12月15日民主党政権は、普天間飛行場移設問題先送りを決めた。
 迷走を続けて来た鳩山由紀夫首相だったが、まさかと私はあきれている。しかも移転先の候補地も、期日さえ含めて、考え決めるのは来年以降にしますというのだから、あまりに無責任としか言いようがない。
 あるマスコミは、「決定しないことを決めたでは、シャレにもならない」と書いたが、全くその通りだ。

 そもそも、1996年4月、普天間飛行場は全面的に返還すると日米で合意した。以来13年の曲折を経て、2006年ようやく名護市辺野古沿岸部(キャンプ・シュワブ)という現行案が決まったのである。
 ところが、民主党は先の選挙で勝つために、県外あるいは国外移設を公約にし、これを追い風にして結果的には候補者全員を当選させた。
 当然、もしかしたらという期待を県民が抱くようになり、益々混乱を招く結果となった。

 政府内もバラバラで、北澤俊美防衛大臣は、日米合意案に賛成といい、岡田克也外相は嘉手納統合案を私見といって表明、肝心の鳩山首相は何度もブレていた。
 その上、社民党の福島瑞穂党首は、県外移設を主張し、自分の意思が通らない場合は、連立離脱も辞さずと脅しをかけた。
 国会議員はわずか12名(参議院5)の少数党ではないか。いくら参議院で過半数にわずか1票足りないとはいえ、振りまわされるとは情けない。大臣になって喜々としている福島党首は、どんなことがあっても大臣を辞める気など毛頭無いことは、誰が見たって分かることではないか。

 そもそも辺野古案は、沖縄県との合意にもう一息といわれていた。現に、辺野古には下士官用宿舎を建造中だし、立体駐車場の工事も進んでいる。
 しかも、不思議なことに、振り出しに戻ったはずなのに、政府は2010年度予算案に、米軍再編関連経費を引き続き計上すると言っているのだ。同時に、この地域の環境影響評価も続けるというのだ。
 米国の「現行計画以外に案はない、一日も早く決着させたい」との強硬な姿勢の前に、少しでも反発を招かないようにと、現行案の断念ではないとの姿勢を一方で示そうとしているからだ。
 しかし、そんな姑息な態度など、相手は先刻御承知で、直ちに見透かされているのだ。
 先の首脳会議で、鳩山首相は、オバマ大統領に、「私を信じて」と言った。当初、相手は日米合意を履行するものと受けとめていたが、その後のずるずる決意を先送りする動きを見ながら、口先ばかりでなんと優柔不断な対応かとあきれているのだ。
 鳩山首相の対応は、大統領と沖縄県民に対する背信行為だ。
 アメリカ国内では、日本に対する不信感がつのっている。すでに、米海兵隊普天間飛行場の移設問題を協議する閣僚級の作業部会は中断することになったし、来年の日米安全保障条約改定50周年に向けて、日米関係を一層深化させるための日米協議も、かの国から延期しようと通告される始末である。

 かつて鳩山氏は、文藝春秋に「『常時駐留なき安保』への転換を目指し、対等なパートナーシップとして深化させていく」と書いた。
 しかし、わが国を如何に守るかの具体的な内容にはその時も今も触れていない。
 評論家の櫻井よしこ女史が指摘するように、「極東有事が起きない北東アジア情勢をつくっていく」「そのような条件は次第に生まれつつある」と、現状認識がゼロの主張を行っている。
 一体どこに、何事も起きない状況が整いつつあるというのだろうか。北朝鮮は、日本を射程距離におくミサイル・ノドンを200基も日本に向けて常時配置しているといわれている。
 核開発を進め、仮に核弾頭を積載して日本に打ち込めば、10分以内に着弾し、日本は一瞬にして壊滅するのだ。核兵器でなくとも細菌兵器でも同じ事である。
 中国だって軍事大国を目指して、着々と軍事力を増強しつつあるではないか。
 戦後、日本は平和であり続けて来たから、よもや戦争など起こる筈もないと信じきってしまっている。
 まさに平和ボケだ。

 第二次大戦後世界の主要国の中で、戦争に巻き込まれなかった国は日本だけだ。
 それは、何よりも日米安保条約があったおかげで、これを選択し、維持させ続けた自民党政権の成果といえる。
 アメリカから見れば、有事が起こればアメリカ国民の血を流してまで日本を守ろうとするのが日米安保条約だ。これは全く不平等だという考えを持つ人も多いが、当然だ。
 せめて、日米でしっかり協議し、基地や日本からの予算も含めて、最小限米国が納得する形を維持していかなければならない。
 勿論、沖縄県民の御苦労も充分に忖度(そんたく)することは当然で、だからこそ、13年もかけて必死の努力を重ね一応日米合意案が生まれたのだ。

 何も具体性のない先延ばしは、今までの行動計画を事実上ストップさせることになる。
 新しい移設案などどう考えてもすぐに出てくるとは思えない。仮にあったとしても相当な時間が掛かることは必定である。
 とすれば、普天間飛行場は現状のまま長期間存続し、逆に固定化する可能性も高い。
 それは沖縄県の人々が、負担と苦労を引き続き背負っていくということで、そんなことは決して許されることではない。

 迷走を続ける鳩山首相、何よりも混乱続きの民主党政権に、これ以上、期待することは絶対に出来ない。
 沖縄基地問題の目的なき先送り決定に怒りをもって抗議し、国民の正しい理解と選択を求めたいと切に願っている。