第1022回「大丈夫か石破政権」
深谷隆司の言いたい放題第1022回
「大丈夫か石破政権」
前にも書いたが、かつて私が衆議院テロ対策特別委員長の時代、石破氏は防衛庁長官であった。野党の質問に答えるように指名すると、彼の答弁は毎回やたらと長かった。特に得意の防衛問題になると、自ら野党の席まで近づいて、まるで授業で生徒に教えるような態度で饒舌をふるった。
はっきり言って中身はそんなに深いものではなく、誰でも分かっているような内容だから、自民党内からも不満が多かった。当然野党から激しいヤジが飛んだが、こんなに皆から顰蹙を買った答弁も珍しいと思ったものである。
その時の私の印象は「この人は周囲の動きを判断することに疎い。全体を見る目が無い。もっと言えば自分中心の独断専行タイプだな」というものであった。
「(余計なことは言わずに)質問にだけに答えなさい」と私は委員長席から何度もたしなめたものである。はっきり言って、逆にこんな危なっかしいタイプの大臣など見たことが無いとも思った。
彼は自民党の中でも、友人が少なく、同志と呼ばれる人はごくわずかしかいない。委員長席から見ていると、いつもひとりぼっちで周囲の人と語りあう場面は皆無に近かった。
彼は皆から「ケチ」といわれていた。気の毒な言われ方だと思うが、異口同音で皆がそういうのだから本当なのであろう。自分が誘った会食でもほとんどお金を払ったことが無いという。会合等が終わろうとして勘定の段になると、いつの間にかいなくなってしまうのだ。
その人が今や日本の総理大臣だ。はっきり言って私も含めて誰も予想しないことであった。それだけに大丈夫かと首をかしげる人が大半であった。
彼の下で行われた先の選挙では大敗を喫した。12年に政権に復帰して以来、自民・公明両党で過半数を割り込むのは初めてのことである。
政治とカネをめぐる自民党への批判が最大の理由だが、特に、非自民党候補者にまで2000万円の政党交付金を支出したことが致命的であった。勿論幹事長など執行部が相談して出したのであろうが、ケチと言われていた人の大盤振る舞いだから余計マイナスになったのだ。
「候補者個人に出したのではなく、支部に党勢拡大の為に出した」と必死で抗弁していたが、そんなことを信じる人がいる筈もない。要は世間の動きに鈍感なのである。
私は石破総理が予算委員会を行って、内閣の実績を積み上げた上で、来年夏に衆参同時選挙を行うのが一番いいと思っていたが、世論の動きや反応を見極めず、事を急いだ結果がこれだった。
選挙大敗の責任を追及して、安倍総理を退陣に追い込んだのは彼だったのだから、今度は自分が責任を取るべきである。しかし、一向にその気配はない。何があっても総理の座にしがみつこうとしているようで、その姿は見苦しいものがある。
折からアメリカではトランプ氏が大統領になった。海千山千の、何をしでかすかわからない大統領だ。これから、時に利害を異にするアメリカと様々な問題で渡り合っていかなければならない。
あの得体のしれない強面のトランプ氏と石破氏を並べてみると、大人と子供のように見えて心細い。政界上げて石破総理を支えないと、あの厚かましいトランプ氏にやられてしまう。
「心配でならない」、そう思うのは私一人であろうか・・・。
第1021回「第50回総選挙を終えて」
深谷隆司の言いたい放題第1021回
「第50回総選挙を終えて」
ようやく選挙が終わって、私が支えた辻清人君、鈴木隼人君、齋藤健君など全て当選してほっとしている。
今回の選挙では相変わらず自民党は憲法改正問題を積極的に語ろうとしていなかった。これでは3割を超す岩盤保守層にも愛想をつかされる。選挙の結果は公明党と合わせた与党で過半数を割り込んでしまった。
石破氏は「自ら設定した勝敗ラインに届かなかったが、現下の厳しい課題に取り組み国民生活と日本を守ることで職責を果たしたい」と続投を明言した。当たり前のことだが、問題は総理の本気度と、政策断行の実践である。
私は自民党政経塾などで、政治を志す人たちに「国の為に死ぬ覚悟があるか」と問うてきた。「その決意の無い者は政治家になってはいけない」と私は考え、彼らにそのように教えてきたのだ。
石破氏はマスコミや世論や野党の批判を気にするあまり、一部野党の政策や法案ごとに連携する「部分連合」を考えると言ったが、これは決して正しい考えとは言えない。本来の自民党の政策を貫き通すことが全てで、これが出来ないようでは話にならないのである。
自民党の党是である憲法改正など、重要問題の解決のため、石破氏は「死ぬ覚悟」で事に当たって欲しものである。
第1020回「選挙への思い」
深谷隆司の言いたい放題第1020回
「選挙への思い」
第50回衆議院議員選挙が始まった。小選挙区の区割りが変わって、私が直接応援するのは豊島・文京区(第10区)の鈴木隼人君と台東・中央区(第2区)の辻清人君だ。そのほかにも千葉の齋藤健君など、かつて私が指導した後輩が何人か出馬しているから、出来る限り応援しなければと思っている。
それぞれ優秀で自慢の後輩たちだが、マスコミが書いているように、自民党は派閥パーティーの不記載問題等で批判され、目下嵐の中にある。
本人には直接関係ないのに苦労している素晴らしい後輩たちに、万が一のことがあったら国にとって大きな損失だと思う。絶対に勝たせるようあらゆる努力を惜しまない覚悟である。
私が引退してからもう15年以上が過ぎた。
あの頃は随分苦労した。いい仕事をしたら必ず多くの票が集まると思っていたが、現実はそんな甘いものではなかった。
名門の倅とか資金力のある者がいつも優位に立っていた。彼らを追い落とし何度も当選して、5つの大臣になってお国のために働いたが、家族も含め身を切るような苦労を重ねたものだった。
時代は少しずつ良くなって、優れた人を正確に選ぼうとする雰囲気が出来つつある。
「どうか候補者をきちんと見極めて、最も優れた人を選んで欲しい」と心から願っている。