言いたい放題 第27号 「鳩山内閣、虚飾の予算案」

 鳩山政権の初仕事ともいうべき、来年度の予算案が決定した。
 実に92兆3000億円という過去最大のバラマキ予算だ。
 予算案が、なんでこんなに大きくなったかといえば、民主党主導の各省庁からの概算要求額が、無責任にふくれあがったからだ。
 当初、鳩山首相は、各大臣に対し、「要求大臣にならず査定大臣になれ」とハッパをかけた。
 しかし、経験の少ない閣僚達だけに、いつの間にか各省庁の役人に振り回され、各省庁の立場を主張し、民主党が一番否定した、省庁の声を代弁する族議員に自らなってしまったのだ。
 すでに例の仕分作業の後、これに不満をとなえる大臣や副大臣の発言が目立ち、結果次々と再修正となった。
 われわれの時代は、省庁の概算要求の際、あらかじめ上限を決めていた。これをシーリング(概算要求基準)と呼んでいた。予算作成上のけじめであったのだが、民主党はこれをあっさりと撤廃してしまった。まさにそれが迷走のはじまりであった。
 自ら無駄を省き、本当に必要な予算をつくることを前提としていたのに、それが出来ない大臣等の未熟さが、今回の膨大な予算案になってしまったのだ。
 もっとも、あの仕分け作業も、鳴りもの入りで大いに話題にはなったが、3兆円の削減目標とは大差の、わずか6770億円という有様だった。
 彼らが言う程、実際には無駄は無かったということなのか。
 一応、今回は、後述するが土地改良事業予算を大幅に削り、これらを加えて約1兆円をはじき出したことにはなっている。
 元々、民主党は、一般会計と特別会計を見直せば、10兆円や20兆円の財源は簡単に確保できると言っていた。
 10兆円から20兆円とは、随分いい加減な、大雑把な話だ。そんなことは出来る筈がないと、私は選挙中言い続けていた。
 今の状況から計算すれば、彼らの公約にある「政権奪取4年後には、年間17兆円近い財源を捻出する」という話などは、全くの嘘っぱちというべきなのである。

 今、鳩山不況といわれているが、一番大切なことは、なんといっても景気の回復だが、これに対する政策はほとんど見られない。
 「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズを具体化したというが、不況が一層深刻になれば、苦しむのはその人々である。
 景気回復に速効性のある公共事業は、18.3%(1兆3,000億円)も削られた。
 われわれの時代も、公共事業を無責任に増やした訳ではない。厳密に検討もし、例えば小泉政権の時代の2002年度は、当初予算で10.7%削減したこともあった。
 しかし、今回はそれに比べてもあまりにも削減幅が大きい。
 道路や港湾など25%削減は、特に地方に今後、大きな不安をもたらし、不況に拍車をかけるのではないかと心配である。
 前原誠司国土交通大臣は、国と38道府県が進めているダム事業のうち、ダム本体に着工していないダム事業を凍結すると、同日発表した。
 ダム本体の工事に入っていなくても、道府県はすでに、様々な面で資金を投じている。請負契約を可決した県や、入札を始めているところもある。仮に今後、国の補助金が出ないとなれば、恐らく大きな打撃となる。何よりも不況マインドが確実に広がっていく。
 前原大臣は就任時、「道府県が主体となって進めるダムは知事の意向を尊重する」と語っていた。いつの間に考えが変わったのか、一転、見直しでは、地方への配慮があまりにも無さ過ぎるではないか。

