言いたい放題 第42号 「閣内対立のお粗末」

 亀井静香郵政改革相の独走ぶりと、鳩山首相の相変わらずの対応で民主党は揺れている。
 マスコミは、亀井発言を聞いていないと反発する菅・仙谷大臣のことをあげて、閣内対立と大きく取り上げているが、元々、水と油の人達だ。政策の一致で結ばれている訳ではないのだから、対立するのはむしろ当然の姿と私は思っている。
 小泉元首相が、郵政民営化を進めたのは、官から民への変革を主張した結果であった。
 かつて私は、郵政大臣として郵政事業の発展の為に大いに活躍したことがある。
 前島密翁が全国に広げた通信網は、中央の声を地方に伝え、一方、地方の声を中央につなげ、近代日本の基盤をつくった。
 資金力の無かった時代、地方の篤志家が土地やお金を提供し、つくり上げた全国2万4千以上もの郵便局網は、過疎の地域を支え、国全体のバランスを保たせ、その発展に貢献した。
 しかし、近年、時代の移り変りは早く、大きなうねりとなって、社会全体の仕組みを次々と変えていった。
 例えば携帯電話の驚くべき普及は、人々に手紙やはがきを書く習慣を失わせ、郵政事業の根幹を覆す状況をつくり出した。
 郵政公社時代、郵便局を中心に集めた郵便貯金や簡易保険の巨額の資金(350兆円)は、政府の財政投融資によって特殊法人などに貸し出されて、大きな効果をあげて来た。しかし近年は、これが無駄な公共事業等を続けさせる弊害を生んだと批判されるようになった。もっとも、これは郵政側ではなく使う側の責任だと思うが・・・。
 現在、郵貯・簡保の総資産は減ったとはいえ296兆円に達している。
 本来、これらの資金を企業や個人など「民」に流れるようにするのが民営化であったが、資金の活用や運用となると、元々融資審査能力の乏しい日本郵政グループには無理な話で、いきおい、「国債」の最大の引き受け手となっていく。
 なんと国債全体の約3割を保有しているのだ。これでは資金が官に流れている構造は少しも変わっていないということだ。
 今回、亀井氏は、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額を1,000万円から2,000万円に、かんぽ生命保険の保険限度額を1,000万円から2,500万円に引き上げるというのだが、一体、集めた膨大なお金をどうしようというのか、そこのところが全く分からない。
 もともと民主党は、預け入れ限度額を500万円に引き下げよと主張していたのだが・・・。
 今度のことで一番危機感を持っているのは、金融界、とりわけ地方の中小信用金庫や信用組合だ。
 かつて1990年代のバブル崩壊後、個人の金融資産が政府保証のついていた郵貯・簡保にどっと流れ込んだ苦い経験があるからだ。
 その上、全国一律サービスを維持するのに必要なコストをまかなう為に、グループ内取引にかかる消費税500億円を免除する案も浮上しているというのだ。
 亀井氏の思惑は、おそらく小沢氏と共通するものがあると私は思っている。
 すなわち、選挙を有利にさせようという考えだ。
 全国郵便局長会は50万票持っているといわれ、その集票能力はとてつもなく大きい。参議院選挙を第一と考え、これに自分の命運をかけている人にとって当然大変な魅力なのである。
 新トロイカといわれている菅・仙谷氏らが、一斉に異論を唱えているが、国の将来を考えた時、彼らの主張は今回の場合正しいといえる。
 肝心なのは、鳩山首相の対応だ。亀井氏は、首相の了解を得ていると何度も繰り返し言っているが、いくら亀井氏でも首相の了解無くして、こんな重大な発言をするとは思えない。
 鳩山氏は「了解を与えていない」とあわてて否定しているのだが、相変わらずの迷走ぶりが目立っている。
 郵政民営化は、現実にすでにかなり進んでいる。これを戻そうとすることは、もはや無理な相談だ。
 選挙の為に、時代の流れを止め、これを逆行させようとの発想は、土台通る筈がないことは自明の理だと私は思っている。