停戦命令を行ったが、これを振り切って逃げ、しかも、なんと2度にわたって巡視船に衝突してきたのである。
 結局は公務執行妨害容疑で船長を逮捕したが、本来は外国人漁業規制違反、領海侵犯事件の疑いで逮捕すべき事案ではなかったか。
 となれば、船員全員に対しても捜査を行う必要があるのだが、何故か、13日になって14人の船員と、中国船の返還を行ってしまった。
 菅内閣はなんとも弱腰で、早くも中国の圧力に屈してしまった構図となっている。
 中国は、丹羽宇一郎大使を深夜も含めて何度も呼び出し、「船長を即時無条件釈放しないなら、強い報復措置を執る、その結果は全て日本側が負う」と、恫喝まがいの厳重抗議を続けた。
 深夜に、国を代表する大使を呼びつけるなど、外交上の礼儀すらわきまえていない。いつも、中国は礼節の国などと自称しているが、これがかの国の実像だ。
 我が国の対応はといえば、仙石官房長官が、ただ不愉快を表明しているだけという何とも情けない姿である。本来領海侵犯に対して国家として憤りを込めて、断固抗議して当たり前なのだ。

 中国はすでに種々の報復措置を行い始めた。
 東シナ海のガス田条約締結交渉の延期(2年前に両国政府が共同開発で合意したもの)、日中間の閣僚級、省庁間の交流停止、航空路線の増便をめぐる航空交渉の中止、日本への観光団の縮小などである。
 特に驚いたのは、1000人規模の日本青年上海万博訪問団の出発直前に受け入れを延期したことだ。これは、今年5月、来日した温家宝首相が、鳩山首相との首脳会談で、自ら提案した「日本みやげ」だったのにだ。
 最近、レアアースの事実上の輸入禁止も始まっているといわれている。
 レアアースはハイテク製品に欠かせない希少資源で、なんと世界産出量の97%を中国が握っている。日本への悪影響大だ。
 こうした、日本にとって厳しい外交圧力は、今後も一層強くなっていくこと必至だ。我々も相当の覚悟を持って望む必要がある。

 日本にとってこれから大事なことは、中国を牽制する為に国際世論に訴え、日本の正当性を正確に伝えることだ。
 特に重要なのは、日米関係だ。政権交代以来、民主党政府は沖縄基地問題等において、すっかりアメリカの不信を買ってしまった。
 これは、日本にとって大きなマイナスで、中国は、こうした新政権のギクシャクした日米関係につけ込んでいると見ても、大きな誤りではないと思う。
 菅首相と温首相とのニューヨークでの会談が中止となったが、そんなことは大したことではない。どうせ今、会ったところで、相方からよい答えが出るはずもないからだ。
 それよりも重要なことは、オバマ大統領との会談であった。ここで菅首相が日本の立場をどこまで説得し理解させられるかで、これからの命運が決まると心配していた。
 23日、一応両首脳が会談を行い、日米間の固い絆を世界に明確にアピールすることが出来たようだ。
 前原外相とクリントン国務長官との初の会談でも、「米国の防衛義務を定めた日米安保条約第5条は、尖閣諸島にも当然適用される」と合意した。
 前原外相は、「今回の事件は、日本の領海内で起きたことだから、国内法制によって粛々と対応するだけだ」と最初から発言していた。民主党内で唯一の正論で、この主張を変えないで欲しいものだ。これからの問題は、強力な日米同盟を如何に構築していくかで、その為には沖縄問題解決など、日本の責任を果たしていくことで、まさに民主党政権の能力が問われると思っている。

 この際、そもそも尖閣諸島はどこの国のものか、改めて付記しておきたい。
 なんの問題もなく、明確に言えることは日本の領土だということだ。
 1895年(1月14日)、清国など他国の支配の全く及んでいないことを確認した上で、日本領土に編入したものである。
 下関条約(1895年4月17日)で割譲を受けた台湾とは全く異なる日本の領土だ。(中国は割譲された台湾の一部と主張)
 1951年、サンフランシスコ平和条約で米国の施政下に入ったが、沖縄返還協定によって72年日本に返還された。国際法上何の瑕疵もない。(中国は、同条約で施政権を米国に引き渡したのは不法で、中国政府は承認していないと主張。)
 尖閣諸島に石油資源があるとわかったのは68年頃だが、それまで、中国は領有権を主張したことがなかったのだ。中国の意図は見え見えではないか。
 日本はかねてから、尖閣諸島は我が国固有の領土で、だから、そこに「領土問題は存在しない」と主張し続けてきたのである。
 余談だが、台湾から帰化した蓮舫大臣は、過日「領土問題云々」と発言していたが、これは日本の基本的姿勢と異なっている。留意しておく必要があると思った。
 中国は、東シナ海は中国大陸棚の延長線上にあり、沖縄トラフまで全て中国の領土だ、とさえ主張している。その時々で自分の国に都合の良いように言いたい放題、呆れるほかない。
 中国は南シナ海の海洋権益を広げようとして、この6月にはインドネシア沖でも一触即発の事態を起こしている。同じことを東シナ海でも行おうということで、まさになりふりかまわずの中国の覇権主義の現れなのである。

 今、この文章を書いている時(9月24日)、船長が処分保留で釈放されたというニュースが流れた。政治的配慮による異例の展開となったのだが、一体、これが正しい結論なのか。だとするなら、最初から逮捕などさせなかったらよかったのに・・・。
 菅政権の判断の甘さと弱腰を、今後強く追及されなければならない。

 いずれにしても、「あんなやくざのような国には行かない」、石原知事と同じ思いの私である。