第764回「超満員の政経塾」

 深谷隆司の言いたい放題第764回

 「超満員の政経塾」

 Tokyo自民党政経塾は13年目を迎え、5月5日に開講した。

 毎年100人の定員のところ常に180人以上の塾生が通って盛況だったが、なんと今年は230人を越える超満員となった。来年の地方選挙に向けて、自民党公認になる新人候補者は塾に通うことが必須とされているから、これから更に増えることになる。

 党本部の一番大きな部屋を使っているが、入りきれないので縦に使うことになったが、それでもぎっしりだ。

 嬉しくて私も、塾長代行の小田全宏君も講義に思わず熱が入る。

 第一回は愛国心を説き、6月19日の専門コースでは、私自身、どんな歩みで政治家になったか、折々の背景になる政治情勢も含めて語った。

 戦争体験や、終戦後の生々しい日本の状況など、じかに語れる人は、もうだんだん居なくなった。

 私は稀少な「語り部」、これからも過ぎ去った時代のあれこれを若い人達に語り伝えていかなければならない。


 3年目になる「温故知新塾」は18日定例の講義を行なったが、日本の存亡につながりかねない「米朝会談の実体」を詳細語った。

 こんな危機的状況の中、国会は相変わらず「モリカケ問題」で不毛の議論を続けている。国民は明らかに食傷気味なのに、一部マスコミも便乗して「安倍叩き」で終始しているように見える。1年以上かけて何か不正が見つかったわけでもない。「言った言わない」という小学生並みの議論だ。

 5月31日には野党4党首による「党首討論」が1年半ぶりに行われたが、立憲民主党枝野代表も共産党の志位委員長もモリカケ問題だった。


 党首討論の正式名は「国家基本政策委員会合同審査会」といい、平成17年(2005年)11月からは私も委員長をつとめた。

 基本ルールは文字通り「国家の基本政策に関わる事項」を扱うと定めていて、本来の目的は党首らが政策や見解を掲げ、国民の前で「政権担当能力を競い合う」議論をしなければならないのだ。だから普通の委員会と違い、首相も逆質問が出来るようになっている。

 まさに安全保障問題など今日の喫緊のテーマが中心でなければならないのに、そんなことは意に介さぬ姿勢に、私は怒りさえ覚えた。


 余談だが、1999年11月の第146国会で党首討論が始めて行われた時、登壇したのは小渕恵三総理、民主党鳩山由紀夫氏、共産党の不破哲三氏、社会党の土井たか子氏であった。

 その時の鳩山氏の質問冒頭は「今朝自分は温かいピザを食べたが、総理はなにを食べましたか」という馬鹿馬鹿しいものであった。

 総理は「いつものように日本食です。オルブライト国務長官は冷めたピザも美味しいと言ってました」と答えた。

 早速、ニューヨークタイムスは小渕総理を「冷めたピザ」と揶揄した。

 日本ではなぜか「ピザおじさん」とうけて、小渕総理も記者団に温かいピザをユーモアで出しり、米誌の表紙にもピザを持って登場してりしたものだ。

 竹下総理の官房長官として「平成」を発表、「平成おじさん」と親しまれたこともあったが、突然脳梗塞で亡くなった。私の通産大臣時代のことで、悲しい想い出の一つとして鮮明に覚えている。


 やっぱり私は生き証人か。これからも元気なかぎり「語り部」として若い人達に、ありのままを伝え、現状を憂いながら獅子吼していかねばなるまいと改めて思うのであった。


第763回「実りなき世界最大のショー」

 深谷隆司の言いたい放題第763回

 「実りなき世界最大のショー」

 シンガポールで開かれたトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の首脳会談が、まさに世界注視の下実現した。

 史上初めての米朝首脳会談は結構な事だが、案の定というか、中身は実りのないもので終わった。いや、むしろ禍根を残すものとなった。

 共同声明で金氏は「朝鮮半島の完全な非核化に取り組む」と約束する一方、トランプ氏は「北朝鮮体制の安全を保証する」と表明した。しかし、最も大事な「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の文言はなかった。

 北朝鮮は2005年の6カ国協議の声明で、「朝鮮半島非核化のため、全ての核兵器と核兵器計画の放棄」を約束したが、これを平然と反故にして核開発を進めてきた。もうだまされないぞというのが私の率直な思いである。

 トランプ氏は費用の節約になるからと、米韓合同演習の中止を表明し、記者会見では在韓米軍の撤退まで言及した。これは今、絶対言ってはならない事である。

 中国が長年求めてきたことではないか。この30年で軍事費を51倍にし、尖閣諸島奪取を窺い、南シナ海では軍事拠点化を進めている中国だ。きっとほくそ笑んでいるに違いない。

 軍事的選択肢をちらつかせながら北朝鮮に最大の圧力をかけてきた路線をトランプ氏はいとも簡単に変更してしまったのだ。

 文大統領も北朝鮮に前のめりになっている。韓朝両国が連邦的になって、親中反日体制になったら、いわば38度線が対馬海峡になったようなもので、日本の危機は計り知れないものとなる。トランプ氏は日米同盟関係を気にしていないのか。

