言いたい放題 第87号 「新内閣の顔ぶれ」

 正式に菅改造内閣が誕生した。
 先の代表選で国会議員支持の数は互角だっただけに、小沢色をどうするのか注目していたが、顔ぶれを見て一応、脱小沢の組閣であった。もっとも、小沢グループは新人、若手が多く、大臣適齢期の人が少ないという事情もあるのだが・・・。
 小沢氏は、その後の議員総会に、早速、姿を現わさなかったが、相変わらず都合が悪いとすぐ雲隠れする。一体、何を考えているのか、周囲は疑心暗鬼になってやきもきするが、これは彼の常套手段だ。
 このところ検察の事情聴取に何回か応じているようだが、いずれにしても、例の検察審査会の最終結論が出るまで、何の動きもとれる筈がない。
 仮に、これが起訴相当とならなければ、無罪放免、どんな展開になるかわからない。
 とりあえず、今回の内閣には格別文句を言わずに、来春の予算成立時期あたりに狙いをつけて、対菅の第2ラウンドを起すつもりかも知れない。

 今回の組閣の特徴は第1に、本来、とっくにクビを切らなければならないお粗末大臣を、この際、さり気なく交代させたことだ。例えば女性スキャンダルや拉致問題でミソをつけた中井洽国家公安委員長や、キャミソール事件の荒井聰国家戦略・経済財政政策担当大臣、死刑問題の千葉景子法務大臣などである。叩かれないうちにこれは上手な処理方法かも知れない。
 第2の特徴は、先の代表選挙で支持してくれたグループからの起用で、論功行賞の色合いが濃いという点だ。
 党内で異論の多い、まだ3期生の馬淵澄夫国交相などその一例だ。
 旧民社党グループでは、代表選終盤になって首相再選を打ち出したが、ここからは柳田稔氏の法相等2人が就任している。

 小沢氏の推薦人だった鳩山グループの海江田万里氏を、経済財政担当相に起用したことで、菅首相は、しきりに小沢系ゼロではないと言っているが、これは海江田氏の世渡り上手の勝利ではないか。
 海江田氏は、東京1区選挙区で、いわば私のお隣りだけに、よく知っている。その上、平成8年、私が衆議院予算委員長時代、団長になって海外視察を行ったが、その時のメンバーの一人であった。
 一緒に出掛けた伊藤公介前議員と、最も意気があって、まるで2人でかけあい漫才風、終始皆は腹を抱えて笑い転げたものだった。
 彼はかつて経済評論家としてよくテレビに出演していたが、いわゆる経済専門家の一人である。民主党は経済にうといといわれているだけに、重用されたのであろう。
 ちなみに、今、民主党の長老格になっている石井一参議院議員もその時の同行者の一人だった。
 彼の背広といえば、アルマーニの服専門だ。今もそうだが、イタリアのマフィアの親分タイプだから、それがよく似合っていた。
 ゴルフに熱中していて、あまり会議には出席せず、移動中のバスにアルマーニの服だけが掛けてあって、よくみんなで笑いの種にしたものだ。憎めない人ではあった。

 今回の大臣就任で、珍しいのが、片山善博総務相の民間人登用だ。
 彼は、昨年、民主党の政策作りに参加した人だ。しかし、その後はもっぱらテレビにもよく出ていて、菅氏提唱の地域主権三法案などに批判的であった。
 とくに、全国知事会等、地方6団体代表と話し合う「協議の場」の法制化について大反対であった。参議院総務委員会に参考人として出席した時、「なんで天下り団体を、政府の協議相手として法律に位置づけるのか」と言っていた。
 ところが記者会見で、早速、あっさりとこれを認める方針に豹変した。
 かつて、平成7年、私は自治大臣として地方自治権拡大に努力してきた。率直にいって、受け入れ側の能力の問題も含めて、本当に難しい仕事であった。
 片山氏は鳥取県知事の経験者だから適任だという期待もあるようだ。しかし、一番小さな県の首長経験くらいで、全国にわたる公平な自治を確立することなどなかなかできることではない。
 その上、総務大臣には、民主党のいう国家公務員の総人件費2割削減問題や、この代表選で菅首相が訴えた、人事院勧告を超える給与削減など、相当に困難な問題が控えている。当然、給与削減といえば、労働組合は猛反発する。更に、又、通常国会で廃案となった郵政改革法案をどうするのか、これも大変だ。ついこの間まで彼は、「国民新党に無理矢理引きずられている」と大批判していた。一体どうするつもりかと思っていたら、なんと、「やり遂げます」との姿勢になっていた。
 早くも従来の持論をくるくる変えているではないか。これこそまさに菅流なのか。変心ぶりは首相には気に入られるかも知れないが、国民にとっては大いに迷惑、心配の種である。

 ともかくも、菅改造内閣は出発した。生まれたばかりだから、これ以上言うつもりはない。しかしこの一連の動きの中で、支持率が又上昇したことが気にかかる。
 物事を簡単に表面だけ見て安易に判断しては困るのだ。大切なのは、日本の行方に関わっているということだ。
 この際、厳しく今後の菅内閣の動きを注視していく必要があると思っている。