第1024回「寝正月」
深谷隆司の言いたい放題第1024回
「寝正月」
昔はこういう言葉がよく使われたが、今はほとんど聞かない。世の中全体が激しく動く時代、個人もそうゆっくりは出来ないのだ。私も新年から忙しかった。
台東区主催の新年会、文京区、中央区と続いて、電通年賀会など、各種新年会に慌ただしく顔を出した。
89歳、私の歳になると、出席しないと「どうしたのか」と、あれやこれや心配され、あらぬ噂まで出かねない。「まだまだ元気だ」と本人が顔を出すことが必要なのだ。
9日には国会に飾られている在職25年表彰の私の実物大の肖像画を辻議員らと受け取りに行った。同じように表彰される人が増えると、やがて倉庫にもっていかれるからだ。
今は亡き八代亜紀さんが描いてくれたもので、手元で見ると、その筆致が素晴らしくて、如何に真剣に描いてくれたか、彼女の心が伝わってくるようで胸にジンと来た。彼女の大事な遺品となった。
他の議員からも依頼されたがすべて断ったと言っていた。義理堅い、節操の人であった。
これからは自宅に飾る。玄関を入ると私の顔がデンと目に入るという寸法である。
温故知新塾も始まる。月末には親友であった牛嶋氏のお別れ会で名古屋にも行く。
慌ただしい日々がつづくが、忙しいことが大好き人間、今年も張り切って飛び回る所存である。
第1023回「新年のごあいさつ」
深谷隆司の言いたい放題第1023回
「新年のごあいさつ」
明けましておめでとうございます。
まずは本年が貴方にとって最良の年となりますようお祈り申し上げます。
私は幸い元気ではありますが、すっかり歳を重ねましたので、少しずつ現場を離れ、あとは後継者の辻清人君達に任せようと思っております。
彼等が後顧の憂いなく活動できますよう、皆様の応援の程、よろしくお願い申し上げます。
本年の貴方のご多幸を念じて新春のご挨拶といたします。
元通産大臣 89歳翁
深 谷 隆 司
第1022回「大丈夫か石破政権」
深谷隆司の言いたい放題第1022回
「大丈夫か石破政権」
前にも書いたが、かつて私が衆議院テロ対策特別委員長の時代、石破氏は防衛庁長官であった。野党の質問に答えるように指名すると、彼の答弁は毎回やたらと長かった。特に得意の防衛問題になると、自ら野党の席まで近づいて、まるで授業で生徒に教えるような態度で饒舌をふるった。
はっきり言って中身はそんなに深いものではなく、誰でも分かっているような内容だから、自民党内からも不満が多かった。当然野党から激しいヤジが飛んだが、こんなに皆から顰蹙を買った答弁も珍しいと思ったものである。
その時の私の印象は「この人は周囲の動きを判断することに疎い。全体を見る目が無い。もっと言えば自分中心の独断専行タイプだな」というものであった。
「(余計なことは言わずに)質問にだけに答えなさい」と私は委員長席から何度もたしなめたものである。はっきり言って、逆にこんな危なっかしいタイプの大臣など見たことが無いとも思った。
彼は自民党の中でも、友人が少なく、同志と呼ばれる人はごくわずかしかいない。委員長席から見ていると、いつもひとりぼっちで周囲の人と語りあう場面は皆無に近かった。
彼は皆から「ケチ」といわれていた。気の毒な言われ方だと思うが、異口同音で皆がそういうのだから本当なのであろう。自分が誘った会食でもほとんどお金を払ったことが無いという。会合等が終わろうとして勘定の段になると、いつの間にかいなくなってしまうのだ。
その人が今や日本の総理大臣だ。はっきり言って私も含めて誰も予想しないことであった。それだけに大丈夫かと首をかしげる人が大半であった。
彼の下で行われた先の選挙では大敗を喫した。12年に政権に復帰して以来、自民・公明両党で過半数を割り込むのは初めてのことである。
政治とカネをめぐる自民党への批判が最大の理由だが、特に、非自民党候補者にまで2000万円の政党交付金を支出したことが致命的であった。勿論幹事長など執行部が相談して出したのであろうが、ケチと言われていた人の大盤振る舞いだから余計マイナスになったのだ。
「候補者個人に出したのではなく、支部に党勢拡大の為に出した」と必死で抗弁していたが、そんなことを信じる人がいる筈もない。要は世間の動きに鈍感なのである。
私は石破総理が予算委員会を行って、内閣の実績を積み上げた上で、来年夏に衆参同時選挙を行うのが一番いいと思っていたが、世論の動きや反応を見極めず、事を急いだ結果がこれだった。
選挙大敗の責任を追及して、安倍総理を退陣に追い込んだのは彼だったのだから、今度は自分が責任を取るべきである。しかし、一向にその気配はない。何があっても総理の座にしがみつこうとしているようで、その姿は見苦しいものがある。
折からアメリカではトランプ氏が大統領になった。海千山千の、何をしでかすかわからない大統領だ。これから、時に利害を異にするアメリカと様々な問題で渡り合っていかなければならない。
あの得体のしれない強面のトランプ氏と石破氏を並べてみると、大人と子供のように見えて心細い。政界上げて石破総理を支えないと、あの厚かましいトランプ氏にやられてしまう。
「心配でならない」、そう思うのは私一人であろうか・・・。