 一方で「北朝鮮が米国にとって問題とならなくなるまで制裁は解除しない」とも言っている。なんだか訳がわからないが、わずかな救いなのか。

 経済支援について、トランプ氏は「日韓両国は北朝鮮を支援する用意があり、米国は支援する必要は無い」とも言った。とんでもない話で、核完全廃棄、拉致問題解決など、日本の要求が入れられないかぎり、日本はびた一文払うべきではない。

 やがて日朝首脳会談が行われる時が来る。北朝鮮は国家賠償を必ず要求すると現に主張している。朝鮮は戦勝連合国ではない。戦った敵国ではないのだから戦後賠償の責任は日本に無い。

 1965年、日韓基本条約を結んだ時、日本は戦争処理の一環として8億ドルに上る協力金を支払った。韓国予算の2,3倍強の巨額な資金、しかも53億ドルに及ぶ日本の資産も全て放棄した。「漢江の奇跡」はそこから生まれ、韓国は経済発展を遂げる事ができたのだ。

 当時、韓国は正統な朝鮮半島国家としていたため、朝鮮半島全体に対する立場で日本は臨んだ。もし北朝鮮が協力金を求めたら、韓国が処理すべき問題なのである。


 どちらにしても、今、日本は危機的状況の中にある。しかし、こんな時も日本の国会は機能していない。

 米朝首脳会談の行なわれた12日、立憲民主党など野党6党派は、カジノ法案をめぐり衆議院内閣委員長の解任決議案を出して大騒ぎである。

 「いい加減にしろ」と怒鳴りたい心境である。



第762回「役者が上、トランプ大統領」

 深谷隆司の言いたい放題第762回

 「役者が上、トランプ大統領」

 米大統領が5月24日、来月12日にシンガポールで開催予定であった米朝首脳会談の中止を決定した。途端に強気で会談中止をちらつかせていた北朝鮮が、慌てふためいて対話を請うた。金正恩委員長の委任による談話で、米朝関係改善のため首脳会談が「どれほど切実に必要か」を訴えたのだ。

 会談を通じて体制の保証を得ようとしていた金委員長が如何に困っているか本音をさらけ出していたのである。丸2日もたたないうちに金委員長と文大統領の極秘会談が開かれたが南北両首脳のあせりや危機感がうかがえる。

 トランプ大統領の怒りの背景の一つに、米国に対する公開的な悪罵がある。9日前にペンス副大統領のことを「ならず者」「人間のクズ」とまでののしって、敵対的発言を続けていた。余談だが、この地の言語文化には「伝統的に他人への悪口」が発達しているという。

 しかも米の求める条件に明確な回答がない。今までの成功例から、こうした揺さぶりで米側の譲歩を引き出せると思っていたのだ。

 トランプ氏は「過去の政権の過ちを繰り返さない」と何度も言い、会談中止で困るのは北の方であることを百も承知している。トランプ氏は「会談に成功しなければ次のステップへいく」とはっきり述べ、軍事力行使も含めてあらゆる圧力をかける決意でいる。その背景に安倍総理の確固たる支持表明があると私は思っている。

 金委員長は「いかなる核実験も必要なくなった。核実験も使命を終えた」と北東部豊渓里(ブンゲリ)の核実験場を爆破したが、6回も実験を行った用済みで不要な実験場を廃棄しただけのことではないか。

 2008年にも海外のメディアを前に寧辺(ニョンピョン)の核関連施設を爆破したが、その後も核実験を続け、昨年11月末に宣言した「国家核戦力完成」に至っている。

 トランプ発言で韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の面目丸つぶれといったところか。

 金委員長が1月の「新年の辞」で南北関係改善に意欲を示して以来、平昌五輪への北朝鮮の参加や芸術団の派遣など北朝鮮の要求を全面的に受け入れ対話に応じてきた。南北首脳会談の実現、「板門店宣言」も発表した。5月22日には訪米し、米朝首脳会談の仲介役を務め、国内の支持も80%を越えた。しかし、こうした北への異常な傾斜が大きな誤りにならないか。

 かつて金正日総書記と金大中、盧武鉉(ノムヒョン)両元大統領による2回の首脳会談で韓国は、北朝鮮に経済援助をし、核・ミサイル開発に時間を与えた。これまでのところ多くを与えずにとどまっているが、得られるだけ得て約束を守らない常套手段を忘れてはならない。

 金委員長が文大統領の会談で、「非核化への確固たる意思を示した」ことから米朝首脳会談に向けた当局者の協議が板門店で行われることになった。

 しかし、米国が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」にどこまで同意しているのかは定かでは無いようだ。

 今のところトランプ大統領の方が一枚上に見られるが、相手もしたたか、油断なく対応してもらいたいものである。日本は引き続き米国と緊密に連携していく必要がある。

 こんな重大な時期、モリカケ問題で、野党とメディアが組んでの魔女裁判、「もういい加減にしろ」と思っているのは私ひとりではあるまい・・・。


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