――予算と財政の不安――
 大島理森自民党幹事長の質問の中で、次第に明らかになってきたのが、財政問題での鳩山政権の弱点である。
 当初、民主党は国の総予算207兆円の「全面組み替え」を政権公約としてきた。そのスタートとなるべき今回の概算要求を見ると、なんとわれわれがつくったものの、わずか2%しか削減されていない。その上にマニフェスト分をのせただけの能のないものなのだ。
 鳩山氏は、又もや、時間的制約があるからとか、旧政権の要求を100%無視することも出来ないし、と言葉を濁し、これからを見て下さいの一点張りである。
 全面組み替えと、わずか2%削減では、あまりに落差があり過ぎて、こういうのを羊頭狗肉というのではないか。

 2010年度の概算要求額は、実に95兆380億円という過去最大のものとなっている。こんなにふくれあがったのは、ひとつにはシーリング(概算要求基準)を示さなかったことにある。一定の押さえをかけないと、各省庁からの要求は限りなく増えていくのは当たり前だ。
 マニフェストに書かれているからと、子供手当の2兆2554億円をはじめ、高速道路の無料化、高校授業料無償化、農家の個別所得保障等、大手をふって予算に積み上げていく。財政事情はこの際関係ないといった具合である。

 第2に、財政規律を如何に守り、国債発行をどう押さえるかという、財政再建の道筋が全く示されていないことだ。
 菅直人国家戦略相は、新たな財政再建目標は当面作成しないと平然と言っている。閑職大臣といわれて存在感が薄い大臣なのだから、せめてこのくらいの対応には力を注ぐべきと思うのだが、予算委員会では、もっぱら居眠りをきめこんでいた。
 財政再建の方針を示さなければ予算要求はふくらみ続ける。脱官僚を標榜する内閣とは名ばかりで、各々の役所の要求をよく分からない大臣は、そのまま概算要求に盛り込んで、必死であった。
 これでは政権交代したと言っても何も変る筈がない。

 第3は指令塔が不在という点である。
 前述のように、本来中心となっていい菅大臣が動かず、国家戦略室はほとんど機能していない。
 平野博文官房長官は労働組合出身で、予算編成など経験が皆無で、とてもおぼつかない。
 鳩山由紀夫総理は、肝心の時に、ほとんど連日外遊で、夫人と手をつないで、国費を使ってのハネムーン気どりだ。
 小沢一郎幹事長は、相変わらず党内人事の掌握と選挙一筋で明け暮れている。これではまともな予算編成は不可能だ。

 菅大臣は「来年度の予算については、時間的な経緯ありまして(政権を得たばかりで)、単年度として決めていく。23年度からは複数年度予算を想定して、3年間の中期展望の中で、財政のフレームをつくって、その中で中期的な財政規律をきちっとしていこうと閣議で決定しました」と答弁した。
 なんとものんびりした話ではないか。
 今回の概算要求と新年度の予算案では、何も出来ませんが、再来年からの分はナントカしますということで、その場しのぎの逃げ口上としか聞こえなかった。
 政権は突然降って湧いたのではない。ある程度予想されていたし、影の内閣もあって、相当勉強していた筈である。その研究の成果が、本来マニフェストとしてまとめられたのではないか。「政権を持って日がないから、全てはこれからです」では無責任だ。

 これからの財政事情を考えると、本当に深刻だと私は思っている。
 なによりも景気が低迷し続けて、法人税や消費税が減り続けている。
 今年の税収は間違いなく40兆円を割り込んでいく、その上、新政権では、ガソリン税等の暫定税率を廃止する。こんな不況の時代に既存の税を廃止して、地方合わせて確実に入るお金を捨てる手はない。しめて2兆5千億円、消費税なら1%上昇以上だ。
 本来なら消費税という安定財源確保が必要だが、これも4年間はやりませんという。
 余程の大なたをふって、予算要求額を切り詰めていかなければならないが、今の状況では、とても出来そうにない。
 結局は、大幅国債発行とならざるを得なくなるが、それもかつてない、税収を上まわる額になるのではないかと今、私は心配でたまらない。
 巷では早くも鳩山不況という声が出ているが、国会答弁を見る限り、これが現実味を帯びてくるのではないかと、一層、不安な思いにかられたのである。