米軍普天間飛行場移設について、鳩山首相は何度も腹案があると言っていたが、明らかになってきたのがやっぱり名護市辺野古と鹿児島県徳之島のようである。
 違うところは、辺野古の場合、現行の沿岸部埋め立てではなく、杭を打つ桟橋方式を考えている点である。
 すでに何度もマスコミで報道され、各所で大変な反対運動が起こっているところで、今更これが腹案でしたというのだから、あきれてしまう。
 鳩山首相は今までその時々の思いつきを、いかにも熟慮した上での提言であるかのように言ってきたが、今回も変わらない無責任さである。

 事前の地元への根回しは、単なる政治戦術ではない。まず確固たる計画を立て、地元民を真剣に説得し、理解させ、実現に導くための必要な対応なのだ。
 今回、明らかになった案が首相の腹案だったのなら、なぜもっと早くから地元の根回しを行わなかったのか。
 昨年の衆議院選挙で、民主党は国外移転、最低でも県外移転と訴えて、沖縄県民をすっかりその気にさせてしまった。
 票のために嘘を繰り返し、今更辺野古案では県民が納得する筈もない。
 しかも、埋め立ては自然への冒涜(ぼうとく)とまで言っている。では杭打ち案なら本当に問題はないのか。海底に数千本の杭を打ち、当然周辺に埋め立ても行わなければならない。一層お金がかかる上に、環境への負荷は実際には変わらないのだ。

 4月28日には徳之島の実力者と言われる徳田虎雄元衆議院議員を突然訪ねて、自分の考えを伝え協力を求めた。
 その徳田氏は、現在全身の筋肉が動かなくなる筋萎縮性側索硬化症という難病で、車いす生活である。
 彼は、かつて保岡興治前代議士と、選挙の為に徳之島を二分する大変な選挙戦を繰り広げてきた人で、私もかつて、少し縁があって知っている。直情怪行型の不思議なタイプの人で、何度も会っている。
 ある日、私に自分の経営する鎌倉にある徳洲会病院に是非行くようにと検診を進めてくれたことがある。
 「議場にいる国会議員の三割はガンになる危険のある人達だ。最高の技術を持つ私の病院で診ることが、早期発見につながる。深谷さんにはいい部屋も車も用意するから。」と、何度も熱心に申し入れてくれた。結局行かなかったのだが、当時のことを良く覚えている。
 お気の毒にも、今や御本人が難病にかかり、声も出せず手も足も動かすことが出来ない。文字盤上の文字を一つ一つ目で追って、それを付き添いの人が、その目の動きを読み取り言葉にするのだ。
 そんな不自由な身体の人のところに、御見舞と称して訪れた鳩山氏の気持ちがわからない。徳之島移転への県民感情を意識しての行為だとすれば、そんな卑劣非情な行動は、人として許されない。
 徳之島三町長はこの話を聞いて、地元首長の頭越しの直談判に不快感を示している。
 連休中仲井眞弘多沖縄県知事にも会いたいと述べたようだが、知事の方が「良く休んで英気を養って」と皮肉っていた。
 とにかく「仁義」だけは切りたいと焦っているようだが、やくざの世界ではあるまいし、「仁義」などと言っているようでは、お粗末で話にもならない。

 米側は海兵隊のヘリ部隊と陸上部隊の一体的運用を重視しているから、200kmも離れている徳之島に移すことは反対だ。なによりも、「地元の合意がなければ前にも進められない」と、当然至極な態度ではないか。

 地元も米側も了解しない状況は続き、時は刻々と過ぎていく。
 鳩山氏の主張は白々しいばかりで、5月末までに結着の見通しは目下無い。
 最後は「ゴメンナサイ」と、又、くるくる言を左右にするのか、そんなことは許されない。
 鳩山首相はもう辞める以外、道はないと私は思っている。