テレビを見ていたら、宮崎県の口蹄疫問題で、山田正彦農水相と東国原英夫知事が対立し、双方一歩も退かない雰囲気であった。
 同県の畜産農家が所有する種牛6頭の処分について、知事は健康であることを何度も確認した上で、特例として種牛を県所有とし、延命させる方針を打ち出した。
 これに対して農水省は、口蹄疫対策特別措置法に基づいて、すでに民間の牛は殺処分したので例外を認める訳にはいかないと主張していた。
 そして、もしこれに従わない場合は、地方自治法に基づいて所有者に変わって県が殺処分するよう是正を指導する。県がこれを拒めば農水省が代執行して殺処分するという。
 すでに、宮崎県では口蹄疫問題は一応終息に近いとして、家畜の移動制限などを解除する方針だったが、農水省はこの種牛が残っている限り、制限解除も認められないと、極めて強い態度である。
 家畜伝染病防止は、確かに必要なことで国の危機管理上、こうした姿勢は誤ってはいない。しかし、そもそも今回、牛や豚28万9千頭を殺処分するような大惨事になったのは一体、誰の責任だったのか。そのことをまず当局及び関係者はもっとしっかり反省しなければならない。
 かつて2000年にも同様なことが起こったが、自民党政権下、迅速な対応で、わずか牛740頭の殺処分で全面解決している。それに対して、今回の民主党政権下の対応はあまりにも杜撰(ずさん)なものであった。
 何よりも驚かされたのは赤松広隆前農水大臣が、口蹄疫が発生した一番大切な時期に、のうのうと9日間も中南米を外遊していたことだ。とんでもないことだが、その時の副大臣が今の山田大臣であった。直接の責任者ではないか。
 山田大臣は7月13日、なんと、東国原知事を東京に呼びつけた。前の会談でも知事の出した嘆願書を受け取ろうともしなかったり、極めて高飛車な姿勢だったが、今回もただ「NO」を突付けるだけ。自らの責任を糊塗し、誤魔化す為の一方的な不遜な態度は見ていて気分が悪かった。「だいたい、県には危機意識がない」とテレビで苦々しい顔でコメントしていたが、それこそ自分のことではないのか。
 心血注いで育てた牛を、自ら殺処分しなければならない当事者にとって、どれほど大きな苦痛や悲しみがあることか。山田大臣はそのことを少しでも考えたことがあるのだろうか。
 この6頭について、県は何度も安全の確認を行っている。「他の場合は処分したのだから」と通り一遍の言い方でなしに、もう一度、何らかの形で確認する作業くらいするような柔軟性はとれないのだろうか。
 どう考えても、あの大臣には畜産農家を救うという真剣さと、彼らに同情を寄せる優しい心情が見られない。
 政権を握った強者の驕りが見え見えではないか。

 15日になって、東国原知事は一転再度方針転換することにし、畜産農家に殺処分を要請することになった。
 知事は「農水大臣から「どうしても殺処分を勧告せよ」と恫喝された。本意ではないが、法律だから勧告した」と記者団に語っている。
 そして、その結果として、一部を除いて移動制限を解除することを農水省に了承させた。
 なんとも後味の悪い結末だった。
 この対応が良かったのか悪かったのかは、後になってみないとわからない。しかし、はっきりと言えることは、政治や行政への不信は強く残ったということである。