言いたい放題 第63号 「菅首相の実像を知る格好の機会」

 参議院選挙まっ盛りだが、首相になったばかりとはいえ、菅氏のなんともいい加減な演説内容に、連日ビックリするばかりである。
 この選挙で、いつの間にか消費税問題が焦点となっているが、調子に乗って消費税値上げ発言を行ってきた菅首相、ここへ来てくるくると自らの発言を変えている。
 勿論、選挙戦に不利と思ってのことだが、何よりも与野党を問わず、内外からの激しい批判に心が揺れているからである。
 消費増税について、菅首相は低所得者へは特別に負担軽減策をとると突然言い出した。税の還付云々・・・だ。
 それも、対象となる低所得者なる者の基準について、言う度に数字が違っているのだ。
 山形市では「年収300万円から400万円以下」といい、青森市では「年収200万円か300万円」、秋田市では「350万円以下」といった具合である。
 はっきり言って、草の根運動から権力の頂点にのぼり詰めた人だから、政権担当者としての自覚は全く無く、相変わらずのアジ演説の気分で、口から出まかせを言っているに過ぎないのだ。
 年収の基準を打ち出すなら、当然、その場合国民の世帯のどの程度が対象になるのか、厳密な数字の裏付けが無くてはならない。
 そんなことはお構い無しというのだから話にならない。
 そもそも、低所得者対策の基準となる年収の水準は、制度によって異なっている。
 生活保護の対象は夫婦子1人で、年収210万円以下、個人住民税の課税最低限は65歳の年金生活者(夫婦)で、194万円、夫婦子2人のモデル世帯で325万円未満。
 高校無償化で、私立学校に通う生活への支援が上乗せされるのは年収350万円未満といったように、かなり複雑なのだ。
 菅首相は、こうした制度をきちんと学んで検討した上で発言したのか、そんなことはないようだ。
 第一、年収400万円未満の世帯というが、これはなんと全世帯の46.5%に達する。これだけの世帯に一定の減税や給付を行うとなれば、仮に10%の消費税でも、増税分はほとんど無くなってしまうのだ。
 ならば、ごちゃごちゃ言うより消費税は値上げしないというマニフェストの方が「マシ」ということになるではないか。
 一体、所得を把握するのにはどうするのか、例の「税・社会保障の共通番号制」の導入がなければならないことだが、その導入はもっと難しいことだ。
 更に、菅首相は「消費税分全額還付という方法もある」とも言うが、それこそ、領収書、レシート完全保管が必要だし、第一その一つ一つに本人確認が必要で、まず出来ない相談だ。
 普天間移転で、「国外、最低でも県外」といった鳩山前首相の発言が、公約か否かと大問題になったが、今回菅首相の消費税発言は一体公約なのか、単なる選挙用の発言では通らない。一国の総理大臣として国民をだますことになり、断じて許されぬことだ。
 仙谷官房長官は、記者会見で「あれは一つの例示で、議論する材料を提供した者」と弁明したが、これが詭弁に過ぎないことは誰にでもわかることだ。
 要は、政府として何も正式に議論していないことを、首相が勝手に言っているということなのだ。これでは無責任発言で首になった鳩山氏と少しも変わっていないではないか。
 菅氏は、鳩山内閣の副総理であった。あれだけ批判され、ついに10%台の支持率になって退陣した鳩山氏とは、同じ責任があることは言うまでもない。
 仮にも総理になったのだ。せめて誠心誠意、国家国民のために本気で熟慮し、正直に語っていかなければならない。
 実はこの参議院選挙は、菅氏の実像を判断する格好の機会だと私は思っている。マスコミは勿論、国民もしっかり彼の言動を見つめ、菅政権についての正しい結論を出さなければならないと思っている。