言いたい放題 第80号 「真価の問われる予算編成」

 いよいよ、2011年度予算に向けて、まず概算要求の季節を迎えた。
 予算案作成は、まさにその政権にとって真価を問われる政治的最大のテーマである。
 かつて、平成5年細川政権が誕生した時、わずか8ヶ月で崩壊した。数々のスキャンダルがあって、それが大きな原因といわれているが、細川政権が挫折した最大の理由は、予算編成が大幅に遅れたことと、その中味が欠陥商品だったからである。

 昨年、民主党が政権を得て、初の予算編成を行ったが、概算要求額の場合実に95兆円を超え、2010年度予算は、結局92兆3000億円という過去最大のものとなった。
 選挙中は野党であって、まさか政権を獲得できると思っていなかったのか、マニフェストであまりのバラマキ宣言を行い、予算が野放図に膨れあがってしまったのだ。
 財源の税収はわずか37兆円、やむなく44兆円に及ぶ国債発行となったが、税収より多い国債という名の借金は、まず前代未聞のことである。
 我々が常に心を痛め、なんとかしなければと努力してきた財政再建など、どこ吹く風といった具合であった。

 さて、その概算要求づくりが大詰めを迎えているのだが、民主党内は今、代表選を控えて党内が2分されるかどうかの瀬戸際で、それどころではない。それでも作業は一応着々と進められている。不思議なことだと思う人も多いが、実は議員に関わりなく、各省庁の役人達の手で黙々と進められているというのが実態なのだ。首相はじめ閣僚達は、全体的な方向は打ち出しているが、実務は別で役人任せ、つまり官僚主導なのである。

 ところで、7月にまとめた概算要求基準は、国債の元利払いを除き、歳出の上限を71兆円とし、各省庁一律に前年度予算を1割削減するというものである。
 一律10%の削減は、一見、なんとも良いような方針だが、よく見ると、ゴマカシ可能な魂胆が見え隠れしている。
 概算要求組み替え基準では、1割を超えて削減した場合は、各省庁の努力を促す為と称して、削減額の3倍までの特別枠の要求を認めるということになっている。いわばボーナスをつけるということなのだ。
 一応、特別枠は、雇用拡大や経済成長に寄与する事業を優遇する為のものなのだが、実は、付け替えで1割カットを骨抜きにしようとする動きが見られるのだ。
 つまり、省庁の役人達の考えは昔ながらに達者で、どこかで1割以上を削り、他の部門で特別枠の3倍要求のボーナスを確保し、これで埋め合わせにしようとしたりするのである。
 例えば、農林水産省の場合、10年度に大幅に削減した農地改良関連予算を特別枠に盛り込んで、これを機会に「復活」させようとしている。
 防衛省では、思いやり予算(在日米軍向)を特別枠に付け替えて、既存予算をその分削減することにして辻褄を合わせるのだ。
 我々自民党政権時代は、いわゆるシーリング(概算要求基準)をつくって、あらかじめ上限を定めて、各省庁の要求に一定の抑えをかけていた。
 鳩山政権ではこれを廃止した為に、予算の歳出要求が大きく膨れ上がった。その為に、今回「概算要求組み替え基準」という新たなルールを作ったのだが、付け替えという、いわゆるゴマカシが生まれてしまったのである。
 国家国民にとって必要なものは、きちんとしたルールに基づいて要求すべきである。小手先だけの下手な細工は、かえって禍根を残しかねないと私は思っている。

 ところで、民主党がマニフェストで主張してきた目玉政策はどうなるのか。
 公約違反で今年は半額であった子ども手当は、来年度は満額の2万6000円を払うということだった。しかし、目下のところ、どうやら断念するようだ。
 もともと財源不足で、最初からそんなことは不可能なことで、これは一般常識であった。
 今年の月額1万3千円にしても、3分の1は地方や企業の負担にさせられていた。話が違うではないかと、当事者から大きな批判の声が上がったが、今年はどうするのか、目下のところは何も示されていない。
 すでに行われてきた米農家の個別所得保障に加え、今度は麦や大豆や更に漁業にまで対象を広げると言っているが、厳しい財源を思えば、かなり無理な話ではないか。
 参議院選挙も終った今、他のバラマキ予算は、例えば高速道路の無料化のように、次々と修正して、知らぬふりを決め込むようである。

 景気対策、とりわけ円高対策等、今一番求められている対策について、一体どのように解決策を立てていくのか、全くその方向性が見えてこない。概算要求に続く、本格的な予算案編成の動きを、我々は自分のことと考えて、しっかり見守っていかなければならない。
 予算編成こそ、日本の今と将来を決定する最大の政治作業である。下世話な(小沢氏の言)党内のゴタゴタを早くまとめて、真剣にまともな予算を編成して欲しいものである。