 確かに社会保障費は増え27兆2,686億円となり、各省庁が政策の為に使う一般歳出の半分を初めて超えた。
 一見いいことのように見えるが、毎年1兆円規模で増える社会保障関係費をどう賄うかにはふれていない。財源の裏付けがなければ、他の分野で逆に国民生活を圧迫し、弱者は一層苦労することになるのだ。
 この中には、例の子ども手当等があるが、よく見ると当初の主張とはかなり異なっている。
 本来、民主党の公約は、われわれが実施していた児童手当を廃止して、新たに子供手当という新制度を国が行うということであった。しかし、いつの間にか、地方自治体や企業にまで負担させるということになってしまった。
 これでは、新しい政策ではなしに、旧来の児童手当を残し、そこに、上乗せしたに過ぎないではないか。
 しかも今回は半分だが、5兆5000億円もかかる筈の次年度以降の仕組みについては何も決まっていないのだ。
 一方、15歳以下の子供を持つ世帯が対象の扶養控除(38万円)が2011年1月、住民税(33万円)が2012年6月から廃止される。
 高校無償化についてもそうだ。公立高校の授業料は無償だが、私立校に通わせる低所得者層向けの上乗せ分は、当初予定の半額になった。
 その上、高校生を持つ世帯を対象とする所得税と住民税の優遇措置は圧縮された、これでは逆に増税となってしまったではないか。

 一般会計は過去最大となったが、財源は税収が驚くほど落ち込んだ為、それ以外の44兆円に及ぶ国債発行等で賄うことになった。
 マニフェストにとらわれて、歳出は増え、一方で、国債は際限なく益々最悪の増加をたどる。戦後初めて、国債発行額が税収を上回った。公約優先借金頼みである。
 政権公約の目玉の子供手当や、高校実質無償化は、全て国債という名の借金の中に残るのだから、今の子供達が成長した時、これを払わなければならない訳で、とんでもない政治のごまかしなのだ。

 ついに2010年度末の国債残高は約637兆円になり、これは来年度の税収見込みの(37兆円)なんと17年分になる。国民一人あたり500万円に近い借金で、将来世代へのツケは膨らむ一方なのである。
 OECD(経済協力開発機構)が発表した中で、日本の債務はGDP比197%とある。
 びっくりする数字だが、今まで、日本の場合、他国と比べて資金繰りに苦労しないで来ている。
 それは、輸出と海外投資で稼ぐ経営黒字を背景に、貯蓄が国の借金を吸収してきたからだ。なにしろ個人金融資産は1400兆円といわれているのだ。
 しかし、今や高齢化で貯蓄は減る一方だし、財政規律を全く考えない政治では、破綻はもう目に見えている。国と地方の長期債務は合わせて862兆円、財政再建は待ったなしなのだ。
 増え続ける社会保障費等、財源を生み出す唯一最有力な財源は消費税だが、次の選挙までは手を触れないという。
 国民に現状を丁寧に説明し、共に痛みを分かち合う政治を行うことも、大切な常道だと思うのだが・・・。

 今回の予算編成の中で、最も気になるのは、来年の参議院選挙対策が目立っていることである。
 小沢幹事長は、党の重点要望を鳩山首相に突きつけたが、その中味は、自民党支持の業界団体の露骨な揺さぶりであった。
 一番目立った例が、野中広務氏が会長をつとめる全国土地改良事業団体連合会への対応だ。
 小沢氏は、土地改良事業予算を半減させよと注文をつけたのだ。
 野中氏は、この団体から来年参議院に出る予定者を降ろすことまでして、小沢さんに陳情を申し入れたが、勿論門前払い、会うことも出来なかった。
 今回の予算案でバッサリと大幅に切られてしまった。前述の事業仕分け削減分はわずか6770億円だったのが、予算案で1兆円に膨れあがったのは、この分が加算されたからである。
 野中氏はかつて私の盟友だった。今更、陳情などに行かなければ良かったのに、と残念に思っている。
 建設業界や農業団体に対しては、新たに交付金制度を打ち出し、一兆円あまりのお金の配分先を民主党で決めるという。
 さきに族議員をつくらないためにと称して、全ての陳情は幹事長室で一元化させると決めたが、こうして幹事長権限は限りなく肥大になって、独裁体制となっていくこと必定だ。
 かつての自民党では考えられないことであった。
 今回発表された予算案は、あまりに問題が多いものであった。しかも、鳩山首相は、前日まで自身の献金、脱税疑惑で身動きとれず、みんな小沢氏任せであった。
 一体これからの日本経済はどうなっていくのか、私は日本の行方が心配でならない。