言いたい放題 第23号 「小沢幹事長暴言」

 なんとあきれ果てた小沢幹事長の態度だろうか。まるで「自分が正義、最高権力者、俺にさからう者は許さない」と言わんばかりの語気を荒げた記者会見だった。
 結局、天皇陛下と習近平国家副主席の会見は彼の主張通り実施されたが、内外の批判が高まる中、独自の憲法論理で自分の正当性を押し通そうとしていたのだ。

 彼の論理の誤りをあげれば、まず第1に、天皇陛下の行為は全て内閣の助言と承認で行われる、と、そればかりを強調している点だ。一体内閣は天皇の行為に関して、何でも出来ると考えているのだろか。時の政権といえども、天皇の政治利用は許されないことは、当たり前のことではないか。
 憲法第3条には、確かに国事に関する天皇の行為に、内閣の助言と承認を必要とすると書かれているが、一方、第7条で、その国事行為とは何か10項目にわたってきちんと示されている。
 国会の招集や、衆議院解散、外国の大使や公使の接受などだが、その中に、外国要人との引見については一行も書かれていない。
 天皇が象徴としての地位に基づいて、国際親善など、公的立場で取り組む行為は「公的行為」といわれるものであって、憲法でいう「国事行為」とは異なるものなのだ。このことを小沢氏は知っているのか知らないのか、あるいは混同しているのか故意なのか。いずれにしても、選挙で圧勝したのだから、何でも通用するとは一方的でお粗末な論法である。

 第2に、「陛下の体調がすぐれないなら、優位性の低い行事をお休みになればよい」と発言していることだ。
 天皇の行為で、最も重要なことは、国に対しても人に対しても、如何に公平性を貫くかということである。
 第一、小沢氏の言う、優位性の高い低いは、一体誰がどう判断するというのだろうか。
 鳩山首相は、「最も重要な国だから」とか、「懸案のある国だから」と、度々発言しているが、今後、外国から「うちは政治的に重要ではないのか」と言われたら、なんと答えるつもりなのか。それこそ日本の信が問われるではないか。
 そして、何よりも小沢氏の発言を聞いていると、天皇陛下に対するいたわりや、敬意がほとんど見られない。一ヶ月ルールの背景には、天皇の健康問題があるのだということも忘れてはならないのだ。
 いやしくも、天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくものと憲法にうたっている。礼節を知らぬ者に政治家たる資格はない。

 第3は、小沢氏はなんと天皇の御気持まで勝手に代弁したことである。
 「天皇陛下御自身に聞いてみたら、『手違いで遅れたのかもしれない、会いましょう』と必ずおっしゃると思う」と自分勝手な判断を公式の記者会見で発言しているのだ。
 一方で、天皇は、自身の意思に関わらず、内閣の言う通り行動すべきと主張しながら、今度は、天皇の意思を尊重するかのごとき発言をしているが、とんでもない大矛盾ではないのか。
 岡田外務大臣が、天皇のお言葉に、御自身の思いをもっと出してはどうかと語り、大きな反発を集めたことがあったが、民主党の幹部達は、憲法のなんたるかを全く知らないようだ。

 わずかな救いは、民主党の中にも見識を持った人が少しはいるということだ。
 福山哲郎外務副大臣は14日の定例記者会見で、「宮内庁の意向や陛下の健康状態もあることなので、今回だけ例外という対処にした方がいい」と暗に権力の自制を語っていた。
 又、渡辺周総務副大臣は、テレビ朝日の番組で「今からでも会見をやめられるなら、やめた方がいい。天皇陛下にこういう形で要請したことには党内でもかなり当惑の思いがある」と話していた。
 今の小沢独裁権力下の民主党で、このように正論を語るには勇気のいることだと思うが、こうした人達がもっと台頭して欲しいものと強く思った。
 ちなみに渡辺周氏は、早稲田大学のはるか後輩の48歳で、私がテロ対策特別委員長時代の野党理事の1人であった。
 立場は全く別であったが、折々の議論の中で、キラリと光る言葉があって、私は秘かに期待している代議士なのだ。
 さきの私の旅行会を磯部ガーデンホテルで行った時、なんと偶然、彼の後援会も2日間同じホテルで600人を超える後援者を集めて旅行会を開催していた。
 ホテルで会う機会はなかったが、彼は名刺に一筆挨拶を書いて、ホテルの支配人に預けていた。
 「いい人だな」と改めて好感を持ったものであった。

 さて、第4にけしからんことは、「宮内庁長官は辞任すべきだ」とまで語ったことである。
 一ヶ月ルールは何も法律で決まっている訳ではないとして、「羽毛田長官がどうしても反対というなら辞表を提出した後に言うべきだ」と怒りもあらわにテレビの前で語ったのだ。
 「政府の一部局の一職員が、内閣の方針について、どうだこうだと言うのは、日本憲法や民主主義というものを理解していない者の発言としか思えない」とも言う。
 前述のように憲法を自分の都合の良いようにねじ曲げ、民主主義のルールに反して政治家の強権を発動しているのは、小沢氏本人ではないか。
 この言葉は、そっくり小沢氏に返したいと思う。
 もう一度憲法をよく読み、民主主義を学ぶべきは、小沢氏及び鳩山首相の方である。
 「一部局の一職員が」とはきすてて言う小沢氏の一番言いたい言葉は「たかがちんぴら小役人どもに」ということであろう。その傲慢な無礼な態度から明らかに見えてくるではないか。
 私は40数年、政治の道を歩んできて、特に党の三役や大臣を何度も経験してきて、役人の力量というものを熟知している。
 ほとんどの人が東大出身の有能な人たちで、各々、国家社会の為に働こうと志を持ってこの世界に入って来ている。
 彼らの教養や知識、あるいは専門的な分野での博学ぶりは、小沢氏は勿論、昨今当選したそこいらの若い政治家達の及ぶところではない。
 問題は、政治家のように直接国民に触れ合っていないことや、地域の実情を知らないといった面があることだ。とかく物事を机の上で、あるいは頭の中で考え判断しようという傾向にあるが、これは彼らの弱点だ。
 だから、昔から、優れた政治家は、役人の長所と短所を見極めて、彼らを、言葉は悪いがしっかりと使いこなして来たのである。
 国家国民の為という、政治家も役人も共通の志を持っているのだから、これがどのように協調し努力しあっていけるかが肝要なのだ。
 「政治主導」ということは、誤りではないのだが、そのことを強調するあまり、ひたすら官僚批判に終始し、あたかもこの国を悪くしているのは役人であるかの如き偏見をつくり出してはならないのである。
 皇室の将来を考え、天皇の御健康を思い、天皇の国事行為のなんたるかを誰よりも専門的に学んできたのは宮内庁長官である。
 こうした人が職を賭して苦言を呈したものを、小役人扱いし、悪し様にけなし、果ては辞めろといわんばかりの発言は、まさに政治家の思い上がりとしかいいようがない。
 宮内庁には1,000以上のメールや電話が殺到したようだが、このほとんどは、羽毛田氏擁護の声であったという。国民の正しい判断に救われた思いである。
 私は、田野瀬自民党総務会長に直ちに連絡し、党で彼をしっかり守るべきだと強く提言した。
 悪しき慣例を絶対につくってはならないと思うからである。