2月4日、東京地検特捜部は、小沢一郎幹事長の元秘書で事務担当者だった石川知裕衆議院議員ら3人を政治資金規正法違反の罪で起訴した。
 肝心の小沢氏については、加担の証拠が無いということで不起訴となった。一体、あれだけの大騒ぎは何だったのかと、狐につつまれたような気分である。
 おまけに平気な顔で、幹事長続投の意向を表明し、鳩山首相も唯々諾々として従っているのだからあきれた話である。
 昨年の3月から続いてきた西松事件以来の陸山会をめぐる事件は、これで一件落着というのであろうか。だとしたら、誰が正義を守ってくれるというのだろうか。
 小沢氏の強引な検察批判から、一時は民主党対検察の全面対決の構図となっていた。この事件がこれで幕引き、全て終わりとなれば、明らかな検察の敗北となる。小沢氏側が散々批判したように、検察の強引な誤った捜査ということになるが、それでいいのだろうか。

 2004年、秘書らは小沢氏からの借入金で世田谷に土地を買い、この資金を2007年に小沢氏に返した。これらの収支を報告書に記載しなかったというのが今回の陸山会土地取引事件だ。
 このことに小沢氏がどれだけ関与していたのか、ゼネコン側からの裏金が含まれていなかったのか、これが焦点だったが、逮捕した秘書達から、ついにこれを裏付ける供述が得られず、嫌疑不十分で不起訴となったのだ。
 ただし、今回の捜査から、小沢氏関連団体の収支は崩れ、なんと合計18億1,700万円の虚偽不記載の事実が明らかになっている。
 都内や岩手県にある10数件もの不動産は、小沢氏名義になっている。10円単位のお金までチェックし、絶対命令の独裁者小沢氏が、この全てのお金の出入りに「私は知りません。秘書に任せた」で世の中は通る筈がないではないか。
 ゼネコンからの裏金問題については、水谷建設の元役員らが、胆沢ダム工事下請け受注の時期にあたる2004年10月と、2005年4月に、各5,000万円ずつ計1億円を、石川議員、大久保元秘書に渡しているとホテルの場所まで説明して供述している。
 しかも、石川氏にホテルで渡したという翌日、銀行に同額が陸山会名義で入金されているのだ。
 たとえ、石川議員が裏献金をどのように否定しようと、そして彼の供述が無かったとしても、これだけの状況証拠があれば公判で充分立証出来る筈と、私には思えるのだ。
 政治資金収支報告書について、石川議員は、「小沢氏の了解を得て提出した」と供述し、実際に調書に署名までしている。
 ここまで明らかなら、小沢氏との共謀といえると思うのが普通だ。しかし、これでは抽象的で一般的報告の範囲だから、小沢氏を公判で有罪にさせるには無理というのだ。
 早い話、この一連の事件で、小沢氏が中心に居るのは間違いないのだが、供述がついてこないのだから、やりようがないということなのである。
 そもそも、不正な金を受け取っていないというなら、なんで資金の流れを隠す為に、何度も出したり入れたりさせたのか。これはどう考えてもマネーロンダリングとしか思えない。
 土地購入の原資について、今まで小沢氏は何度もその説明を変えてきた。
 分かっているだけでも、4回は変わっている。最初は支援者の献金といい、2度目は銀行からの借金、次は父親の遺産、4度目は、妻や子の口座からといい、では脱税ではないかと問われて、いやあれは自分のお金と言い張っている。
 今回、不起訴になったことで、小沢氏や民主党幹部が色々と発言している。
 「地検当局が公正公平な捜査を行った結果だからシロだ」云々。国策捜査だとか、あれほど敵対感情をむき出しにしていたのに、都合のよい話ではないか。
 はっきり言って、疑惑が晴れた訳ではなく、「限りなく黒に近い灰色」ということなのである。
 とりあえず秘書が責任をかぶっただけ、いわばトカゲのしっぽ切りだということは誰もが思っていることなのである。
 かつて、小沢氏が私淑した金丸信元副総理は、政治資金規正法違反に問われ、罰金20万円の略式命令を受けたことがある。
 これで一件落着かと、市民が大いに怒って、検察庁の石の看板に黄色いペンキを投げかけたことがあった。
 しかし、翌年、脱税容疑で結局、金丸氏は逮捕された。
 今回、刑事告訴した市民団体は、検察審査会に不服を申し立てている。
 まだ終っていないのだ。今後の動きに注目が集っているが、仮にこれで全て終わりなら、重ねていうが一体、正義はどこにあるのかということだ。

 ところで、検察のこの件に対する処置は、一区切りというところだが、これらの疑惑について、国会における事実究明の仕事はそっくり残っている。
 小沢一郎氏は当然、証人喚問等で国民の為に事実を明らかにすべきだが、目下、その可能性は薄い。最悪でも政治倫理審査会に出て、道義的責任や説明責任を果たすべきなのだが・・・。
 なによりも驚かされたのは、石川知裕議員自身の発言だ。
 逮捕され起訴されたら、まずは議員辞職が当然のことである。
 ところが、本人は辞職はしないと記者会見で語っている。
 「与えられた職責を全うしたい」と、例の如く似たようなセリフだ。彼にとって、「与えられた職責を全うする」ということは責任をとって辞めるということでしかない。
 親分が親分だから子分まで開き直り、厚顔無恥も甚だしい。
 当然のことながら自民党は石川議員の議員辞職勧告決議案の採決を求めているが、民主党は数の力でこれを拒んでいる。これでは国会の倫理観ゼロではないか。

 民主党内には勿論、小沢氏と距離をおく議員もいる。特に七奉行といわれる面々で、例えば前原誠司国交大臣、仙石由人国家戦略担当大臣、枝野幸男行政刷新大臣、野田佳彦財務副大臣らだ。
 前原氏は、「われわれは厳しく自浄努力を発揮していかなければならない」と発言していたし、枝野氏は「私達の目指す政治を実行するためにけじめをつけて頂かないといけない」と、明確に言っていた。
 ところが、一転不起訴となると、一斉にだんまりを決め込んで一気にトーンダウンした。野田氏などは、「前より説明責任を意欲的、スピーディに果たしている」と、逆に小沢氏を持ち上げる始末だ。
 更に、なんと鳩山首相は、非小沢系の急先鋒の枝野幸男氏を行政刷新大臣に起用した。
 小沢氏の幹事長続投を積極的に支持して、まさにKYといわれる首相は、これで反小沢の前原氏、仙石氏に次いで枝野氏を閣内に取り込む結果となった。批判勢力は、物言えば唇寒しで、じっと静観するばかりだ。もはや民主党内で、小沢批判の声は全くといってよい程無くなった。
 150人といわれる小沢支持派を背景に、これで怖いものなし、すっかり居座って、あらゆる権力を幹事長室に集めて、ますます独裁体制をつくりあげていくことになる。一体、それでよいのだろうか。
 目下、国民の「小沢やめろコール」は、70%と非常に高い。小沢氏はこの声に謙虚に耳を傾けて、自身の出処進退を判断すべきだと私は思っている。
 平家物語に、「おごれる人も久しからず、ただ春の世の夢のごとし、たけき者も遂に滅び、偏に風の前の塵に同じ・・・」とある。
 正直、小沢氏のこれからは分からない。しかし、はっきり分かっていることは、「政治は国家国民のもの」ということだ。
 1人の政治家の誤った去就で、国や国民の行方が左右されてはならない。日本の将来に断じて過恨を残さないように、みんなで声を高めていかなければならないと思っている。