11月11日から、民主党の看板行事、行政刷新会議の事業仕分け作業が始まって、テレビ新聞は大騒ぎである。
 来年度予算の概算要求額が、実に95兆円という膨大なものになって世間の批判を集めた。その中の無駄を如何に削減するかというテーマで、民間有識者56人を含む計80人が3班に分かれて、見直しの方向性を判断する為の会である。
 従来は、財務省主計局を中心に、各省庁の代表と協議を重ね、査定を行って来たのだが、今回は、全面公開で、会場の国立印刷局市ヶ谷センターは、一般人や記者も含めて実に500人が傍聴する満員の盛況である。

 テレビに映る光景を見て、私は本当にびっくりした。
 まるで、人民裁判か東京裁判を思わせる状況で、説明する役人は悪代官、追求する人々は正義の味方といった風情なのだ。おまけに傍聴人から、「聞こえない」等の野次や、時に怒声まであった。
 全てを国民の前に明らかにすることは、確かに一見民主的に思えるが、予算についての協議はかなり専門的な面が多く、よほど経験と知識がなければ難しい。
 舌鋒鋭い民主党議員の、質問というより追求は、確かに正義の味方然として、カッコはいい。しかし、傍聴人やテレビ、新聞、更にその向うの国民の目を意識してのパフォーマーが多くて、あまり気分の良いものではなかった。

 一体、どれだけの調査と知識をもって発言しているのだろうか。
 そもそも、今、削減を求めている概算要求の中味は、新政権、つまり民主党の大臣・副大臣・政務官によって無駄を省くことを前提に、精査されてまとめられたものではなかったのか。
 それを無駄が多いと、民主党議員を中心にばっさばっさと削っていくのだから、なんとも違和感があって、まさにこれは内部矛盾と言うべきではないのだろうか。
 事業仕分け対象は447事業、まとめて216項目を整理し精査するという。
 だが、この数は全体でみればわずか15%に過ぎない。
 一体、誰が、どのような理由で、査定対象をこのようにしぼったのだろうか。
 すでに多くの指摘があるように、これは財務省主計局の判断で、そうさせたのは現政権の丸投げに他ならない。
 財務省自身の査定対象が、他の省庁と較べて、極端に少ないのも、なるほどとうなずけるように私には思える。
 仕分け作業に入る前に、論点整理と称して主計局職員の事前説明が行われる。これでは従来からの官僚主導と変わらない。
 更に気になるのは、当初明らかにされていた仕分け人、民主党議員37人が、いつの間にか7人に縮小されたことである。
 事前に知らされていなかったことから、小沢幹事長の逆鱗に触れた。仙谷由人大臣があわてて何度も頭を下げて、謝り続けた結果の人事だと報道されている。
 まさに小沢独裁政権である。
 亀井国民新党代表は、仕分け人の中に小泉政権下の金融庁顧問や、モルガンスタンレー証券の外国人まで居るのはおかしいと、差し替えを求めた。当然のことである。
 一体、この人達は、如何なる基準で、誰が選んだのか、全くもって不明朗な話なのである。
 しかも、仕分け人についての法的根拠は全くない。そんな人達が、わずか各1時間単位の中で、次々と予算を削っていくことが一体許されるのかとの声も多い。

 今回の仕分け人の中で、一番目立つヒロインは言うまでもなく、蓮舫参議院議員で、仕分けの女王と言われている。
 元クラリオンガール、元キャスター、日本に帰化した人だ(そのことを批判する気はない)。
 連日、速射砲のような舌鋒鋭い追求だ。週刊文春(11月26日号)のグラビアで「なんだか嫌な感じ」と書かれているが同感だ。
 この小娘、どれだけ知っているのかと言う人も多い。
 文部科学省の独立行政法人、理化学研究所に委託している次世代スーパーコンピューターについて、「何故世界一でなければならないの」との質問には恐れ入った。
 秒速1兆5,000億回以上の計算が可能なこの大型計算機は、航空機から医療まで技術的開発に欠かせないもので、その研究は日本が世界の中で一歩リードしている。
 各国がしのぎを削っているものを、「費用対効果が不透明」と、予算を事実上凍結させるなど、断じてあってはならないことなのだ。
 ノーベル化学賞の野依良治博士は、「これが無駄と言われれば、資源の無い日本の生きる道は無い。世界一を目指さないと、たちまち中国等に追い越され、やがては中国から輸入するようになる」と嘆いていた。
 はっきりいって、科学や教育など、元々、費用対効果の物指しでははかり切れるものではないのである。

 シルバー人材センターも削減の対象となってしまった。
 昭和55年、高齢者に対する職業機会を提供するシルバーセンターを統一し、これを育成する自治体に対し、国庫補助を開始した。
 今では、加入者数76万人を超え、1人あたり月平均3万7,000円程度の収入を得て、飛躍的に発展した。リタイヤした年配者が、どう社会参加出来るか、生きがいの問題も含めて大事なテーマを示唆している。
 例の後期高齢者問題で、年寄りを馬鹿にするのかと自民党政権は轟々たる批判を浴びたが、今回の処置で同様の声が多い。
 実は、当時、私は労働政務次官であった。この運動をスタート時から積極的にすすめて来た立場であったから、格別の思いを持っている。
 一体、何を考えているのだろうか。
 全体的に他の事業についても、天下り人事のことが、かなり批判されている。確かにこれは問題で、早急な改善は必要だ。しかし、そのことと本体の必要性を混同してはならない。損得勘定だけでなく、国として為さねばならないことは、当然続けるべきなのである。

 鳩山政権誕生から2ヶ月、最近の支持率は、ほぼ10%低下している。
 相次ぐ政策のブレ、マニフェストの変更、各閣僚の勝手な発言、その上、鳩山氏自身の政治資金疑惑と、このところ鳩山政権の問題点はあまりに多い。鳩山不況といわれるように、景気対策の具体的なものも見えない。本来なら、もっと下落して当然なのだ。
 朝日新聞の調査によると、今回の仕分けイベントは、評価76%と高く、大向こうの人気になっているようだ。鳩山政権支持率の下支えになっていることは確かだ。

 今までの官僚による不透明な予算づくり、無駄の多い旧来のあり方は、国民の政治や行政に対する大きな不信感の基になっている。
 これを排除して、国民の納得出来る状況をつくることは急務だ。仕分け作業についての国民の大きな注目は、裏返せば、国政への不信なのだ。
 だから私も、仕分け作業が全く意味がないとは思っていない。新しいこころみとして一定の評価はするが、あまりに過大な印象や期待を持たれることに危惧を覚えるのだ。
 本来、こうした仕事をやるべき場所は国会なのである。
 すでに、各省庁の大臣等三役は、今回の仕分け作業に批判的で、巻き返し作戦と思われる発言が目立ちはじめている。
 その背景に官僚の意思があるとすれば、政権が代わって、政治主導といくら言っても、口先だけのことにしかならない。
 これから始まる新年度の予算編成で、どのようになっていくのか、ここはじっくり見守る必要があると思っている。