言いたい放題 第77号 「夏のお化け」

 連日の猛暑が続いて日本列島の熱は高まるばかりだ。熱気は甲子園だけでいい。
 特に気になるのは、高齢者の熱射病による死亡だ。私の場合、相変わらず異常?なほど元気だが、自分の年齢を忘れて、「可哀そうに」と老人への同情しきりといったところである。

 夏はなんといってもお化けのシーズンだ。遊園地や、色々な場所でお化け屋敷などは人気のスポットなのである。
 人間国宝の一龍斉貞水師など、得意の怪談話の独演会で売れている。
 ところが、なんと政界でも近頃、お化けが復活の気配で、こちらは国の行方に影響するだけに喜んでいる訳にはいかない。
 一度死んだ人が再び出て来るのがお化けだが、それならば政界のお化けは、鳩山由紀夫前総理と小沢一郎前幹事長といったところか。
 5月9日、鳩山氏は、長野県軽井沢町でグループの研修会を開き、約150名の衆参議員を集めた。
 そこへ、なんと小沢一郎氏を招いた。小沢氏の参加で、この研修会は大いに盛り上がり、9月の民主党代表選で小沢氏を代表候補に担ぎ出そうとの気運まで起こったという。
 野党時代ならとやかく言うつもりはないが、今は民主党政権だから、党の代表はイコール総理大臣だ。だから、この動きは簡単に見過ごせない。
 お化けが又出たと、のん気に看過することは出来ないのである。

 ついこの間、(平成22年6月2日)、鳩山首相は小沢幹事長を道連れにして辞めたばかりだ。
 鳴りもの入りで政権交代を果たして、なんとわずか8ヶ月での退陣だ。
 「総理が一年ごとに交代する」と、あれほど自民党政権を批判し続けたのに、この有様だ。
 言うまでもなく、民主党はその場限りの、内容の無い、選挙目当ての政策ばかりで、スタートしたとたん実現性の乏しさがたちまち露見してしまった。
 その上、なによりも金まみれの、あまりにひどい金権体質が国民の決定的顰蹙(ひんしゅく)を買った。
 最初は80%という異常に高い支持率だったが、あっという間に10%台にまで一気に下落して、いわば国民の声によって鳩山首相は退任させられたのだ。
 首相を辞めた鳩山氏は、国会議員も辞めますと、実にカッコ良く公言したのだが、これもたちまち覆して、「やっぱり続けます」と豹変、なんとも厚顔無恥な話であった。
 小沢氏を道連れにしたことは一般に好評であった。首相に就いた菅直人氏は、世論に極めて敏感で、早速、小沢氏とは距離を置こうと「静かにして欲しい」と明確な小沢外し体制を敷いた。
 小沢氏は政治と金の問題で、何の決着もついていない。国会でも説明責任すら果たしていない。
 その上、資金管理団体の事件をめぐる検察審査会の最終結論は、代表選後に出される予定で、未だ出されてはいない。
 常識的に見れば、この2人は政界ですでに死んだ状況にあったと言って言い過ぎではない。
 ところが、鳩山グループは依然として40人程度を擁し、小沢氏にいたっては実に150人に及んでいる。
 これらが結束すれば、仮に小沢氏の代表選出馬となった場合、まずは当選確実で、そうなれば日本の金権総理大臣の誕生となる。
 とんでもないことではないか。

 鳩山氏は、このところ菅首相の依頼を受けて、温家宝首相等を「日本代表」として訪問し、次のロシアで開かれる国際フォーラムへ出席し、メドベージェフ大統領との会談も決まっている。鳩山氏に対する菅首相の御機嫌取りの配慮であることは明らかだが、その訪問先の中国北京で、菅氏続投を認める発言をしている。挙党態勢が前提条件だが。
 今回、彼が軽井沢の自らの研修会に小沢氏を招いて歓迎したのは、両者の仲介を買って出て、自分の位置を守りたいという気持からであろう。
 小沢氏は、このままでは存在感を失うと危機感がつのると見えて、最近は復権への動きが活発になっている。
 朝日新聞(8月20日号)によると、14日夜、引退した議員を前に、小沢氏は「このままじゃ、お国がダメになる。ダメになっても(菅首相)は権力にしがみつくだろう」、「民主的な手続きで代えるとしたら9月しかない」と語ったという。「このままではお国がダメになる」、それは私の本の題名だぜ!とあきれたが、様々な会で代表選出馬の意欲を、ことさらに誇示していることは間違いない。
 だが、その可能性はあるのだろうか。
 政治と金をめぐる世論の風は、当然のことだが今も厳しく、決して収まる気配はない。今更、天下取りで返り咲くようなことがあれば、たちまち袋だたきが起こることは目に見えている。
 おそらく、小沢氏のねらいは、総理大臣に就くことは不可能だから、せめて何らかのポストを獲得して、小沢グループの結束力を高め、できれば院政もどきの状況をつくりたいということではないか。
 いづれにしても、民主党内の代表選を前にしての、こうした慌ただしい動きは見苦しい。
 どこまでも党利党略、個利個略で、そこには、この国の為にどうするとか、国民の幸せの為に、といった本来のまともな政治家の思考はうかがえない。

 夏のお化けは、小話や物語の中だけでいい。政治の世界の亡霊は、亡国につながる。これこそ本当に怖いお化けなのだ、ということを多くの人に知って欲しいものである。